本日の紡ぎごと...suiren

 

 

she loving silence of summer, - 2003年05月03日(土)

窓を開けたら、涼しい風なんて来なかった。
初夏だ。
暑いなーと思う。
夏っていうのは、本当に不思議な力を持ってる。
魔法の季節だ。
何だか切なくなったり、ドキドキしたり、実際に色々あったりと。
夏の魅惑は尽きることが無い。
その蜜を甘くする術を私は知っている。
要は水面に浮かぶ花びらをそっとすくい取る事が出来たなら、
もう其の方法を心得ていると云う事になるのだけど。

ユキは渋谷の交差点で人並みに押されながら、
今年の夏はどうやって「蜜」を吸おうかと考えていた。
まだ本番でも無いのに、微かに夏を感じ取ると
すっかり浮かれてしまうのだ。
青すぎる空と眩しすぎる太陽に圧倒される。

でも時々、ふと立ち止まる。
そうすると世界の物の全ての動きが止まったように見える。
何もかも白黒で、自分が立ち止まっている筈なのに
周りが立ち止まっている、ユキはそんな能力とも云うべき感性の持ち主だった。

彼女は静寂を愛す。
そしてユキにとって、其れを探す事は容易である。
何しろ世界の全てが止まった様に見れるのだから。
ノイズすら無い完璧なる静寂の中で、
只々自分の心拍音と呼吸と、耳鳴りだけが聞こえる。
例えば、其処には愛している男の声も硝子を落とした音も
全てが入れないユキの静寂の中にあるのだ。

彼女は静寂を愛していた。
とりわけ夏の静寂は、ユキにはこの上ない蜜となる。
どんなに暑くても、煩くても、痛くても、
ユキにとっては関係ない。
全てがユキの静寂の対象となっていた。
全てがユキの蜜の対象となっていた。





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