熱視線。(振り/ハナタジ) - 2011年01月20日(木) 今日は朝から田島の様子が何だかおかしかった。 朝練は寝坊したとかでギリギリ時間に間に合ったのだが、あまり元気がなさそうだった。 そんな練習中に視線を感じて後ろを振り向くと田島がじっとオレの事を見ていた。 「…どうした?田島」 「何でもねぇよ」 そう答えた田島の笑顔が何かごまかしている様に見えた。 放課後の練習でも田島の視線を何度も感じた花井は練習の後にもう一回聞いてみようと思った。 「田島、ちょっと残ってくれねぇ?」 部室で着替えながら小声でこそっと伝えると田島は黙ったまま頷いた。 練習の後は帰る為の体力補給をコンビニで購入して食べているのだが、いつも皆で一緒にいっている訳でもなかったので他の部員達は先に行ってるぞと声をかけながら部室から出て行った。 田島はそれぞれにおーとか答えていたが、心ここに在らずという感じだった。 「朝、何でもねぇって言ってたけどさ」 どうかしたのか?と皆が出て行った後に花井はそう田島に尋ねた。 「…今日、ちょっと変な夢を見たんだ」 野球部でランニングをしている夢を田島は見たそうだ。 初めは声出しをしながら皆揃って走っていた。 先頭を走っていた田島はちょっとだけペースを上げて走りたくなった。 皆の事だから、急にペースを上げるなとか怒りながらもついて来てくれると思ったのだ。 『こら、田島、勝手にペースを上げるなよ!』 後ろから花井の怒った声が聞えた。 きっとそのまま追い掛けて来てくれると思ったのだが、気が付くと田島一人だけになっていた。 『皆、何処行ったんだよ?』 真っ暗な中に一人取り残された田島は不安になって辺りを見回した。 でも何処にも誰もいなかった。 『ねぇ、花井、置いてかないでよ!!』 そう叫んだ瞬間、目が醒めた。 「目を離したら、花井が夢みたいに何処かへ行っちゃうみたいな気がしたんだ」 そんな訳ないのになと苦笑を浮かべた田島は今にも泣き出しそうに見えた。 「…オレはお前を置いて何処かへ行ったりしねぇよ」 花井はぎゅっと力強く田島を抱き締める。 脳裏には百枝の『田島君を独りにしないであげてね』という言葉が蘇っていた。 飛び抜けている能力は孤独を引き寄せるのかも知れないと花井は考えた。 「心配だったらずっとオレの事を見ておけば良いよ」 だけど自分は田島と競うと決めたから、決して独りにはしないと心からそう思うのだった。 ...
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