宿題

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2005年02月13日(日) パラレル/長嶋有
「そういえば昼間、女がきたけど」

「どんな女だった」津田はいきなり真顔になった。

今現在、何人の女と付き合っているのかという疑問が浮かんだが、

それは後回しすることにした。

「なんか、唇がすごく赤くて」

「あいつか!」津田がいった(このときはすぐに通じた)。

目が正面を向いている。怒っているのだろうか。

「ひどいんだ!ひどいことした」

といってふーっと息をついた。遠くでレジスターがレシートを印刷するカタカタいう音が響いた。

「なんかいってたか」

今の口ぶりや昼間の女の様子から「ひどいことした」のが津田だとは分かったが、

どんなひどいことをしたのかは津田はいわなかった。

◇

「何人と付き合ってんの、今」

やっと尋ねることが出来た。津田は、それに答える代わりに

「俺はね、恋愛は駄目だよ。他人の気持ちがわからないんだ」

と弱音をはいた。自嘲ではなくて言葉の通りだという。

「だって他人は俺じゃないから、分からない」

女は、分からないことが分からないようなんだ。

分かろうとしないだけでしょう、なんていうんだ。

「ああ、分かるよ。分からないのが分かるよ」

僕も力強く賛同して焼酎を呑む。

「いや、おまえたちは分かり合ってるじゃないか」と津田はいった。

おまえたちはいい、おまえたちはいいと何度もいって机に突っ伏した。

「よくないよ」

離婚するかもしれないんだ、僕はついにいったが、津田は泥酔して寝入っているようだった。

◇

「俺、もうカタギの女は口説かない」といってみたり、

「大輔がもっと育ってくれればなあ」と職場の話をしたり、

ぶつぶつとうわごとを繰り返していたが不意に

「なあ七郎、おまえ俺が女に刺されるかなにかで死んだらさあ、

ヨットで沖まで出て、夜明けに俺の骨を散骨してくれるか」などといいだした。

船舶免許もないしヨットも持ってないよと答えるとガバリと起き、僕の顔をみて

「俺、おまえのそういうところ好きなんだ。いつでも打てば響くように

台無しな答え方してくれる」

と微笑んで、またテーブルに突っ伏した。

「いつでも」ってことないだろう。抗議しようか迷っていると(後略)。


★パラレル/長嶋有★

マリ |MAIL






















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