宿題

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2004年05月21日(金) 下妻物語/嶽本野ばら
「新しく結婚するそのお医者さんと、幸せになって下さい。

その人が私と一緒に暮らしてくれるという気持ちは嬉しいけれど、

やっぱり離婚経験有りで尚且、こぶつきというのは結婚するにあたって、

お母さんにとって不利だと思います。

お父さんが離婚に応じないとか駄々をこねれば、私がきちんと説得しますから」

私はわざと敬語で、他人行儀な口調でそういうと、母親は泣き出しました。

「やっぱり離婚、しんとこか。新しい結婚、諦めようか。

お前と別れて暮らして、勝手に自分だけいい思いするなんて赦されへんわ」

不安げにしくしくと涙を零し続ける母親に私は返しました。

「山を歩いてて、金の鉱脈を発見して、

そこを掘らずにみすみす見逃して通り過ぎるのは、只のアホだと思う。

偶然、そんなラッキーが自分の目の前に現れた時、

自分だけが楽をして得するなんて狡いと考える、

そういうのは欲がないというんじゃないと思う。

突然の大きな幸せが舞い込んできた時、

人はその幸せを前にして、急に臆病になる。

幸せを勝ち取ることは不幸に耐えることより勇気がいるの。

大切なものを見つけたら、それを絶対に手放さない、守り抜く、

たとえ他の大きなものを失うことになろうと。

だって、本当に大切なものに巡り合えずに死んでいく人だって、

沢山いるんだからね。甘えてちゃ、駄目だよ」


★下妻物語/嶽本野ばら★

マリ |MAIL






















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