日々逍遙―この1冊、この1本、この1枚―
1冊の本、絵本、1本の映画、舞台、(ワインやお酒)、1枚の絵、CD。
散歩の途中に出会ったあれこれを…。

2003年03月02日(日) ホワイト・オランダー

 母であること、母としてしてきたこと、できること、孕み産んだ子どもに寄せる思い。母であることに盲目的自己犠牲を厭わず生きるとしても、また母である特権の上に乗って自らの価値観を押し付けることに何の痛痒も感じていないにしても、子はその母から、母が母としてどう生きてきたかという事実からは逃れられない。
映画「ホワイト・オランダー」は父を知らず、フラワー・チルドレンの世代の残滓をひきずっているような芸術家の母に育てられ、母を崇拝し続けてきた15歳の少女の物語。
 母が恋人を殺し、天涯孤独となった少女は、それぞれに問題をかかえた3人の里親のもとと、施設で3年を過ごす。この経験で母を相対化し、母と対峙して、母の言いなりだった自分を見つめ直すのだ。
 ホワイト・オランダーとは白い夾竹桃のこと。清楚な花は強靱な生命力を持つ花でもあるという。そう言えば排気ガスに強いから高速道路でよく見かける。そして
その茎や葉には強い毒性があるという。
ここでの母は毒を含んで尚、魅力的であるのか、毒を身内にかかえこむ生き方が恋人とも娘とも真正面から向き合うことなくその美しさと芸術家としての周囲の目に助けられて独善的な自己正当化していたにすぎないのか。結末、娘が「母からやっと解放された」と述懐する部分があるのだが、と言いつつ「母を愛している」と言わしめるのはこの母のどの部分だったのだろうか。


 ←過去  INDEX  →未来


みねこ

My追加