感想メモ

2007年01月20日(土) 父親たちの星条旗

父親たちの星条旗

 見たいと思いつつ、見るのがかなり遅くなってしまった。もう映画館では見られないかと思って、あきらめていたのだが、結論としては、見てよかったの一言。

 これは『硫黄島からの手紙』と対になった映画で、太平洋戦争中の硫黄島での激戦を、米軍側と日本軍側の両方から撮った作品である。

 『父親たちの星条旗』は米軍側の視点で撮られた作品。硫黄島は小さな島ではあるが、日本の領土であり、日本人は死に物狂いでここを奪われないようにがんばったのである。それを殲滅させようと上陸した米兵の数は多分凄まじかったのだろう。

 私は元々戦争の映画はあまり好きではないし、戦闘シーンが特に好きでない。この映画も戦闘シーンは避けて通れないし、すごく辛かった。最近の映像はかなりリアルにこういうのを再現するから余計に。でも、究極に見たくないようなシーンは映さなかった。(それでもちょっとグロイ映像もある)

 この戦闘シーンを見て、一番思ったのは、日本軍も負けてはいなかったのだ、ということだ。これだけの数の米軍を前に、少ない人数で塹壕を掘って、自然と一体になって潜伏し、米兵を倒した姿。昔の日本人はやはり根性があったというか、頭がよかったのか、と変なことを思った。

 でも、この作品はこの硫黄島での戦いがメインというわけではなく、一番描きたかったことは別にある。硫黄島を占領したと思った米兵は、まだ日本人ががんばっているのに、一番高い山頂にアメリカの国旗を掲揚する。その写真がたまたま新聞に掲載され、それがアメリカの勝利を確信させるかのような写真であったため、国旗を掲げた兵士たちは、本国で勝手に英雄として祭り上げられていた。

 実際は、国旗は2回掲揚されており、写真に写っているのは2回目に旗を揚げた人たちだった。その中の数人はその後の戦闘で死亡した。しかし、英雄を本国に帰し、この英雄たちに国内を回らせ、戦争のための国債を買うキャンペーンにうまく使おうということで、3人の兵士が本国に帰される。

 彼らが見たのは、飛んだ茶番劇。英雄としてあがめられ、人々の前に出て行く3人だが、実際は死亡した写真に写っていた一人は別人だったし、自分たちがこうして全国行脚をしている最中にも、同じ部隊の戦友たちが死んでいるわけで、自分たちだけこんなことをしていていいのか?という心の葛藤が描かれる。

 こうした英雄には色々な人が群がってくる。しかし、それも一時のことで、結局この英雄たちは、その後、一人を除いてあまりよい生き方をしなかった。

 とても考えさせられるテーマだった。時代に翻弄されたのは、日本人だけでなくアメリカ人も同じ。どこの国の人も戦争をすれば、こうしたことが起こりうる。やっぱり戦争はいけない。これから同じようなことが二度と起こらないことを切に願う。


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