えすぱっ子
清水エスパルスユース紹介サイト

2004年02月02日(月) 旧正月企画 「マルチロールを考える」

 〜 時代の流れが“分業化”へと進んでいることは間違いない。だがその一方で、選手個々に求められる戦術的役割は実に多様化している。だからこそ、マルチロール、つまり複数のポジションをこなす柔軟性があるか否かで、選手の活躍の場は大きく変化するのだ。〜(ワーツドサッカーダイジェスト159号より)

 そんなパクリ企画(笑)。最近、少しずつ変わりつつあるとはいえ、伝統的に少数主義を採るエスパルスユースでは、下級生で才能のある選手を、本来のポジションとは違う位置で起用することが多かった。また、試合中に戦術を変化させたいときにも、駒が少ないため、選手交代ではなく、ポジションチェンジで対応せざるを得ない。そのため、他のクラブや高校に比べ、数多くのマルチロールな選手を生み出してきた。市原ユースには負けるけど。
 一方、本当に資質の高い選手は、1年生の内から、競争もなく簡単に定位置を奪ってしまい、3年間(6年間)同じポジションで終わることもある。その傾向は、先輩の層の薄かった、初期の選手に多い。

 何はともあれ、以下から実際に、選手を個別に見て行こう。スペシャリストからユーティチティーまで、ズラリと揃っている。ポジション適性は、ユースで標準的に採用されている中盤フラットの4−4−2と、トップで長く使われてきた3−4−1−2の2つのシステムで考えてみたい。記号の意味は、◎=本来の能力を発揮できる、○=十分の適性あり、△=まずまずの適性あり、×=プレー経験あり。言うまでもないことだが、所詮は筆者の自己満足な主観評価なので、あまり信頼しすぎないように。



【 スペシャリスト 】
MR指数14 池田昇平 (2期:22歳) CB
 筆者の数字では、最低となったのが、池田昇平。最低の数字、とは即ち、スペシャリストということでもある。池田の何がスペシャルかと問われれば、何と言っても相手FWを封じることだろう。助走なしでの空中戦(ノーステップジャンプ)の強さを称されるように、抜群の運動能力を誇る。他の役割、展開力とかカバーリングとかは、ユースの時には谷川・佐野裕、トップでは森岡、世代別代表は羽田や阿部に任せれば良い。と言いつつ、密かにボランチや右SBの経験もあったりする。

MR指数14 阿部文一朗 (6期:18歳) FW
 池田と並んで最低の数字となったのが、今年昇格する阿部。トップに呼ばれた際、何度か右ウィング的なポジションで使われた程度で、一貫してFWとして使われてきた。昨年の春先に、ポストで周囲を使うプレーを多用すると、「自分で得点できるのに、わざわざゴールに背を向ける必要はない」と修正されるなど、それは徹底されている。ユースヤクザの中では、突破力を生かしてサイドプレーヤーの適性も試すべき、との声もあったが、果たして今後、どうなることか。

MR指数17 杉山浩太 (5期:19歳) ボランチ・トップ下
 Jrユース時代は、到底考えられなかったボランチというポジションが、いつの間にか、生まれついてのポジションのようにハマっている浩太。その頃は、FWの方が、余程可能性があると思われていたものだ。パスの出し手としては、傑出したセンスと独特のリズムを持つ一方で、受け手としては、逆にそれが邪魔して周囲と噛み合わないことが多い。その天才を愛でる指導者は多いものの、起用法に悩まされる選手である。

MR指数17 篠田悠輔 (8期:16歳) FW
 予め断っておくが、悠輔の場合はエスパニョールでの2年半を知らないので、その間にFW以外のポジションも試されているのかもしれない。清水ユースでは、FWと右MFでのプレーを見たことがあるが、そのスタイルはFW以外の何物でもなかった。とにかく、ゴールを決めることに特化されており(基礎技術はしっかりしてるけど)、そのための騙し合いや緩急の付け方は、お手の物。逆に、一瞬の油断で試合を決めてしまう後ろのポジションでは、絶対に認められないプレーだろう。

【 スペシャリスト±α 】
MR指数18 日高琢磨 (4期:20歳) 右MF・右WB
 外部参入組の日高は、自ら最大の長所である突破力を、ひたすら前面に押し出すことで、ポジションを確保していった経緯がある。そのため、多くのポジションで試される機会がなく、プレー自体も、汎用性の高いものとは言えなかった。だが、同じような経緯を辿った太田に比べ、昇格を逃したの理由は、むしろスペシャルな部分…突破力で後れを取ったからである。サイズのある日高の方が、むしろ潜在的なマルチロール性は高かったろう。

MR指数19 高山純一 (5期:19歳) CB・リベロ
 高山も今ひとつ、中途半端な印象のある選手で、ストッパーとしてはサイズの不足から空中戦に脆さを見せ、リベロとしては、周囲を動かすコーチングが足りない。大学1年にして、筑波のインカレ優勝に貢献した通り、地上戦の機動力と1対1には、ズバ抜けたものがあるのだが。実際、所属チームでは終始守備の要を担ってきたが、選抜チームの監督には起用方の難しい選手だったようで、U-17代表や国体静岡選抜に選出されながら、出場機会を与えられなかった。

MR指数20 市川大祐 (1期:23歳) 右SB
 少年団時代はFWも務めた市川だが、清水入りしてからは常に、右SBを務めてきた。しかし、大柄ながら機動力に富む選手というのは、ポジションチェンジの誘惑に駆られるらしい。アルディレスが左SBに起用したのは、右に安藤がいたからだろうが、選抜チームではCBやボランチなど、およそ適性があるとは思えないポジションでも、試されている。そのためMR指数が幾分、大きくなったが、基本的にスペシャリストの選手と考えてるべきだろう。

MR指数20 村越大三 (7期:17歳) CB・右SB
 昨年のユースの成長株、村越。春先は右SBやボランチなども試されたが、6月以上はCBの定位置を確保した。池田と同様に運動能力が高く、1対1で相手を封じる点で、国見戦などで大きな成果を残した。ただ、池田ほどのサイズがないため、スペシャリティに劣る。一方で、高精度フィードという池田にない武器を有しており、昇格を睨んで今一度、右SBなどの新たな可能性にも、挑戦していきたいところ。

【 中間的選手、またはユーティリティー候補生 】
MR指数21 太田圭輔 (2期:22歳) 右MF・右WB・FW
 日高の項でも書いたが、太田も外部参入組というビハインドがある分、最大の武器である突破力を、ひたすら高めることで、昇格に辿り着いた。マルチロールに目覚めたのは昇格後のことで、甲府にレンタル移籍した際、ワントップとしてチーム得点王の活躍を示し、昨年は左WBなどでも試されている。クロスに加え、強烈なミドルがある点と、ボールを止める基本技術が確立している点が、プレー幅を広げている。

MR指数21 深澤良輔 (4期:20歳) ボランチ・トップ下・左MF
 帯に短し、たすきに長し。優雅な対角線フィードを武器にボランチに置けば、守備力が不足し、創造性溢れるセンスに期待してトップ下に据えれば、判断の速さに課題を残し、スペースを与えて足技を披瀝すべくサイドに置けば、突破力が足りずに起点となりきれない。あと一皮剥ければ、正にマルチロールの申し子になりうる素材だったのだが。

MR指数22 鈴木隼人 (3期:21歳) CB・左SB
 Jrユース時代には、キレ味鋭いドリブラーとして鳴らしていた隼人だが、ユース以降は、すっかり大きな展開に長けたボランチとして定着した。国体でトップ下を務めたり、昨年のトップやサテライトで左WBや左MFで使われたりもしていたが、ドリブルとミドル砲がより活きる一方で、走力がある方ではないので、ボランチのパフォーマンスからは落ちる。密かにユース時代のアルゼンチン遠征で、長沼と組んでCBでプレーした経験もあったりする。

MR指数22 佐野克彦 (9期:15歳) CB・左SB
 佐野は、中2では左SB、中3ではCBと、2つのポジションで遜色ないパフォーマンスを見せた。3種年代では、サイズと運動能力の両面で圧倒的で、おまけに細かいタッチのドリブル(フェイント)まであるため、攻守の両面で1対1が非常に強力である。サイズと運動能力だけで何とかなってしまう分、ややボール扱いと読みに雑な部分を残す点をユースで改善し、更にマルチな才能を伸ばしていきたい。

MR指数23 鈴木真司 (7期:17歳) FW・左MF
 Jrユース時代からFWと左MFの2つのポジションで試され続けているが、本職はFWだろう。その独特のセンスで周囲を振り回してこその真司であり、周囲に合わせるプレーは(時にそれは不可欠とはいえ)真司らしくない。ただ、実はサボることなく精力的に動き回れるだけの、心身の充実があるため、受け身のポジションでも、それなりのパフォーマンスを見せてくれる。実際に昨年、右MFにボランチ、左SBといった起用も見られたが、最低限の役割は果たしていた。

MR指数24 大瀧義史 (6期:18歳) トップ下・左MF・ボランチ
 クリエイティブなセンスと卓越した左足のテクニックを持つ大瀧は、試合を創るポジションに最適。だが、常に165cmという体格の不足が付いて回り、ユースでは比較的スペースのあるサイドから、高精度クロスマシーンとして活躍することが多かった。流れの中で意図的にトップ下のポジションに動いてきた際には、そのセンスを窺い知ることができるのだが。ユース最後の大会では、右MFを務めたが、右足ダイレクトタッチの精度に苦労したものの、役割自体は変わらなかった。

MR指数24 岩本大 (9期:15歳) CB・リベロ
 佐野がサイズと身体能力なら、岩本はサイズと読み。3種年代でここまで大きくて、かつ機動力に富む選手は貴重であり、2つの全国大会共に大会最小失点チームに輝くなど、確かな実績を残した。さらに判断速度と視野にも優れ、殆どのボールをダイレクトで処理することで、一瞬でのターンオーバーを導く。ボールを処理する時間がとにかく早いので、注意して見ていないと、気づかないが。高円宮で注目を一身に集めた森本を抑え込むなど、1対1にも普通に強い。

MR指数26 村松潤 (3期:21歳) 左SB・ボランチ
 ポジショニングに秀でた村松は、高3の際には左SB・CB・ボランチの3つのポジションを、高いレベルで役割を全うし、正にマルチロールの象徴的存在だったのだが、昨年のトップでは、本職のはずの左SBで課題を露呈してしまった。元来、相手と1対1で対峙しないようなポジショニングが持ち味の選手なので、同情の余地はあるのだが…。SBより1列前の適性を問う声もあるが、単独突破を得意としない村松には、厳しいかと思う。ユース時代にも、左MFの実績は殆どない(左SB村松の前は、和田・純平・深沢・森山・仁科と、人材豊富であった)。

MR指数30 長沢駿 (9期:15歳) FW・ボランチ
 昨年のJrユースは、各ポジションに穴のない人材を揃えながら、2つ以上のポジションを務められる選手が多かったが、長沢はそれを代表する選手。長身なのに、それをあまり活かさず、視野の広い展開を持ち味としており、故に汎用性が大きかった。クライフェルトのような変なFW(誉め言葉)に近づきつつある。とはいえ、3種年代で185cmの身長があれば、どこに置いても、ある程度機能するのも事実であり、県選抜ではCBまで務めている。

【 ユーティリティー 】
MR指数33 平松康平 (1期:23歳) トップ下・FW・右MF・右WB・左MF・FW
 ここからは、正にマルチロールと言える選手が続く。平松は、下部組織でもFWと攻撃的MFを担当していたが、それほど汎用性の高い印象はなかった。マルチロールとして見出されていくのは、トップでFWや右WBとして起用されるようになってから。新たなポジションを試されたのは、トップ下としては持ち過ぎの傾向が強く、FWとしては競り合いに脆いなど、得意としていたポジションで、課題が多かったためでもあった。機関誌のインタビューでは、本人もベストポジションを右MFとして考え始めたようであるが、果たしてどうなることか。

MR指数34 仁科克英 (5期:19歳) FW・トップ下・左右MF・左WB
 攻撃的ポジションのユーティリティー。事実、高2の際には、上に列挙したポジションに加え、ボランチまでを歴任している。パス出しと動き出しの両方で判断が早く、また動き自体の量も標準以上だったことが、豊富なポジション適性を可能にした要因か。基礎技術の高さと、時に泥臭くも見える粘る強さも、欠かせない特長で、ゴール前で仕掛けられる能力がある。そのため、最終学年では専らFWを務めることになった。

MR指数37 高木純平 (3期:21歳) 左右MF・左右WB・左右SB
 サイドポジションのユーティリティー。噂される通り、今年のトップが4−4−2を採用するのであれば、4つのサイドポジションで貢献できる純平は、ベンチ枠が5しかないJリーグでは、かなり便利な存在になるだろう。裏のスペースに抜けてダイレクトでクロスを合わせる走力と、足下で受けて中に切れ込みながらシュートやラストパスを狙う技術とを併せ持ち、また左右両足共に遜色ない。高1まではFWを務めてきた経験もあり、一定以上の得点力も有している。

MR指数37 森安洋文 (6期:18歳) 左右SB・ボランチ・CB・リベロ
 守備的ポジションのユーティリティー。最終ラインの全てのポジションに加え、ボランチまでをこなす。身体能力が高く、競り合いに臆さぬ泥臭さがあるため、守備の選手に絶対不可欠の1対1に強い点が、最大のポイント。加えて両足の精度、特に良質のロングキックを蹴られるため、低い位置からでもロングフィードやアーリークロスで攻撃参加できる点が、専守防衛で終わらない、プラスαの魅力になっている。外部参入組で、特定ポジションへの拘りが少なかったのが、プレー幅を広げた好例と言えよう。

MR指数37 枝村匠馬 (7期:17歳) ボランチ・トップ下
 ほぼ全てのポジションの経験がありながら、枝村のベストポジションはボランチで決まっている。実際、所属チームでの起用は専らボランチで、上のカテゴリに抜擢された際や、怪我人治療などの一時的な対応として、他のポジションでの起用を積んできた。別ポジションでの経験は、ボランチでのプレースタイルへ吸収されており、FWのゴール前の決定力、アウトサイドとして突破力、DFのカバーリングと空中戦を、それぞれ身につけてきた。にも関わらず、他のポジションでの起用が物足りなく感じるのは、あくまで枝村の良さは、ボランチとしての展開力が、基本にあるからだろう。

MR指数48 山本真希 (8期:16歳) ボランチ・右MF・FW・トップ下・リベロ
 ほぼ全てのポジションの経験がありながら、真希のベストポジションは未だ定まらない。少年団ではFW、中1ではボランチ、中2でCB、中3でJrユースでFW+ユースにも合流して右MF、高1では再びボランチ。昨年、高く評価された枝村との下級生ドイスボランチの印象が強かろうが、それも可能性の一端に過ぎない。その特長は、地味だが、運動量に尽きる。常にサボらず、球際で激しく、攻守が切り替わればすぐに動き直す。一方、迫力あるドリブルに強烈なミドル砲と攻撃面にも持ち味があり、起用法を悩ませる。筆者の予想する最終到達ポジションは右SBだが、あらゆる可能性を持った「素材」と言えよう。


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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