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■ アハ体験(月星的な意味で)
おいちゃん、やっとわかったよ。 的なある理解が舞い降りたので、ちょっとだけぐだぐだ書きます。
UNOの地方ルールについて話し合っていたはずだった。 会話が途切れて、みのりは珍しく口に何も入れていない。紗枝はお茶を入れ直している。何を映しているのかわからない細い目は、いつも笑っているように見えた。そこだけ妙にきっぱりと。言った。 「ほっとけね〜って、思ったんだ」 あの日、あの時、彼女の目を見てしまったから。それ以上の理由はない。 捨て猫を見たら、放っておけない性質だから。それ以上の動機はない。 ああ、と思ったのだ。祈るような気持ちは持たないから、天を仰いで仕業に驚いただけだ。こんな出会いもあるのだ。 「本当に、それだけかよ」 信じられない、と言いたいのだろう。まったく納得していない玲は、不機嫌そうにお茶をすすっている。紗枝が滑らかな動作で玲の隣に横座りに座った。 「でも、羨ましいわ」 「あ?どっちが?」 玲はちょっと鈍い。紗枝が、まるでわかってない玲をちらっと見て、ため息をついた。知らないというのは暢気でいい。わかっている玲だったら、紗枝の心は少しは楽になる?それはわからない。 「紅愛に決まってるでしょ」 ほほう、とみのりは声に出した。その変な相槌に、二人は吹き出した。 「暢気ね、みのりも」 も。 玲とみのりの唇が『も』の形になる。 「紅愛は恵まれてるんじゃないの?実は」 実は、とつけたのは、紅愛になってこの剣待生制度の生活を乗り切るのは結構大変そうだ、と全員一致で思っているからである。体力的な面、技術的な面で、弱いというのはしんどい。餌食になるから。誰だって餌食はいやだ。 「みのりがいてよかったわね」 弱くても奪りにいく権利を、一時的とはいえ手にしたのは、とても稀有な才能のおかげ。あの日、みのりがかかった魔法のおかげ。誰と組むか決めかねていたみのりの心を一瞬にして掴んだ。名前も知らなかった、性格も。 「確かにあいつ、ちょっと小綺麗だけどよ」 それだけで、見とれるか?普通。 玲が鼻先を突付いてくる。お前、結構面食いなんだな、って。 「あら、性格を先に知ってたら刃友になったかしら」 紗枝、さらっとひどいことを。でも否定できない。組んだことを後悔したことなんかないけど。 「別にい〜んだ。あたしは」 二人が散々からかってくるけど、気にはならなかった。
痛い? 血が滲んで、痛みを我慢している。ナース隊を呼んだ方がいいだろうか。しゃがんで、腕を取っても立ち上がらない。心配で、ずっと側にしゃがんでいた。鐘は鳴り終わり、授業が元通り始まっている。でも放っておけない。 「……いいから。このくらい、別に平気」 先に戻って、と無感情に呟く。首を振る。 「……一緒に戻ろう」 「……好きにしたら」 何が悔しくて、今何を考えていて、どうして涙を堪えているのか、全然わからないけどそこから一歩も動かなかった。二人でじっとしていた。 きっと一生見放せない。 善でも悪でも、損でも得でも。進んでも退いても。 「紅愛がいなきゃ」 どうしてなのか、わからないんだけども、どうしても。
自分がおかしくなってしまったのはあの日から。 それまでと違う理由を見つけた日。 「みのり!」 寮に戻ったら、なぜだか早速叱られた。今日はお菓子の袋も片付けてから出かけたはずなのに。紅愛は片手に携帯を持っている。帰りが遅いのを心配してた?でもみのりの携帯に着信はない。 「なんでよりにもよってあの二人に色々しゃべるのよ!」 「おお?」 どうやら別れて早々に、紗枝は紅愛に電話をかけたらしい。わざわざ紅愛をからかうために。 「……紗枝って紅愛好きだな」 「どこが!さんっざんいびられたわよ」 「けどあたしは紅愛いっぱい褒めといたぞ」 「それが余計なの!」 おお、怒っている。ひたすらプリプリしてる紅愛に何を言っても無駄だから、静かになるのを待つ。でもきっとそんなに怒っていない。本当に怒ってる時とは、違う。わかっているから大丈夫。 「褒められるのもけなされるのも、嫌いなの」 背中を向けた紅愛は小さな声でそう言った。 やれやれだ。 声にも出さずにみのりは言った。
2009年03月09日(月)
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