夏撃波[暗黒武闘戦線・歌劇派]の独白

2002年09月07日(土) 新・厳窟王

 今日、女友達とケイビング(洞窟探検)に出掛けた。と言っても、我々だけで洞窟の奥深くまで踏み入っていくのは危険極まりないので、ガイド付きのケイビング体験ツアーを企画している団体にあらかじめ参加申し込みをしておいたわけだが。
 今日は、郡上八幡にある鍾乳洞を2時間ほどで探検。ケイビング・スーツ、ヘルメット、ヘッドライト、ベルト、シューズなどを装着し、洞窟に入る。外の温度とは10度くらいの開きがあって、やや肌寒い。洞窟の中は決して平坦ではない。また、地面は湿っていて滑りやすくもなっている。全身で岩にへばりつくようにしながら、滑って転落しないように進んでいく。時には、幅が狭く、横向きにしか歩けなかったり、うまく体を入れ替えなければ通り抜けられない場所もあった。あるいは、高さがないために腰をかがめて歩いたり、匍匐前進でしか進めない場所もあった。途中、コウモリとも遭遇した。
 縦にも横にもある程度奥深く進んだところでヘッドライトを消してみる。太陽の光がまったく射し込んでこない暗黒の世界。時間の感覚も失われ、外界とは完全に遮断される。方向感覚も失われ、ひとりではこの洞穴から抜け出ることはできそうもない。

 そこで私は空想に浸りきる。ここはかつて王宮のあった場所。「私」は、この国に君臨する王であった。しかし、植民地政策を推し進める隣国の陰謀により王宮は爆破され、瓦礫の下に私は閉じこめられた。敵はしかし、王宮の爆破の際に「私」も死んだものと思い込んでいる。「私」は何度も洞窟の外に抜けるべく動いたが、気が付けばどうやら同じ所を何度も回っているにすぎないのであった。「私」は迷宮に幽閉されたかつての王、それをどこかの覗き穴から何者かに見られているのではないか、そんな妄想にも駆られた。それでも、やがてどこからか差し込む一条の光を頼りに這うように進んでいくと、洞窟の外に出ることができた。太陽の光は「私」にはこの上もなくまぶしく、一瞬視力を失ったかのような錯覚にとらわれた。蜃気楼のように浮かぶ街、そしてその先には新しい王宮とおぼしき建造物が屹立していた。もう長いこと見ることもなかった外の世界を前に「私」は立ちすくみそうになった。時はすでに20年を経過していた(まるで小野田寛郎さんや横井庄一さんの話みたいだ)。「私」はすっかり痩せ衰え、額にはシワが深く刻まれ、かつての黒髪も今は白いものに完全に覆われた。実際は40代半ばではあったが、どこからみても老いさらばえた乞食としか映らなかった。最早誰一人として「私」をかつての王と認識する者はなかった。かつての都は、敵対する隣国の支配下に置かれていた。恐怖政治を行う現在の王の下で、人々は疲弊していた。「私」のなかにふつふつと湧き起こってくる、いかんともしがたい思いがあった。「私」は、自らの命が終わってしまう前に何としても復讐を成し遂げようと、心に誓った。

 2時間のケイビング体験も終わってしまうとアッという間であった。洞窟から一歩外に出た瞬間、私は時間の感覚を取り戻すと同時に、現実の世界に引き戻された。ものすごく楽しい経験で、ちょっとハマリそうだった。
 あなたもぜひ体験してみてはいかが。


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夏撃波 [MAIL]