宿題

目次(最近)目次(一覧)pastnext

2003年05月13日(火) エズミに捧ぐ/J.D.サリンジャー
「わたしには全然ユーモアのセンスがないんですって。

ユーモアのセンスがないから人生に太刀打ちできないって、父は言うんです」

私は彼女の様子を見守りながら煙草に火をつけた。

そして、本当の苦境に立ち至ったとき、ユーモアの感覚では役に立たないと思うと言った。

「父は役に立つって言うんです」

それは、異説を立てているのではなく、一つの信念の宣言であった。

だから私は、すぐ話の角度をかえた。

私はうなずいて、彼女の父はおそらく長い目で見ておられたのだろう、

一方私のほうは短い目で見ていたのだと、そんなことを言った(短い目とはどんな目か、

あやしいものではあったけれど)。


★エズミに捧ぐ/J.D.サリンジャー★

マリ |MAIL






















My追加