Leonna's Anahori Journal
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2005年11月04日(金) 長い一日〜ミュンヘン市内散策

 
※このジャーナルは、11月4日から13日までの欧州滞在中のことを帰国後に書いて、順次アップしているものです。

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きのう(3日)は長い一日だった。

朝、一睡もしない状態でタクシーを呼んで、出発。いつものJRではなく、京成線の駅から行こうとしたところが、意外に道が混んでいてお目当ての電車に間に合わず。しかも跨線橋の階段をデカいスーツケースを携えて上り下りしたため、不眠でフラフラの全身に大汗をかき、手のひらにマメを作った。

さらに。乗り込んだ飛行機(ブリティッシュエア)の座席は三人掛けの真ん中の席で、しかも両隣は、大柄なイギリス人と思しき男性であった。これ以上悪くなりようのない条件の座席に深々と身を沈め、機内食もとらずにブランケットをひっかぶってとにかく眠る。

おかげで目覚めてから、空腹感に苛まれることになった。ヒースローに着く少し前にやっと出た二度目の機内食をガツガツと平らげる。飢餓状態であったことを差し引いても、なかなか美味しいサンドイッチとマフィンとフレッシュフルーツであった。

ヒースロー空港上空で強風のために飛行機が揺れた。離着陸の間隔をあけないと危険であるため、このまましばらく旋回するという。出発前、「帰りの飛行機が墜ちることになっている」とくだらない冗談を言ったところが、立て続けに三人のひとから「確率的には低いよね」、「俺も飛行機は乗り倒すくらい乗ったけれど、いやぁ墜ちないよぉ」、「まず、大丈夫でしょう」と真面目に切り返されて困ってしまった。こんな不謹慎なスレスレジョーク、軽くつっこんでくれればいいのに、みなさん確率まで持ち出して「墜ちないよ」と真顔で言うのだ。

なのに、なんだよ。往きでこんなに揺れて、しかも着陸できないなんてさ。まさか墜ちるとは思わなかったけれど、あまり良い気分のするものではない。以前ジャーナルには“友人に本を届けてから”なんて格好付けて書いたけれど、実際は本のほかにも、味噌に佃煮、生ワカメ、ホカロンと、いろんなものを詰めてきているのだ。ヴェニスも見ずして生ワカメとともに、って…、冗談じゃあないわよ、ここでおっこちてなるものか!。恐怖心のためか、やや興奮(笑)。

結局、機体を空港ビルに横付けする事が出来ず、タラップを下りたところで待っていたバスに乗って、ビル内へ。離着陸が遅れているということは、ミュンヘン行きの便も遅れて発つということで、すると外貨をまったく持っていない私は、この中途半端な待ち時間にコーヒー一杯飲む事も出来ないということになる。旅慣れた感じの日本の人をみつけて、少しポンドと替えてもらおうかと思っていたところ、ブリティッシュエアから5ポンドのバウチャーをもらうことが出来た。おぉー、サンキューBA!

この5ポンドで、カフェへ行ってポットティーとアイスクリームの盛り合わせを注文し、煙草を一服。ここいらあたりから、やっと旅モードに入ってきた感あり。疲れと、とにかくイギリスまでは来たという安堵と、初めての場所に一人でいるという少しの緊張感、そしてそれを上回る幸福感。
 
 
ミュンヘンの空港へは、友人のK嬢とT氏が迎えに来てくれていた。霧の中をT氏運転のクルマでアパートへ向かう。夜目にも美しいメルヘンの都ミュンヘン、そのど真ん中にあるアパートへ到着。ドアを開けると、写真でしか会った事のなかった愛猫くん(ラージサイズ)が出迎えてくれた。

T氏(料理上手)の作ったスペイン風オムレツを頂きながら、ドイツ入国時に係官が私のパスポートを虫眼鏡で検分しながら、「どこに泊まるんだ、ホテルバウチャーをみせろ」と言った、バウチャーなんかないから手帳を開いてココの住所を示して解放してもらったと話したところ、工作員と間違われたんだよ!と散々笑われる。憮然。

とはいえ気分は、イヤ〜ン、本当に来ちゃった〜!(しゃーわせー)なのである。長い長い一日を終えて、就寝。
 

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日付変わって、ここから(やっと)4日。

アパートの真後ろにそびえる教会の心地よい鐘の音に、欧州に来た事を実感しながら起床。ミュンヘン初日はこの鐘の音と、手回しのミルで挽いたコーヒー豆の香りから始まった。“忙しい”“時間がない”が口癖の生活からすっと離れてみれば、豆をひく手間さえ楽しいし、やはり挽きたてのコーヒーは旨いのだ。

K嬢にミュンヘン市内を徒歩で案内してもらう。聞いていた通り、本当に何でも、歩ける距離に揃っている。マルクト(市場)、教会、デパート、美術館、ショッピングセンター。市庁舎前広場から銀行へと歩いて両替を済ませ、マルクトを軽く一周する。たくさんある店の中で、それぞれの家庭でいつも行く店が決まっていて、肉でも野菜でもそこへ行き、必要なだけ量ってもらって買っているようだ。香草と香辛料の店の前を通りかかると、ドーンと痺れるような良い香りに包まれた。


その後、ビアレストランで、ソーセージとビールの昼食。(…思えばこれが、私の欧州肉食行脚の始まりであった)

 




帰り道、K嬢はコーヒー豆を買って帰るという。日本でも有名な高級食料品店(たしかダルマイヤー、だったかな)へ行くと、歴史の匂いの染み込んだ石造りの立派な建物。そのコーヒー売り場では、量り売りの豆を、天秤ばかりで計量していた。片方のお皿に鉄のオモリをカチャリと載せる、あれである。聞けばK嬢、この店のこの秤で量るところを見たいがために、豆で買って挽いているのだという。うん、わかるわかる。私がここに住んでいたとしたら、やっぱり同じことすると思うもん。

先ほど、マルクトでハチミツ専門店を発見していた私は、どうしても欲しいものがあって、再度寄り道してもらうことにした。お目当てのブツは“生ローヤルゼリー”。扱っているかと聞いてもらったところ、サッと冷蔵庫から出してみせてくれた。実は昨年来、仕事で生ローヤルゼリーを追いかけ続けていた私(韓国への出張も、このローヤルゼリーがらみだったのである)。初めての欧州産生ローヤルゼリーとのご対面(しかも現地で)に大感激。結局、買ってしまった。125グラム入りで、25.5ユーロ(約3,500円)。良品にして、適正価格なり。大満足。




 

夜。初のドイツ、バイエルンの都はミュンヘンにてネギを刻む。この日の夕食は、なんと鴨鍋。こんなに大量の鴨肉を食したのは初めて、というくらい食べた。回りだした運命(欧州肉食行脚という名の運命)の車輪は、徐々に加速しながら進みだしていたのだった。

この日はさらに、夕食後、ジャズクラブへ出かけたのだ。怠惰な生活に狎れきっている私、朝から晩まで、一日のうちにこんなにいろんな事をするのはめずらしい。というより、初めてかもしれない。

階段を下りたあとに続く、元は戦時中の防空壕と思しきトンネルの先に、そのジャズクラブはあった。新しいピアノの弾き初めということで、ベテランのジャズピアニストが出演、その他に2名のピアニストが出演して、それぞれソロを弾いた。

ベテラン、新人、中堅の順で弾いて、三人目、トリを務めたラスタヘアの小柄な黒人ピアニストが素晴らしかった。ちょっとジョバンニ・ミラバッシを思わせる“ヨーロピアンスタイル”で、恐らくパリあたりでも弾いているのではないか、すでにある程度の評価を得ているひとなのではないかと思われた。

しかし、夕飯の鴨鍋のときからワインを飲み、夜も更けて、ジャズクラブでもワインで通し、正直フラフラだったのである。ピアノの旋律に没頭しているつもりが、つい眠り込みそうになることも。今思えばこの時、控えめながら、もうひとつの車輪も回り始めていたのだな、「肉にはワイン」という運命の車輪が…。





 
 
 
 


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