池ポエム
ハンス



 幻想水滸伝第2回『皇帝』

 ソラの目の前の荘厳な空間は、ある一人の人物の存在によって、ただの飾り立てられた荘厳さというものを遥かに脱していた。重々しい顔の構造は部位の各々が重さを発して鉛となり、加えて竜のごとき雄大な髯が音を上げるかのようだ。山のようにどっしりとした肉体は恐れるところ一尾もなく、それは輝ける鋼の黄金に硬く包まれている。一代で赤月帝国を築き上げた英雄というものはかくあるべき、という代々この地に語り継がれているモデルを完璧に満たしている。なるほど、皇帝陛下というのは並とは違うな、とソラはぼんやり考えた。
 「テオよ。よく来てくれた。変わらず元気そうだな。」
 「陛下とともに戦地を駆け抜けたあの頃と変わっておりませんぞ。」
 二人の英雄は王と部下という立場の差こそあれ、いかにも勇士然とした偉大な笑みを浮かべあった。ソラの目にも、それは誇らしく、また羨望すらも沸かせた。父が国中から尊敬される勇士であることはよくよく知っている。だがそれは周りのものが口々にいう耳からの情報であった。幼いながら父をこの世で最も立派なものだと信じて疑わないソラはそれらの人づての部分をつなぎ合わせて、空想の中で将である父というものを完成させてきた。それが、今目の前で繰り広げられているのである。空想以上だった。軍門の子としてそれなりの訓練を受けてきたとしても、実戦経験はないソラには描き難いほどの戦う者としての香りが放たれている。純粋に憧れた。戦地を駆ける将同士にしかわかりあえない何かがあるのだろう。いずれ自分もそうなりたいと思った。それを何より素晴らしいものと、無邪気に憧れた。

2002年02月26日(火)
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