○プラシーヴォ○
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『自分の思想のために人を殺すなんて』 『他にやり方があったはず』
テレビからの声に体が固まる。
そこには、まるで食べかけのカステラのように くしゃりとつぶれたビルと、 瓦礫に鼻をつっこんで救助に参加する犬が映っているのだけれど
ねえ、それは私のことを言っているの?
『やりたいことがありすぎるから今は育てられないなんて』 『経済的にとても無理で、幸せにしてあげられないなんて』 『本当に無理だったの?』 『子供の命より大事な夢ってなあに?』 『今のあなたは何?やりたくもない事務をやって ため息ばかりついているじゃない』
やめてやめてやめて。
少し前まで、穏やかだったのに。 何もかも受け入れられて これからグイッと前を向いて歩いていけそうな気がしてたのに。
心が1箇所にとまってくれない。
ピルを飲むのをやめたからかな。
あの子を手離してから1年半ぶりに、排卵してるのかな。
明日、私がひとつ歳をとるのがうらやましいのかな?
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