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■ 超自立的治癒魔法少女
「よく見てろよ」 刺さるような冷たい空気をものともせずに、彼女は腕を剥き出しにした。白い肌(たいていのスオムス人はみんなそう)が、薄い光に照らされる。影を落とすように、青あざが滲んでいた。そこを指さす。付き合いは長くなったが、まだ見たことのない瞬間だ。じっと覗き込む。 「こら、そんなに近づいたら見えないだろ」 「あ、あー」 わずかな肌の変化である。もっと大きなケガなら一目瞭然だろうが、そんな事態ならのんびり見物しているわけにもいくまい。前々から頼み込んで、やっと今日この時を迎える。もっとも、それは突然訪れるから、タロットの真っ最中だったのに、カードを放り出して駆けつけたってわけだ。 「お!」 淡い光が皮膚を覆う。すでに変化は始まっている。光がよく当たるように頭の位置を調節して、青あざがなくなっていくのを見つめた。ごく小さな変化の連続。注意深くなければ、青あざがあったことも忘れてしまうような、静かな修復。 二分もかからない。 「ふう」 もうそこには何もなかった。滑らかな皮膚。傷ひとつない。 「すっげー」 「そうだろ? 見たか。これが私の能力だ」 おだてりゃすぐに木のてっぺんに登ってしまうらしく、得意そうにこちらを見返す。魔法を使っている時はそれなりにアレなんだな。言ってやろうかと思ったけど、やめた。 「あ」 それでふと自分の手を見て思う。こいつはどんなケガでも治せるから、戦場にいるわりには、あんなにケガが絶えないわりには、肌がきれいだ。治ったばかりの腕を掴む。細くて、冷たい。 「何すんだよ!」 「おまえの腕に触ったら私のささくれも治るかと思ってさ」 「治るか! ありがたい御神体とかじゃねー!!」 冷たいだの痛いだの、怠け者のくせに手が荒れてるなんておかしいだの、散々わめかれた。ちっとも手はよくならないし。最悪の運勢の持ち主で、結構やばいケガも何度か負っていて。もしこの能力がなかったら……。随分と違う未来の中に、自分たちはいただろう。 「ちぇっ。役に立たないなー」 「なにっ! イッルだって自分ばっかり避けて、いつも私が当たってるじゃないか」 運は悪いけど、こういう奴は悪運を持ってる。役に立っても立たなくても本当はどっちでもよかった。自分のことはこいつにどうにかしてほしいなんて思わない。 自分たちは、いつだって勝手にそれぞれ、お互いに無事。 「あー、さむ。ニパはしもやけも治せるのか?」 「おまえ、さっきから私のこと皮膚科だと思ってるだろ」 「だって、他に悪いとこが見当たらないんだよ」 「……頭とか? 治せる自身はないけどな」 「なにをー! 私のどこが頭悪いんだ」 「イッルの頭を占めてる女の子の割合が80%から60%ぐらいに減るんじゃないか?」 「そんなにじゃないぞ! せいぜい45%ぐらいだな」 「十分じゃねーか!」
多少のケガならすぐ治る。 ってどの程度なのか。それは他人にもかけられる魔法なのか。芳佳みたいに光るのか。気になります。 悪友ってほんといいものですね。
2010年01月09日(土)
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