宿題

目次(最近)目次(一覧)pastnext

2006年05月20日(土) まるごと好きです/工藤直子
「捨て猫を拾ってきたが、家で飼えず、また捨てにいくハメになり、
泣いたことがある。それを文男さんに見られた。文男さんは
『シートン動物記』の「裏町にゃんこ」━━野良猫が豪快に野良暮らしをやり、
まぎれこんだ品評会で入賞してしまう━━
その話の載っている巻をプレゼントしてくれた」


文男さんは元気づけてくれるのもうまかった。
わたしは、忘れっぽく、整理整頓がへたで、皿洗いをさせれば、皿を割るし、
洗濯させても汚れが落ちない。
へまばかりやって、朝晩しかられていた。
(当時は、洗濯機はないのでタライで洗う。
汚れ落しのテクニックが必要な時代である)
ある日、洗濯物の汚れが、ちっとも落ちてないと叱られているところに、
文男さんが居あわせた。
すねてふくれていたわたしに、かれはさりげなくいった。
「まず水でもみ洗いして、汚れをざっと落とすのがコツなんだよな。
それから水をかけて石けんで洗うとよく落ちるよ。
…直ちゃんは、まだ、そのこと習ってなかったんだよね」
こういわれると、ふくれてはいられないのである。
なるほどなと、砂に水がしみとおるように素直になれるのである。
(そうだ、へたじゃないのだ。ただ、コツをまだ習っていなかっただけなのだ)
と安心して元気が出るのである。


★まるごと好きです/工藤直子★

マリ |MAIL






















My追加