カタルシス
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2006年02月08日(水)  Wordplay 

mixiで「漢字バトン」なるものを見かけて そんなものまであるのか〜と妙に感心 質問の内容は以下の通りでした

【1】バトンを回してくれた人に対して持つイメージの漢字は?
【2】前の人が【6】で回した漢字に対して自分が持つイメージは?
【3】大切にしたい漢字を3つ
【4】漢字のことをどう思う?
【5】最後にあなたの好きな四字熟語を3つ教えてください
【6】次の人に回す漢字を3つ
【7】バトンを回す人5人とその人をイメージする漢字を。


申股を「こうまた」
土産を「どさん」
老舗を「ろうほ」

と読んだというお身内の話が添えてあって ベタさ加減に微笑ましくなりましたが そう言えば自分も

福生を「ふくお」
雪洞を「せつどう」

と読んで失笑されたことがあったなぁ〜と思い出しました レベル的には大差ないじゃんね(苦笑) 雪洞は普段使う単語じゃないからいいとしても 福生はヤバイだろ 地名・人名は正直網羅しきれません

漢字ってその1つの文字が既に意味を持っているのがまず面白い 漢字を使う国は中国(台湾・香港も含めよう)と日本と 昔の韓国くらいかな
韓国は今でも厳密には使えなくもないみたいですが ハングルしか読めない世代が出てきてるらしいので 漢字はだいぶ廃れた文化のようですよ

一つの文字に意味があるって部分では サンスクリットも共通していますが 宗教文字のように扱われてしまっていて 一般的な感じがしない気がします なんかこう「一字に一仏が宿る」イメージが強いヨ 梵字1コに1人の仏様
あ サンスクリット文字=梵字です キャカラバア

字面とか音とか綺麗で好きになる文字ってあるもんなー 漢字

最近インパクトあった単語を挙げると「寂寞」という言葉 初めて聞いたときは漢字変換ができませんでした 聞いた瞬間“すごい歌詞だなぁ”と思った そう ライブで初披露された歌の詞だったんですけどね 一発聞いて気になったので帰ってから調べましたもん

寂寞(せきばく)=ひっそりとしてさびしいさま。じゃくまく。

だそうです
そんな言葉よく知ってるよなー…と感心しましたサ 物知りというか ちょっとマニアの域な小渕くん(←あ)

アルファベットは1文字じゃ意味を成しませんからね 中には俗物的な隠語を示しているものもあるようですが 漢字のように元々持っている明確な意味合いとは違いますし
日本独自の文字である仮名もアルファベット同様1文字では「意味」を持たず 漢字を崩して成り立った「音」だけの文字ですが それはそれでまた面白いことになる
解りやすいところを挙げるなら一休さんのとんちで有名な

「このはしわたるべからず」 ってやつね

「橋」と「端」をかけてるわけですが これ 漢字を使っちゃったら意味が固定されてしまうので ここは「橋」でも「端」でもなく「はし」でなきゃダメなわけでしょ なんつーか 日本人のファジーな感性はこんなところからもうかがい知れたりすんのかもデスヨ

子供の時よくやらなかった?

「ねえ ちゃんとおふろに はいってる?」
「ぱん つくったこと ある?」

西洋にはアルファベットを並び替えて遊ぶ「アナグラム」ってワードプレイがありますが(日本語でもできるけど)日本語のことば遊びって それ以上に面白いぞ

専門時代に文化思想史かなんかが必修で(←コピーライター向けの授業だったんだろうな) 言葉について色々講釈されましたが 「回文」とか「折句」の実践がすごく面白くて 一時ハマったことがありました

「回文」ってのは 上から読んでも下から読んでも意味のある文章になっているもの
「折句」は歌の文節の頭や尾に据える文字に 意味のある言葉が隠されている和歌や狂歌のこと

例を挙げると

【回文】
永き世の遠の眠りのみな目ざめ波乗り船の音のよきかな
(なかきよのとおのねふりのみなめさめなみのりふねのおとのよきかな)

意味くだし「長い夜の深い眠りから皆が目覚める 宝船が波に乗って進む音のなんて気持ちの良い夢だろうか」

【折句】
唐衣 着つつ馴れにし 妻しあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ 在原業平

らごろも
つつなれにし
ましあれば
るばるきぬる
びをしぞおもふ

「かきつばた」の文字が隠されています
意味くだし「唐衣をずっと着続けていると次第に身に柔らかくなじんでくるが ちょうどそのように慣れ親しんで来た妻を都に残しての旅は 思えば遠くまで来たもので なんとやるせないことだろう」

もっと一般的に有名なのは「いろは歌」でしょうか 厳密には詠み人知らずの歌ですが菅原道真公の作だとされる説がまことしやかに語り継がれている名歌
色は匂えど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見し酔ひもせず
いろはにほへ
ちるぬるをわ
よたれそつね
らむうゐのお
やまけふこえ
あさきゆめみ
ゑひもせ

綺麗なのにコワイよこの歌 「咎なくて死す(無実なのに死ぬ)」って 小学生のとき何も知らずに覚えた身近な和歌が こんな言葉を秘めていたなんてショックでしたよ ワザと隠してるにしても 偶然の並びだったとしても おっかない
いや いろは五十音をダブることも余すこともなく使って 歌にも意味を持たせ 更に7文字ごとに一字ずつ別の言葉を隠すなんて 偶然だったら余計怖いけどさ…


…はい はいッ はいはいはい!


流れを変えます!
私が出会った中で一番秀逸だと思った折句をご紹介してお終いにしましょう!折句のプレミアムバージョン!!

それは頓阿法師と兼好法師の文交換(要は文通)

兼好:「夜も涼し 寝覚めの刈穂 手枕も 真袖も秋に 隔てなき風」
「涼しい夜です 仮の庵でまどろんでいると手枕や袖の間を風が吹いてゆきます」
もすず
ざめのかり
まくら
そでの秋
だて無きか

頓阿:「夜も憂(う)し ねたく我が夫(せ)こ はては来ず なおざりにだに しばし訪ねひませ」
「辛い夜です 妬ましいあなたはついに来なかった なおざりでも良いから少しは訪ねて下さい」
るもう
たくわがぜ
ては来
ほざりにだ
ばしとひま

兼好が「米たまヘ、銭も欲し」(米をくれ、金も欲しい)と無心したのに対して
頓阿が「米はなし、銭すこし」(米はないけど金なら少し)と返事してるの

解 る か な ? (笑)

頭を順に読んで尻を逆読みすんですよ すごくない?!
初めてこのやり取りの存在を知ったときには鳥肌立つほど感動したのです
この頃の日本人の粋と賢さは 一体どこへ…

『Wordplay』Jason Mraz

 


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