「事実」と「真実」 - 2005年06月17日(金) あれは確か、社会人になって 2、3年経っていた頃であろう。 私は一冊の本とめぐり合った。 当時、NTTが民営化され NTT株の上場という 証券界では一大イベントを乗り切り 日本全体がバブルへの階段を登り始めた時期だった。 しかし私自身は事務職であり 目の前の伝票処理に連日の残業を余儀なくされ あまり世間の情勢などには興味も無かった。 その後に「リクルート疑惑」といわれる 政財界を巻き込んだ贈収賄事件が起きた時 NTTを民営化させた社長が逮捕された。 私は「FBI」でも「CIA」でも ましてや「モサド(イスラエルの諜報機関)」でもない。 今、世の中でいったい何が起きているのかを 知り得るツールは新聞やテレビのニュース番組に ワイドショー。それに地下鉄の中吊り広告なのだ。 当時は良く「ニュースステーション」を見ていた。 難しい業界用語や物事の仕組みを 久米さんが解り易い言葉で説明するのだが その中ではリクルートの江副社長は 酷い悪者であった。 賄賂として現金の替わりに値上がりが見込める 株式を渡すという 昔で言えば悪代官の様相であった。 私は当たり前にのように 「江副さんは悪い人」だと思っていた。 それが一冊の本(リクルートファイル「白い眼」)と 出会ったことで 実はそんなに悪い人ではないのかも 知れないと思った。 大袈裟なようだが その時にマスメディアの怖さと 自分の情報分析能力の無さを思い知った。 「事実」と「真実」 非常に似通った言葉だけれど 実は非常に大きな差があると 気がついたのもこの時であった。 いいだけ年をとって それなりに経験値を積んだつもりでいたが 結局の所 私の情報分析能力は あの当時とあまり変わっていない事を 思い知らされた。 一週間かけて「国家の罠」という本を読んだ。 鈴木宗男氏の腰ぎんちゃくといわれて逮捕された 外務省(現在裁判のため休職中)の人が書いた本である。 「田中真紀子VS鈴木宗男」という図式は それぞれの強烈なキャラクターとあいまって 連日のトップニュースであり ワイドショーネタでもあった。 鈴木宗男氏に対する私の印象は 見た目のおっさん臭さがすべてであり 政治家につきものの狡猾さが滲み出ている気がした。 「品がない」 党の中での自分の立場が一番重要であり 私利私欲の固まりで 政治家らしい仕事は 何一つしていないと思っていた。 私にすると 北海道という地元の選挙区から 出ている政治家である。 心底「恥ずかしい」と思っていた。 そしてそれは最初から最後まで宗男氏に寄り添う 足寄のスーパースター「松山千春氏」へも向けられた。 自分の浅はかさを弁護するわけではないが おそらくこの感情はあの当時 広く一般に共通していたものではないだろうか? しかし本の中の鈴木宗男氏は 私のこの思いを根本から覆すぐらい 精力的に政治という仕事と向き合っていた。 ノンフィクションである。 すべて実名で描かれており 鳥頭の私でもまだ記憶に残っている事が多かったので おもわず「ああ、そうか。そういう事だったのか」と 深くうなずき納得できることが多かった。 「国家の罠」〜外務省のラスプーチンと呼ばれて〜 佐藤 優 あの当時私と同じ思いで ブラウン管の中の鈴木宗男氏を見ていた人たち全員に 是非読んで頂きたい一冊である。 Marizo -
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