感想メモ

2003年12月09日(火) 本を読む女  林真理子

本を読む女
林真理子 新潮文庫 1990 

STORY:
和菓子屋の末っ子として生まれた万亀(まき)は優等生として親の期待、周囲の期待にこたえようと生きている。そんな万亀にとって読書は心の支えであった。やがて太平洋戦争へと突入し、万亀は時代の波に翻弄されていく。

感想:
 この作品は今NHKの月曜ドラマでやっている「夢見る葡萄」の原作である。ドラマの出来が大変素晴らしくて、ついつい見入ってしまっていて、原作を読んでみたくなった。万亀のモデルは林真理子の母親だそうだ。

 ドラマとは設定が異なっている部分がかなりあり、ドラマの方が面白くなるように仕立ててある部分や、小説よりもよい感じに描かれている部分もあると思った。やはりドラマと小説は別物であると思っていた方がいいかもしれない。どっちかというとドラマの方が今のところは明るい感じである。まだ最後まで見ていないうちに原作の最後まで読んでしまったのがちょっと残念である。最近はこのようにドラマに興味を持ってその原作本を読んでみようと思うことが結構多い。それはそれで楽しいのであるが、やはり本とドラマが全く同じであるということはほとんどありえない話だ。だから、先に原作を読んで気に入っている人がドラマを見るとどう思うのかわからない。逆にドラマを見た後で本を読むと世界が広がるということはある感じがする。

 万亀の生き方を読んでいると、やはり今からそう遠い昔ではない頃にはまだまだ女性は迫害されていたと思う。男性の言うなりになり、勉強をすることも必要ないと思われていた時代。つくづく自分は恵まれた時代に生まれたのだと思う。戦争とも一応今のところは無縁である。ただこのように太平洋戦争に否応なく巻き込まれていった万亀の人生を読んでいると、今、私が直面しているイラクへの自衛隊派遣の問題などとちょっと照らし合わせてしまう。私は戦争に反対なのは今も昔も変わらないし、自衛隊の派遣などとんでもないとは思っているが、自分がそう思っていても世の中は結局どんどん進んでいき、止めることができない状態になっている。今から数年後にどういう風になっているかわからない。昭和の始めの頃はまさか戦争で東京が焼け野原になるだなんて誰も思っていなかったことだろう。ほんの10年くらいの間にどんどん状況が変わっていったのだと思う。それでも人は生きていく。私にもそういう強さがあるだろうか…。


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