夏撃波[暗黒武闘戦線・歌劇派]の独白

2021年03月11日(木) 〈3月11日に生まれる〉


あの日
世界は跡形もなく崩れ去り
私もまた世界とともに
消え去っていくものと
恐怖した

あの日
産声を上げたばかりの命は
激しく揺らぐ世界のなかで
懸命に生きようともがいていた

私の腕のなかで
あまりに小さく
はかなげな君は
けれど
小刻みにふるえ
呼吸し
かすかではあるが確かな鼓動を
私に伝えてきた

生きたくとも生きられなかった命がある一方で
この上なく困難な時代に
生まれ出づる命もある
絶望に打ちひしがれながらも
生き残った私たちは
これからどこへ行けばいいのだろう

危うげな世界のなかで
君はあまりに無防備だ
いともたやすく壊れてしまいそうな君を
この私が抱きしめて
守っていかなくてはならないのだと
見えない強い力に
突き動かされた

壊れかけた世界
汚れきった世界かもしれないけれど
決して失われることのない美しさが
確かにあるのだと示すため
私はこの時代を何としても
生き抜いていかなくてはならない

この世界は生きるに値するのか
その答えがYESであると
胸を張って答えられるようになるまで
私は君に寄り添い
道なき道を歩んでいくしかないのだ

3月11日
あの日
大きな産声を上げた君と私は
この世界が生まれ変わるための
始まりの一歩を
今ここに刻もうとしている

※数日前に作った詩です。3月11日に合わせて、発表します。


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