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| 2005年02月16日(水) | 『親指こぞう』 |
夕刻
そぼふる小雨の
つめたいこと
姉妹とともに県民ホールへむかう
途中わざと迷いこんだように
開港記念館の階段をそろりそろりとのぼっては
雨宿りしつつ
平日
夜の冒険
大人のための子どもの劇場��
『親指こぞうーブケッテーノ』
イタリアから来たお芝居だ
べっとでねながらきくおしばい？
地下ギャラリーがへんてこなお芝居小屋に変貌している
薄暗いちいさな電球がともるなか
木片が敷き詰められ
黒い寝台が並んでいる
森のなかの闇
と、一歩ふみこんで
その劇場はうしなわれたのでありました
レイが泣き出して飛び出した
小屋の中央に座っていた女のひとが
「みんないるから、だいじょうぶだよ」と
背中に声をかけてくれる
予想外のことにこちらも驚く
しんそこ怖がっている
ユイのほうは
ひとりでもだいじょうぶ、と森へ残った
ユイが寝台に寝転んで物語の旅をはじめようとしていたころ
私は外の待合スペースで妹をなだめていたのだけれど
そのうち
音がくっきりと聞こえだした
うすいシャッターに
耳をくっつける
「なに？なに？なんのおと？」
葉を踏む音、鍵をかける音、きしみ、叫び、割れる音
すごい迫力
きっと、そばで、音を出しているのだ
気配を感じる
(あとからつかんだ情報によれば効果音は三百を超える)
手にもった靴で床をたたいて歩く音
砂粒をまいて小雨、というぐあいに
さっきの女の人(ともさと衣さん)が演じ分けているのであろう
さまざまな声、親指坊や、その兄さんたち、おかみさん、
そして人食い鬼の、
こわいこと
涙を浮かべたまま座り込んでじいっーっと聞いているレイ
微笑みとともに受付のひとたちが(なんかみんなきれいな人やった)
椅子やお菓子をもってきてくれて
特別席？で
最後まで耳をすます
終演後
ユイは浮かされるような表情で
小屋から出てきた
