結果を求めることは非常に大切ですが、あまりにもせっかちに勝つことばかりを考えてしまうと、どこかで伸びが止まってしまうのではないかなと思います。 たとえば、大きな勝負のときには、やはり人間の心理としてじぶんがいつも得意にしている戦法を取りたいと思うし、手堅く進めていきたいとも思う、あるいは安全にいきたいとも思うでしょう。しかし、毎回毎回それを繰り返していると、やはりどこかで行き詰まり、進歩が止まってしまいます。 新しいことを行うのは、リスクが大きいものです。何か新しいことに挑戦したとしても、うまくいくことは、多分半分もない、失敗する可能性のほうが圧倒的に高いと思います。 自分自身を守りたいとか、大事にしたいという気持ちも大事ですが、プロになってからはできるだけ、そういう思いを頭の中から取り払うようにしていました。 そうすることによって、悪い結果が出る時期もあるかもしれないし、「この一局に関しては負けてしまうかもしれない」と思うこともありました。しかし、プロとはいえ、やはりまだ学ぶ時期にはかわりないので、挑戦する姿勢、こころ構えを維持していこうと思っています。
羽生 善治『挑戦する勇気』より
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