感想メモ

2005年10月04日(火) ファイト

 NHKの朝ドラ、「ファイト」が終わった。毎日かなり楽しみに見ていた。ここ最近の作品の中では一番脚本もしっかりしていて、ストーリーにも無理がなかったように思う。何といっても主人公の元仮屋ユイカがさわやかで、いまどきにないような真面目な高校生をやっていて好感度大だった。

 最初は幸せだった家族が、父親の仕事へのプライドから一転不幸のどん底へと落ちていく。工場は閉鎖状態になり、家族はバラバラに暮らすことに。優は大好きだったソフトボールをけがで断念。友達ともうまくいかなくなり、不登校。父は深夜のアルバイト。東京で働くことを決意するが、会社が倒産。ぬいぐるみに入るアルバイトなどをせざるを得なくなる。酒に溺れ自殺も考える日々。妻はそんな夫を許せないところもあり、不倫の気配が・・・。

 とまあ、激しく不幸になっていくわけだけれど、どんどん悪くなっていっても、前向きに進んでいく優と家族たち。いつか幸せが来るだろうと思って、見続けると、8月の終わりくらいだったか・・・ようやく幸せの兆しが見え始める。そこからは優の恋愛の話だとか、馬の仕事の話だとかに内容がシフトしていく。

 周りの人々についても、ドラマがあって、特に駒乃館の人々はよく描かれていた。一番は母・亜沙子の親友・琴子。川原亜矢子って本当にきれい。琴子は酒井法子(これまた若くてかわいい)扮する亜沙子とは対照的な存在。亜沙子は若くして家庭に入るが、琴子はその間もキャリアを積み重ね、30代後半になるが恋愛の気配なし。周りからは見合いを勧められている。亜沙子はお気楽に琴子の仕事のすごさをほめ、自分の子育て中心だった生き方に少しむなしさを感じたりもしている。琴子は逆に亜沙子の生き方をうらやましいと思う部分もある。結局琴子もそこまでに登りつめるには色々あったということがわかるわけだが・・・。

 琴子と太郎との恋愛は30代後半女性の心情がよく表れていたように思う。ここで結婚しなければ一生結婚しないかもしれない、それならうまくいかず離婚になったとしても、一度結婚をしておいても損はないのではないか? 結局、太郎との間に溝を感じ、最後には自分から婚約を解消する。その後、フランス人の建築家と出会い、結婚を決意。やはり同じ仕事上の夢を追いかけられるような人物と結婚する方がよいだろう。愛情だけではなく、一緒に暮らしていけるか、生活パターンがどうか、そして、人生の夢や目標が同じかどうかが、結婚ということを決める重要な要素となるのだろう。その意味でも、琴子は安易に太郎と結婚しなくてよかったのだ。この辺の微妙な女心がよく描けていた。やはり誰とでもいいからとりあえず結婚してみよう・・・というのは、あまりよくないのかも。

 児玉清扮する駒乃館の主人もいい味を出していた。由紀さおり扮する妻とおしどり夫婦。しかし、妻が突然音大に行きたいと言い出すから、さあ大変。結局は妻に4年間大学で学ばせることを決意。男って老後に趣味もないとこういう風になってしまうのかも・・・と思ったりして。また琴子の結婚では、連れてくる相手を気に入らず、素直に受け入れることができない。心の中では30代後半だし、どんな相手でも受け入れなければ次はないかも・・・と思っているはずなのに。父親ってこんなもの? 最後には妻と二人、幸せな老後を送ろうということになる。この人のいいところは、優の父・啓太(緒方直人)がぼろぼろになっているときにさりげなく助けたりとか、優の太郎への気持ちを知って、そっとしておくとか、そういうところにも溢れていたと思う。また由紀さおりは歌がうまい。音大に入れるかはともかくとして、(まあ、池田理代子さんは音大に入ったからありえないことではないだろう)何度も出てくる歌のシーンで、はぁ、うまいなぁ・・・と思ってしまったことが何度もあった。

 弟夫婦(おかやまはじめ&三原じゅん子)も時々出てきてはほのぼのとしたムードを出していた。この脇役感はなかなかよかったと思う。

 優のおばあちゃん(三林京子)と村上さん(田村高廣)の恋愛。これはこれで高齢になったらありなのかもしれないと思った。西郷さん(藤村俊二)は4度目(確か)の結婚で若い奥さんに借金をされた挙句、サイゴウジョンコを手放すことになるが、最後に5度目の結婚で奥さんとなった人のおかげで借金を返済。なんかすごい人だったな・・・。

 バネ工場の人たちもいい味出していた。全員が一気に帰って来るのはどうなのかとも思ったけれど・・・。

 あと個人的にソフト部の監督、結構好きだった。優の担任の先生も・・・。

 木戸家に戻ると、亜沙子と啓太(緒方直人)の関係。この二人は最初から仲良くしたいのだがかみ合わない感じ。元々家族別々で暮らす必要もなかったはずなのに、家を大事に思っていた亜沙子がひねくれたことから、四万温泉の仲居として働くことを勝手に決めてしまう。もしここでちゃんと話し合っていたら、啓太がここまで悲惨なことにはならなかったのでは?とも思うのだが。亜沙子に不倫の気配があったが、そのときの態度もそうだ。夫婦の間には話し合いが必要・・・と思った。結局は元の鞘に収まるわけだけれど。それにしても、不倫っぽい関係になった川崎先生(山口馬木也)はどうなったのだろう。元々琴子とお見合いをして合わなかったわけだけれど。その後出てこなかったのでどうなったのやらわからなかった。

 優は優でつらい体験を色々する。特に学校のシーンではなんだかすごくリアルな感じを受けた。ソフトボールをするために入った私立の女子校で、けがでソフトボールができなくなってしまったり、親友に裏切られたような気持ちになったり、周りの合わない友達と無理に合わせようとして疲れてしまったり・・・。こういうのって誰にでもあるだろうけれど、感受性が強いと学校に行けなくなったりするのかも。不登校から四万温泉で仲居として働くことになり、馬が好きだという気持ちに気づいて、厩舎でのバイトを始め、最後には馬たちと触れ合って傷ついた人たちの心を癒す仕事を・・・と変わっていく。この辺の流れは自然だったとも言える。さらに太郎との恋愛。琴子との婚約を知り、無理に笑顔を作ったり・・・大変なことだらけだったと思うけれど、よく成長したなーという感じがよく出ていた。やっぱり女の一生を描くよりも、こうした短い期間を描くというのが無理なくてよかったのではと思った。

 檀くん(田中冴樹)はかわいかった。色白で栄養不足か?と思ってしまうところがあったけど・・・。

 太郎さん(瀬川亮)はなかなかいい感じだったと思うけれど、優とのことではなんだか優柔不断だった。もう少しうまくやれなかったのかな・・・と思った。

 その他の脇役では、岡部君(三浦春馬)がかわいそう〜! 優を思い続け、一度は付き合うが、結局あきらめることに。写真の道に進んだのだろうか? 優も岡部君も、爽やかな感じだった。

 最後に里夏(垣内彩未)。この子と仲直りできてよかったな。修復不可能かと思ったけれど、こういうこともあるのね。まあ、ドラマだからかもしれないけれど・・・。実は渡辺徹扮する里夏の父が一番気になった。自殺までして大会社の不正を内部告発したわけだけれど、そのままあの会社にいられたのか? いられたとしても日陰の部署に追いやられるとか。それとも仕事を辞めさせられたりとか?と思っていたのだけれど、あまり描写はなかった。とりあえず里夏は学校を続けていたし、優とも仲直りしたからいいのかもしれないが。この家は母親が全く出てこなかったが、これもちょっと気になった。

 と、こんなに夢中になっていたドラマだというのに、NHKの朝ドラ視聴率ワースト2位なのだそうだ。確かに『天花』は面白くなかった。ワースト1位なのもわかる。けれど、これがワースト2位だなんて。最初の頃、新聞の投書欄でも「内容が暗すぎて朝から気が滅入る」とかいうようなのが寄せられていたみたいだから、それが影響したのか? 確かにリアルだったような気もするけど、だからこそ、最後が生きるような気もするのだが・・・。
 
 このドラマがワースト2位というのは、もしかしたらもうこうした朝ドラの形態が一般視聴者には受けないということでもあるのかもしれない。昔のように誰も彼もが見るというような時代ではないのだろう。半年という長いスパンで、毎朝同じ時間に見続けるというのが時代のニーズに合わないのかな。そんなことも思ってしまった。


 < 過去  INDEX  未来 >


サーチ:
キーワード:
Amazon.co.jpアソシエイト
ゆうまま [MAIL]