短編小説部屋...まどう ゆう

 

 

バーテンダー(ハナタジ/未来・プロ田島編) - 2011年02月04日(金)

最近の自分が荒れているのは分かっていた。

故障をしている訳ではないのに、いつもと同じ様にプレイをしているのに結果が出せない。

プロ3年目でまだまだこれからの時期にスランプだなんて言ってられないと我武者らになればなる程、ヒットが打てないでいる。

先輩達はいつも調子が良いヤツなんていない今は偶々そういう時期なんだよと慰めてくれたが、その慰めさえも鬱陶しいと感じてしまっていた。


次の日の練習や試合に響かない様に泥酔するまで飲むなんて事はなかったが、それに近い状態まで飲んでしまった田島は足取りも重く通りかかったバーに入って行った。

そこはとても落ち着いた雰囲気のあるバーで、こんな酷い酔い方をしている自分には不似合いな所だった。

もしかしたら入店を断られるかも知れないと思ったが、バーカウンターに立つバーテンダーはふわりと田島に向って微笑みを浮かべた。

「いらっしゃいませ」

その優しい声に田島はぺこりと頭を下げるとカウンターの席へと座る。

「お客様、何を差し上げましょうか?」

一人でバーに入るのは初めてだったし、カクテルの名前なんて詳しくない田島はそう聞かれて戸惑ってしまう。

ここに入ったのはただ酒を飲みたいという気持ちだけだったのだが、今ではそんな思いがなくなってしまっていた。

それは目の前に立つバーテンダーがとても綺麗な目で自分を見つめてくれているからだった。

「あの、何かオススメなカクテルを…」

バーテンダーから目を離せなくなった田島はそう答えるのが精一杯。

「はい、畏まりました」

にこっと笑ったバーテンダーはシェーカーを取り出し、メジャー・カップで計った材料を次々に注いだ。

そして最後に氷を入れるとシェーカーを胸の前でリズム感良く数回振った。

シェイクが終わったものをグラスへと静かに注いで田島へと差し出してくれた。

「いただきます」

綺麗なグリーン色のカクテルを一口、飲んでみるとふわりとメロン味が口の中へと広がった。

「美味しい…」

ちょっと甘い様な気がしたが、この甘さが自分の荒立っていた気持ちを落ち着かせてくれるみたいに感じた。

「気にいっていただけましたか?」

このカクテルはグリーン・ファンタジーと言いますと優しく笑って教えてくれた。

「お客様にお似合いじゃないかと思いまして、このカクテルにしました」

今夜はこのカクテルで最後にして下さいねとバーテンダーは続けると水を入れて田島へと差し出した。

「はい、そうします」

この人の言う事なら素直に聞けるなと不思議に思いながらも、田島はカクテルの残りを口にする。


このバーに立ち寄ってカクテルを飲んだ次の日から今までのスランプは何処へ行ったのかという程に田島の調子は元に戻った。

彼は自分の救世主だと思った田島がバーの常連になって、どんどんとバーテンダー花井に魅せられていくのは少し先の話…


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『バーテンダー』ドラマ化記念の短編です(笑)

原作はまだ読んだ事はないのですが、前にアニメ化された時に見て好きになった作品です。

今度のドラマも楽しみです〜。


何だかとても長めになってしまいましたが、シリーズ化したら私が楽しい作品かも…(カクテル本とか持ってる程のカクテル好きです)



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