宿題

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2004年08月27日(金) いしいしんじのごはん日記(8月7日、8日)
二階のちゃぶ台で書類を整え、判子を押す。

23年前に亡くなった父方の祖母は名前を「園子」といった。

ぼくは四人兄弟の二番目で、園子おばあちゃんにいろいろと面倒をかけることが多い、

いわゆるおばあちゃん子だった。

三年前、このごはん日記のなかに「園子さん」という名前を見いだした両親は、

「いったい誰や?」と電話をしてきた。

「まぼろしのおばあちゃん」とこたえると、両親とも大いに混乱した様子で、

あとから「あいつ、だいじょうぶか」(父)

「昔のしきたりとか詳しいみたいやから、ほんとうにおばあさんかもしれへんわ」(母)

などと物陰でひそひそ会話を交わしあったらしい。

まじめな父母なのです。

戸籍上、園子さんは明日から「石井園子さん」になる。二代目襲名です。

初代園子さんは猫が好きでなかった。

犬を家にあげるのも「けじめ」といって許さず、土間でつないで飼いつづけた。

二代目石井園子さんは猫の化身であるいっぽう、

尾久の実家にいる「テツ」はやはり、庭につながれた生粋の番犬です。

初代は毛糸の編物が好き。二代目は松本で日々染織に取り組んでいる。

うちの母は電話で、

「わたし、イシイソノコさんに挟まれたサンドイッチの具」といっていた。

松本の家の園子さんのこたつには、園子おばあちゃんの編んだ、

色とりどりのこたつカバーがかかっている。

───8月7日


まるいちに行って挨拶。

のぶさんとおかみさんに婚姻届を渡し、保証人欄に署名と判子をもらう。

海南神社で柏手を打ったあと、岡をのぼって市役所へ。

今日は日曜なので、戸籍係にはふつうのおばさんが二人いるだけ。

正式に受理されたかどうか、月曜以降でないとわかりません。

夏の陽が黄色く照らす三崎の坂をくだる。

日傘をふだんささない園子さんはまるで提灯のように傘をもって歩く。

まるいちで「いちおう、出してきました」「まだわかんねえな」といって

のぶさんはケタケタと笑った。「俺が書いたところが、審査でおっこちるかもしんねえな」。

スグルくん、じゅんくん、のんちゃん、手ぬぐい三人男が店先で拍手をしてくれる。

おかみさんは園子さんに「いしいさんはよほどのことがない限りだいじょうぶだから」

とアドバイスをくださる。

───8月8日


★いしいしんじのごはん日記(8月7日、8日)★

マリ |MAIL






















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