十夜一夜...Marizo

 

 

人生いろいろ - 2007年10月31日(水)


私の仕事は世間一般で言うところの「金融関係」
しかも個人相手だ。

お客様の命の次に大切なお金と係わっていると
おのずとそのお客様の人生を
垣間見てしまう事がけっこうある。


例えば年配のお客様が多いので
「実はシベリア帰り」だとか、「特攻あがり」だとか。



今日、家にお伺いしたお客様は74歳の女性。
郊外の立派な一軒家に一人で住んでいる。
息子がいるという話は以前から聞いてはいたが
ついぞ姿形を見た事はなかった。

仕事で地方にいるとのことだったが
その家には、ちゃんと車を置くスペースがあり
ああ、息子さんが帰ってきたときは
ここに車を置くんだろうなぁと思っていた。

しかし、今日、話を聞いて愕然とした。


「恥ずかしい話なんだけど・・・」と語り始めたお客様は
少し俯きながら、実は息子とは16年間会っていないと言った。


息子が30歳までは一緒に同居をしていたが
長距離トラックを運転している(とお客様はいう)仕事上
事務所がある岩見沢に引っ越して(とお客様はいう)から
お正月もお盆もただの一度もこの実家に顔を出さないのだと。

用事があるときは携帯電話に連絡をするのだと。

来られても困るからと今はどこに住んでいるのかも
教えてもらえないのだという告白を聞かされた。


もちろんお客様が言うように
薄情な息子なのかもしれない。
それでも16年もの間、顔も見せず
年老いた母親の顔を見にも来ないのには
薄情だけでは済まされない何かがきっと
この親子に、この家族にあったのだろうと思った。


最後に見たのは30歳の息子。
今は46歳になっている息子。


息子のほうから「元気か?」と連絡が来る事は一度もない。
こちらからかける携帯電話にすら
なるべく仕事の邪魔にならないように
何度もかけてしつこいと思われないようにと
気を使う姿が哀れというか辛かった。


幸せな人生って難しいものだなぁと
つくづく考えさせられた一日だった。
Marizo


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