本来、そんなものはありません。 当たり前だけど。 メーター額さえ払っていただければ。 でも、おいらは、こいつだけは絶対に乗せたくない客を乗せてしまった。
お客を迎えに行く。 四十台くらいの親父と、その母親らしきおばちゃん。 乗る。 んで、病院へ。 ところが、この親父、後ろからぶつくさうるさい。 「おいおい……メーターの上がりはえーよ。」 「こんなんなら、(運転)代行に頼めばもっとやすくいけるぜ?」 「あーあ、(運転)代行に頼めばよかったよ」 「ガス馬車って、泥棒だな。まるで詐欺だよ。俺ならこんなののらねえぜ」
ぶちぶちぶちぶちっ……(−−メメメメメメ
そんなに文句いうなら、乗るな。 確かにガス馬車は高いよ? ドアツードアだからね。 しかも、事故おきたときにダイコーみたいに保険が利かないとか、保険で乗る場合に領収書が発行できないとか、そういうサービスが行き届かないことがないしね。 何より、国の公認でお客さん乗せてますから。 そういうプロが扱うガス馬車と、トーシロが操るガス馬車じゃ、違うのだよ。事故遭遇率から何から、全てな。 やすかろう、悪かろう、という言葉を知っているか? 料金が安い、その分サービスが悪い、ということだ。 料金高くてサービス悪いガス馬車もおる。 そういうのがいたら、遠慮なく文句いうがよい。 だがな、あんたみたいなおきゃくは、おきゃくじゃねー。 あんたがおいらに払っているのは、出発地から目的地までの安全に到達できる権利料だけだ。 おいらを侮蔑してよい金額は払っていないのだよ。 わかるか?
本来なら、降りて歩け、とでも言おうと思ったが、まだしばらく今のガス馬車会社にいる予定なので、黙っていた。 しかし、次、おいらが辞める直前に乗ったら、絶対に文句いったる。 覚悟しとけ!
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