singersong professor KMの日記

2003年04月29日(火) 昨日ゼミ生に

 昨日ゼミ生に話したことだが,というかゼミ生を挑発してみたのだが,27日の日曜日のテレビ番組「サンデープロジェクト」で亀井静香議員が,小泉首相は,株価下落,景気悪化,倒産続出が起こっても,これは政策の失敗とは考えておらず,「構造改革」が順調に進捗している証と受け止めている,だから,小泉政権が続く限り不況は終わらない,と述べていた。なるほどと思ったものだ。

 そこで学生諸君に挑発した。小泉政権が続いて不況が深刻化して来春の就職戦線で苦労するか,亀井政権ができて景気は良くなり就職戦線が明るくはなるがひょっとして土建屋政治が少しばかり復活するかも知れない,この二者択一だとすれば,君はどちらを選ぶか,というものだ。小泉派あり,亀井派ありのようだったが,この二者択一には学生諸君も答えにくかったであろう。

 しかし,亀井静香氏は良いところを衝いている。どんなに不況が深刻になろうと,小泉首相にはそれが「構造改革」の成果だと思えるわけだから,景気が良くなるはずがない。景気をよくしようとするはずがない。たしかに,全部潰したら後は立ち直るしかない。それがよい,という説もよく聞く。果たしてそうだろうか。

 最近,田作朋雄「事業再生」角川書店,2002年,というのを読んだが(これはよい本だ,一読を薦めたい),企業の再生の場合,もう少し早ければ何とかなったけれども,もはや手遅れということがあるという。経済でも同じではないだろうか。例えば,今回の不況も,何度もチャンスがあったけれども,景気回復のそのチャンスを逃し続けてきたのではなかったか。事態を放置したと言うより,事態を悪化させる政策を採り続けてきたのではなかったか。だから,政策不況だといわれる。

 典型は97年の橋本政権による,財政再建,増税路線である。せっかくの景気回復の芽が,あの段階で摘まれてしまい。ますます景気は悪くなり,その後の財政出動の結果,財政再建がかえって遠のいたのではなかったか。

 それでも小泉政権の支持率が一定を保っているのは,ゆでガエル状態になるまで気付かないからだろう。つまり,水いっぱいの鍋の中に蛙を入れておき,徐々に火を強めていけば,最初はぬるま湯なので,カエルも鍋を飛び出すことはない。ところが,そのうち水は熱湯となり,気付いたときはカエルもゆでガエルになってしまって,死んでしまうというものだ。いまの日本人もゆでガエルになるまで気付かないのだろう。平和な国民だ。


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