文芸雑誌、『あとん』の連載、 『青い、鮮烈な、いっぽんの水』が 毎号楽しみで。
現在、第三話目であるのですが、 初回で「これだ」と感動した、 みずみずしくてふくらみのある、 豊かな優しい文章と、 優しくあるのに凛とした、 真実の提示の方法に、 読んでいる時、じんとし続けています。
生活とは、目のくらむようなくりかえしでできていた。 ゴミを捨てる、買う、食べる、またゴミを捨てる。 食器を汚す、洗う、また汚す。 毎日たまるほこり、毎日汚れる身体。 ああ面倒だと思って、そのひとつを飛び越すと、 何かがそこからほころび始める。 死んだ母も、ばあちゃんも、誰もがそれに堪え、 あたり前のことのように乗り越えてきた。 呆然とする。圧倒される。
『あとん』 7月号 小池昌代 pp43-44 p/bアートン
「塚本壇(まゆみ)さんです」 蓉子が男を紹介した。 「まゆみの木の、まゆみさんですか」 ばあちゃんが聞く。 「はい、弓をとる木です。 木はうごきませんが、この木でつくった弓は、 遠くまでとんでいくというわけです……」 「木の願いがこもったような名前じゃねえ。 ピンクの小さな花がつく」 「ばあちゃん、さすが、よく知ってるわ」 蓉子が言って、橡は笑った。
同 pp48-49
今月のお気に入りシーン二箇所です。
でも、全文こんな風で本当は選びがたいのです。
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