| 2004年07月16日(金) |
村上春樹『パン屋再襲撃』 |
私は村上春樹の恋愛小説は好きなんだけど、一般的には村上春樹は恋愛小説家ではないんだろうなあ。 恋愛小説ではない村上春樹の小説はちょっと苦手だ。 「どう読んでいいか答えをくれ!」と思ってしまう。
何かを象徴しているのか、風刺しているのか、裏がありそうなにおいはぷんぷんするんだけど、なぞは明かされないままなんだよねえ。
「パン屋再襲撃」は、パン屋を襲撃しそこなったカップルがあらためてパン屋を襲撃するのです。
こんなふうに説明しちゃってはミもフタもない。それは私もわかっているんだけどー。 私の理解を言葉にすると、これっぽっちなのです。
”渡辺昇”って何? ある作品では妹の婚約者、ある作品では共同経営者。またある作品ではいなくなった猫だったりする。
まったくつながりなく思える作品群の中で、”渡辺昇”という名前だけがつながっている不思議。
このよくわからない作品集で比較的容易に理解できたのは「ファミリー・アフェア」仲のよい妹が結婚することになって気に入らない兄の話。 (っていってしまっていいのかなあ?)
「僕はもう一度その写真を手にとって、男の顔を見た。 世の中に一目で嫌になるというタイプの顔があるとすれば、それがその顔だった。 おまけにそのコンピューター技師は僕が高校時代に一番嫌っていたクラブの先輩に雰囲気がそっくりだった。 顔立ちは悪くないが、頭が空っぽで、押しつけがましい男だった。 おまけに象みたいに記憶力が良くて、つまらないことをいつまでも覚えている。頭が悪いぶんを記憶力で補っているのだ。」
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