短編小説部屋...まどう ゆう

 

 

ハッピーバレンタイン♪1(振り/ハナベ) - 2011年02月11日(金)

こんな事を考える事、事態が自分らしくないとは良く分かってはいた。

だけど渡したいと思ったのは確かで、諦めるという選択肢は初めからなかった。


あの入部前の顔合わせの時の印象はお互いに最悪だったと思う。

花井にとって三橋の引き立て役にされてしまった事や「入んのやめます」宣言の下りは忘れたい出来事だろう。

でも中学での花井のプレイを知っていたオレにとっては入部してくれて、こうやって一緒に野球が出来てとても嬉しかったのだ。

花井にそれを告げた事もなかったし、これからも告げるつもりは全くなかった。

だからこれはただの感謝の気持ちで、1年なのにキャプテンで大変だからいつも有難うって事なんだと誰にも聞かれていないのに阿部は言い訳を考えている。

そう、阿部はバレンタインデーに花井にチョコレートを渡したいと思っていたのだ。

水谷辺りなら「友チョコとか流行っているらしいよ〜」とか言って自然に渡せるかも知れない。

しかし、これが自分となるととてもらしくないと思ってしまう。

だったらバレンタイン前から何気なく花井にチョコを渡したりして、これが日常と変わらないと感じさせてしまえば良いのではないかと阿部は思い付いた。


「…花井、これやるよ」

当番で部室に残って部誌に向っている花井にカロリーメイトを阿部は差し出した。

「お、悪いな」

サンキュと言って花井は受け取ると早速、封を開けてもそもそと食べ始める。

「ん」

もそもそ食べながら花井は袋に残っているもう1本を阿部へと食べるだろうと差し出す。

「オレは良いよ」

「でも阿部だって腹減っているだろ?」

机に置いていたお茶を飲んで花井はにこりと笑う。

こういう気遣いが出来る所も好きなんだよなとふと思ってしまい、阿部は薄らと顔を赤くするのだった。


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ちょっと長くなってしまったので1とさせていただきました。

先が読めちゃいそうですが、次も読んでいただけると嬉しいです。




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