○プラシーヴォ○
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| 2001年10月22日(月) |
正しいとか正しくないとか |
ピリ ピリリ
耳元で、コンドームの封を開ける音がする。 久しぶりだね、 という顔でハム男と目を合わす。笑う。
ハム男が入ってくる。
手にはまだコンドームを持っている。 「…だめ!ハム男… つけてからじゃないと…だめだよ!」 思ったより大きな声を出した自分に驚く。 両手がハム男の胸を押し返そうとしている。
ハム男が、いそいそとコンドームをつける。
もう一度、入ってくる。
少し動いた後、すうっとハム男が出ていく。 すぐさま指で愛撫される。 「がちゃ子…ごめん」
え?
愛撫されて、少し朦朧とする頭で ハム男の言葉を聞く。
「俺…駄目みたいだ… コンドームをつけたら…駄目みたい」
今、なんて? なんて言ったの?
愛撫を続ける手を掴んで、止める。
体を起こそうとしてベッドについた左手が 今さっき外されたコンドームに触れる。
上半身を浮かせた私をもう一度ベッドに倒し、 ハム男の手は再び動き始める。
頭はとまどっているのに 体は昇りつめてしまった。
娘を見る父のような顔のハム男。 静かに私の頭をなでる。
私は、ハム男の下半身へと移動する。 口に含む。 そうっと撫で上げる。
変化しない。 私の手にもたれるように、くたり、と柔らかいまま。
ハム男の脚の間でうずくまる私を、 胸のあたりまで引き上げる。 そして、また頭を撫でる。
「おじちゃん、今日は飲みすぎたのかな… だから、駄目みたい…ごめんな」
ピルを飲んでいる間、ずうっとコンドームをしないセックスをして すっかりそれに慣れてしまったハム男。 できることなら、これからもそうしてあげたいけれど あと1年はピルをのまない休薬期間にしたいと 思っているから…。 ごめんね、ごめんねハム男
「がちゃ子!」 気がつくと、私は声を出して泣いていた。 ハム男が驚いた顔をして、 すぐさま私を抱き寄せる。
「がちゃ子、どうして泣くの? 愛してる。愛してるよ がちゃ子のせいで体が反応しないんじゃないよ」
ごめんね、ごめんね 面倒くさい女でごめんね。 避妊しないあなたを突き飛ばすような女でごめんね。
「…そんなこと言うなよコンドームするのが久しぶりだから動揺しただけだよ 次はきっと大丈夫」
避妊をしましょう 避妊をしない男は最低です 産まないつもりなら避妊は当然です
そんなの私が一番分かってる。 心にも頭にも体にも刻まれてること。
なのに、一瞬忘れそうになった。 ハム男を喜ばせてあげたくて。
自分が嫌いになる。
避妊しないハム男を憎いと思うくせに ハム男が気持ちいいのなら避妊しなくていいよとも思う。 同時にそう思う。
もうグチャグチャで、どれが私なのか分からない。
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