カタルシス
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そして『贋作・罪と罰』の日
意地と根性と地下道を駆使して 何とか開演数分前に座席に到着 友人は先に来ていて既にパンフレットも購入済み 最後列だったので後ろのポールに上着をひっかけて タイムトライヤル・トゥ・ザ・レストルーム 休憩ないというので慌ててトイレ行っておきました
席に戻って一段落 シアターコクーンは初めてではありませんでしたが 普段舞台になっているところにも席が並べられていて 普段はアリーナ席?になっている勾配の少ない一面に 特設の舞台が設えてありました 中央に位置するその舞台にむかって客席が回りを取り囲んでいる状態です 円形劇場みたいな感じ
開演時刻になっても特に動きがなかったので フライヤーの束に目を通していたら いつの間にか舞台に人影が蠢いていて「わ!」と慌ててそちらに集中しました 席が後ろの方だっていうのは分かっていたのに まんまとオペラグラスを忘れたよ… 全体が見渡せていいんだけども やっぱり遠いなぁ〜〜
この『贋作・罪と罰』はドストエフスキーの『罪と罰』をベースに独自のアレンジ脚色を加えたお芝居です 脚本・演出:野田秀樹 世に言う「野田地図(ノダマップ)」の舞台です
不読書家の私は大元の『罪と罰』を読んでもいないし ぶっちゃけあらすじも調べずに来てしまいました 隣に座る読書家の友人にこっそり尋ねたところ 彼女も大まかな筋しか知らないとのこと まぁ 知っていた方がアレンジ具合が分かって面白いでしょうけれども 知らなくても大丈夫なように作ってくれてるでしょ野田センセ
主演は松たか子 お芝居上手いと思ったこと1度もありませんが 別に嫌いでもない 頑張ってるなーと思う人 でも我々がメインで見たかったのは 準主演の古田新太 あともう一人新感線から右近健一が出演していたので何となく気にしい というか 新太さんも右近さんも顔が大きいから目立っていいわよ つくづく舞台向き(笑) 個人的には段田安則も好きな俳優さんだったので おしなべて広く見応えのある面々でした
友人のパンフレットを少しのぞかせてもらったら 新太さんの役名が「才谷梅太郎」となっていたので すぐに「坂本龍馬」のことだなぁと思い 他にも「志士ヤマガタ」「志士イトウ」「志士クロダ」がいて「甘井聞太左衛門」まで見たら 背景設定が幕末なんだということが解りました 元ネタ知らないけど この設定は楽しめそうです♪ ※それぞれ山県狂介(有朋)・伊藤俊輔(博文)・黒田了介(清隆)・井上聞多(馨)がモデルでしょ?
そんなこんなで初めての野田地図だった訳ですが 正面が固定されていない所為か声が通らない人がいて 台詞が聞き取りづらい場面が多々ありました 中でも主演の松たかが早口気味で一番解読困難でした そういや『有頂天ホテル』のときも早口過ぎて音声さんからNG取られたって聞いたから 基本的に早口な人なのかも知れない… ハキハキは喋ってたんですけども 解らなきゃ意味がないので もう少しスピード調節できるようになると舞台映えするんではないかと思いました 新太さんもちょっと早口な部分があって落ちつかなかった その点右近さんの台詞通りの良さはピカイチで笑えてくるくらいでした あと智役の美波さんも台詞解りやすかったです
裏も表も取り仕切っていた野田秀樹 老婆と主人公の母親役で大立ち回りを見せていました すげぇテンション… 通らない質の掠れ声でまくし立てているので やっぱり聞き取れないところが多々あったのですが なんだか勢いで聞こえた気になったりもしました あの勢いで毎回演ってるのなら大したもんです ある意味一番舞台向き(というかTVで見せる芝居じゃない)大河ドラマのときの勝海舟カッコよかったのにね まるで別人でした(^^;)
小道具は柱や戸板に見立てたポールと その他の色々なものに見立てるための形状さまざまな椅子のみで 場面転換を天井から吊した綺羅布の幕を横切らせることで表現したり 出番のない役者が舞台の裾に置かれた椅子に座っていたり 今まで見たことのない手法をいくつも見せてくれました この舞台演出は素晴らしかった!ちょっと鳥肌立ちました 若干紙一重的な気もしましたが 私はあれはアリだと思う ブラヴォー
最後のシーンが雪景色なのも台詞で想像させる前に 視覚的に解ったし 主人公が不自然なくらい目に鮮やかな赤い衣装をまとっているのも この雪との対比を狙ったんだろうと思えました
松たかの役は男装の麗人 女だてらに学問をし政治を論じる塾生という設定で ずっと詰襟に袴という出で立ちなんですが 冒頭のシーンが終わると地味だった布地の色合いが 上下とも真っ赤になります 物語の内容を考えるとあれは「血」にも見立てられるんでしょう
体にまとわりつく血の鎖
大儀のための殺人は その偉業を成し遂げる天才にのみ 許される行為である
罪と罰のメインテーマ? 読んでないんで解らんのですけどもね
ずっと一人で強がって 男装という鎧を纏っていた主人公・英(はなぶさ)が 最後のシーンで見せるか弱い女性の姿が ちょっと切なかったです 長いこと男のように振る舞っていた彼女が 女の子らしい心情を言葉に乗せるときも どこかぎこちない感じがするんだよね 松たかの棒読みな台詞がいい具合にマッチしてました
「覆された宝石のような朝、それは神の生誕の日・・・」
チケットが高額だったんで自粛しておいた舞台でしたが 思いがけず観ることができて ものすごいラッキーでした 『罪と罰』の原作と幕末の背景が両方解っていたら 相当面白い話だったと思います 興味のある方は是非!っつってもチケット完売してるから今更無理なんだけど DVD化はされるでしょうがレンタルはしないだろうしなぁ…
芝居のDVDってどうしてこう 高いんでしょうね(苦笑)
『血涙の志士』1928年/アメリカ
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