宿題

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2007年01月12日(金) 「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」インタビュー/スポーツ報知
文筆家の鴨志田穣さん(42)の新作「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」
(スターツ出版、1365円)は極めつきの“私小説”となった。
アルコール依存症で精神病院に強制入院、
患者同士の珍妙な騒動に巻き込まれながら、
依存症を克服していくストーリーは、
ほとんどが鴨志田さんの実体験に基づいたもの。
最後は衝撃の結末が待っているが、
壮絶さの中にも明るさと温かさがにじむ一冊だ。

「素潜りして深いところまで行って、10年近く気絶しそうにまで我慢して、
海面に上がってぱっと息をしたような状態です」
アルコールから離れた鴨志田さんは背筋をぴんと伸ばし、
穏やかな表情になっていた。

描かれているのは、どうしようもなく酒におぼれていく依存症の苦しみ壮絶な闘病、
切なくて、でもなんだか笑えるアルコール病棟の風景、
元妻や子どもたちとの温かな交流―。鴨志田さんが経験したことだ。

最初に依存症と診断されたのは4年前。食道静脈りゅう破裂で吐血。
医者から「次、飲んだら死にますよ」と警告されても、
朝から酒をあおっていた。しかし10回目の大量吐血で今年ついに強制入院。
この間、漫画家の西原理恵子さんと離婚している。

なぜそこまでして飲むのか? 
「焦燥感と自信のなさ。人の書いたものを読んだり自分の欠点見るたび、
布団の中にもぐって隠れていたいような思いがいつもありました」
特に30代、仕事への焦りが心の澱となった。

元戦場カメラマン。カンボジアやボスニア・ヘルツェゴビナなど
銃弾の中をカメラを担いで走り回った。
ポルポト派からのホールドアップ。
目の前で兵士のロシアンルーレットがビンゴだったこともある。
死が常に眼前にあった体験も依存症の「引き金になったかも」という。

結局、鴨志田さんの心を救ったのは家族の存在だった。
入院中、依存症とは別の病気が発覚し、今は西原さんの元に身を寄せ、
子どもと一緒に生活している。
今は自助グループに顔を出し、たまに起こる飲酒欲求を抑え通院、
執筆や取材をこなす毎日だ。

病状によっては、命はそう長くないと伝えられている。
「どうってことないですよ。何度も命なくしたと思ってるから。
逆に良かったと思ってるんですよ。
リミットがはっきりした。焦燥感を持たなくていい」

そんな鴨志田さんが、一瞬だけ照れたような表情を見せた。
「お守りみたいなもん。彼女は右手に。分かりません、女の子の気持ちは」
鴨志田さんの左手薬指には、元妻との結婚指輪が今も光っている。


★「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」インタビュー/スポーツ報知★

マリ |MAIL






















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