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2008年12月14日(日) 「 ビッグスリー は救済すべきでない 」 という正論



「 倒産のない資本主義なんて、地獄のないキリスト教みたいなものだ 」

                  フランク・ボーマン ( アメリカの宇宙飛行士 )

Capitalism without bankruptcy is like Christianity without hell.

                                  Frank Borman



その国の文化や、民族気質を知るには、しばらく住んでみるのが一番だ。

遠くから想像を働かせるだけでは、正確に理解することが難しい。


アメリカ人にとっての [ fairness ] という概念は、日常生活の中に深く浸透し、老人から子供まで、とにかく “ フェア ” に扱われることを期待する。

どのような “ 理由 ” があろうとも、それが守られなかったと感じた場合は、不満を抱かせることになるので、説明に多くの時間を費やさねばならない。

アメリカ人の親が、子供にスポーツを体験させたがるのは、「 規則に従い、相手に対して不当なことはしない 」 ことを学ばせるためでもある。

これは日本でも同じだが、スポーツの世界では “ フェア・プレイ の精神 ” が強調されており、勝ち負けや、健康な体を作るだけが目的ではない。

スポーツの経験が少ない人は、どちらがゲームに勝つかという 「 結果 」 に拘るが、プレイがいかになされるかという 「 公正さ 」 も、重要なことである。


先日、「 米自動車大手 ( ビッグスリー ) 救済法案 」 が事実上廃案となり、景気のさらなる悪化と、金融危機の深刻化に対する懸念が広がっている。

ビッグスリーのうち1社でも破綻すれば、大量の失業者が発生し、世界的な金融市場、自動車産業の混乱に繋がる危険性が高い。

現在、アメリカだけでなく、各国が進めている景気後退の回避努力も、彼らが破綻することで、そのすべてが、暗礁に乗り上げてしまう懸念さえある。

ならば、「 なんとしても救済すべきだ 」 という意見が出ても当然なのだが、「 破綻企業の救済を、納税者に頼るべきでない 」 という意見もある。

アメリカ議会で法案が通らなかったのは、まさしく、後者側の意見が前者を上回ったからで、そこにはアメリカ人の根強い [ fairness ] の意識が潜む。


いくら破綻した場合の影響力が大きいといえど、ビッグスリーは民間企業であって、一部の取引先などを除けば、大半の国民に直接的な利害は無い。

もちろん、そこの従業員や、下請けの人々が路頭に迷うと、経済全体へのダメージは発生するが、かといって 「 他人事 」 に変わりはないだろう。

街角の小さな商店が苦境に陥ったとき、ビッグスリーが支援してくれるわけではないのに、逆の場合だけ、救済を援助するというのも不条理な話だ。

誰もが 「 公正さ 」 という観点での矛盾を感じながら、現実的問題の大きさから、ルールを度外視して救済しようとする人、それに抵抗する人がいる。

どう考えても、倫理上は 「 税金を使って救済するな 」 という意見が正しいわけで、たとえ世界経済が混乱しても、その意見を非難はできない。


そもそも、ビッグスリーが肥大化し、業績が悪化した背景には、金融不安の問題だけでなく、彼ら自身の 「 怠慢 」 に依るところが大きい。

本来、製造業の基本は、売上を拡大するために、地道な市場調査を行い、知恵を絞って商品開発し、営業が汗を流して必死に売り込むものだ。

ところが、手っ取り早く売上を獲得するために、市場で実績のある企業を M&A で買収したり、傘下に加える手法を、近年は多用し続けてきた。

その中には、明らかに赤字から黒字転換できそうもないような企業も含まれたが、市場占有率を上げる効果ばかり狙い、闇雲に肥大したのである。

商品開発に力を入れず、肥大化した彼らは、遅かれ早かれ没落する運命にあったわけで、サブプライムローンの影響と、その問題は無関係だ。


かつて日本では、不良債権処理に苦しむ銀行に対して、国民からの反対を押し切って、巨額の公的資金を注入し、これを救済した歴史がある。

結果的に、それで金融不安が解消できたのだから、これを 「 成功例 」 に挙げる人もいるが、はたして、そう言えるだろうか。

国民に助けてもらった 「 恩 」 など微塵もなく、儲かっても利益を還元しないうえ、いまだに法人税も支払わず、過去の失敗に対する反省もない。

これだけ世界が 「 サブプライムローン 」 で大騒ぎしているのに、“ 日本版サブプラ ” ともいえるサラ金会社を掌中に収め、荒稼ぎを続けている。

資本主義の健全性は、「 潰れる企業は潰す 」 ことで保たれる側面が強く、一時的に回避しても、いづれ、さらに大きな問題の火種となるだろう。


最初に挙げた [ fairness ] の話に戻るが、仮にビッグスリーが破綻した場合に損失を被る金額は、当然、人によって違うはずである。

ビッグスリーが破綻すると 「 世界中が苦境に追い込まれる 」 ように語る人もいるが、それは デタラメ な意見であり、まったく正しくない。

たとえば、北朝鮮の貧民にとって影響があるかといえば、まったくそうでないし、お金持ちの ビル・ゲイツ が生活に困るかといえば、そんなこともない。

国家の一大事に、忠誠を誓って奉仕するのは国民の務めだが、私企業の救済に、影響の大小を度外視して納税負担を強いるのは、不公正である。

さらに株価が下落し、景気が減速することを望まないが、たとえそうなったとしても、私はアメリカ人が [ fairness ] を重視する姿勢を尊重したいと思う。






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