私はいつものように大学をサボっていた。
いつものように10時過ぎに起きて、「腹が減った〜」と言いながら6畳一間のカーテンを開ける。開けないと緑色の光が差し込んできて、部屋全体が森のようになってしまう。パンツやブラジャーをまとめてはいるけれど、畳の上だし、本や雑誌は3畳しかなくて白いビニール床の上に放りっぱなしだ。冬になると白い床は全く寒くて、誰が考え出したんだが殺したくなる。トイレに行く数歩で足がガチガチになる。全く。
起きればそのままTVをつけて、音を部屋に充満させる。そうするとちょっとやる気が出てくる。「あら〜世のおばさんはこんなつまらんゴシップで騒いでるんだー」とやじを入れると、もっと元気が出てくる。
1時からコンビニのバイト。だいたいは7時か8時までで帰ってきて、またTVをつけて、お風呂に入ったりして夜中にメールしたりする。バイトの無い日はサークルに顔を出したり、街をブラブラしたりする。
そういえば最近は、アンアンなんかの雑誌を買わなくなった。買わなくてもあたしは女だし、買ってもおんなだし、と思ったらアホらしくなったからだ。友達のK子に話したら、「プッ」っと吹き出された。ついでに、「前から変わってると思ったけれど」と言われた。K子は年中恋愛に夢中の子。格好もそれなりに今時にするし、それなりに遊ぶし、男の気を引くのが巧(うま)い。とっかえひっかえみたいにガツガツしてないから、周りの女友達にも嫌がられないし、人当たりも良いし悪口も自然に言わないから、コンパによくお呼ばれする。
実は私も2年生の最初まで、よくコンパに行っていた。1週間に1回か、2週間に1回はあって、時々変わった人がいて面白かった。でも、コンパはコンパなんだな〜って思ったら行く気が無くなってしまった。同じクラスの男友達の友達だったTは、変な奴だ。あたしよりも変わってる。いっつも坊主だし、炭酸飲まないし、勧められたら飲むけど、煙草も吸わないし酒も。女とも遊ばないから、「何して休日過ごしてんの?」と最初の話題に聞くと「本読んでるか散歩してるか空想しているか、電車乗ってるか漫画読んでるか音楽を聞いているか散歩しているか・・・」と5分くらい続けた。真顔で私のおでこを見つめながら。私が「わかった分かった」と両手を広げたので彼は黙った。その後、無性に可笑しくなって、本当に腹を抱えて笑ってしまった。彼は、一瞬目を大きくしたが、直ぐに微笑に移った。彼は何でそんな台詞を言うんだろう、と、最近、ボーっとした時に考えたりしている。
授業に殆ど出ていなくて留年、ほぼ決定。テストも受けていないし、3日後のバレンタインのために手作りチョコを作っている。防腐剤が入らないから、丁度お腹にくるかな?って思って。あげるのはバイトのはげかかっている40歳の店長と、同じバイトの仲間。それとクラスの友達。Tには上げない。彼は最高7個も貰ったことがあるそうだ。なのにお返しが面倒くさいからとつき返してしまったらしい。それでいて何人かともつきあったことがあるらしい。 全く全く。
一時、K子もTが気に入っていたが、なびかないから直ぐに次にいった。私は多分Tが好きだし、K子とTが付き合えば、Tのことが沢山分かるな〜って思ってた。自分が付き合うと苦しくなったりするだけで、相手のことが解らなくなる。解るのは相手が何で私のことを考えてくれないのか??ってことばっかりになる。私のことを理解しようとしてくれた大分年上の人もいたし、彼のことが好きだったけれど、どうも私はそういうのは上手くいかなかった。
私が雑誌を買わなくなったのは、皆恋愛したがっている、って思ったからだ。Tは私と付き合わなくても誰かと付き合って結婚するだろう。K子も適当に遊んだら玉の輿(こし)に乗るって言ってる。無理そうなおばさんになったら適当に妥協するだろう。真剣な恋愛だって、命や人生を賭けた恋愛だって結局は気持ちが変わるんだから。なのに皆恋愛をしたがってる。何だか不思議だ。あんなに1つのことを真剣に誠実にしようとしているTも何度も別れているし、その理由を聞くと「�〔そ呂機´∨槐修寮�差 �4超�による性差 �の�愛の本質が種の保存のためにあるので �ァΑΑΑ廚搬海�そうだったので、「分かったよ」と大きく両手を開いた。彼はずっと続けられたかもしれないが、そんな理由はどうでも良かった。皆が恋愛したがっている、ってことが変わらないんだろうから。
私はレイプされたこともないし、おろした経験もないし、ちょっと乱暴なのはあるけれど、特にはなかった。嫌いになる理由もないけれど、どうしてするんだろう。
考えは此処で止まっちゃう。
そんな時は、いっつもチョコを食べるようにしてる。バレンタインの前だから、今日は多めに食べようと思った。
プ〜ン、とチョコの匂いが部屋に充満したので、カーテンと窓を開けた。目の前には京王線が走っていって、電線の上に月がチラッと出ていた。
ちょっと黄色っぽくて、美味しそうなホワイトチョコレートに見えた。
あんなホワイトチョコレートを食べたら、毎日学校に行くようになるかな〜。恋愛できるようになるかな〜。部屋もきちんと片付けられるかな〜。
さて、9時になる。TVのドラマをみよっと。
執筆者:藤崎 道雪 (校正H16.2.18)