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2003年11月30日(日) 行徳浩二氏トップ監督就任企画 行徳エスパルスマニアックス

 清水エスパルスの大木武監督が2ndステージ最終戦をもって退任することとなりましたのでお知らせいたします。なお、天皇杯をはじめとする今季の試合につきましては、行徳浩二コーチが監督となって指揮を執ることとなります。また、来季以降の体制につきましては未定です。

行徳浩二(ぎょうとく こうじ)
●出身地  :静岡県
●生年月日 :1965年1月28日
●サッカー歴:清水第五中→東海大一高校→東海大学→ヴェルダーブレーメ(ブンデスリーガ)→トヨタ自動車
       (1992年6月 現役引退)
●代表歴:  日本ユース代表、日本学生選抜、 日本代表
●指導歴:  1994年2月〜清水エスパルス ユースコーチ
       1997年2月〜清水エスパルス ジュニアユース監督
       1998年2月〜清水エスパルス ユース監督
       2000年2月〜清水エスパルス ジュニアユース(U-15) 監督
       2001年2月〜清水エスパルス ユース監督
●資格:   日本協会公認 C級コーチライセンス(1996年10月取得)
       日本協会公認 B級コーチライセンス(1997年10月取得)
       日本協会公認 S級コーチライセンス(2002年3月取得)

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 以上、公式HPより。密かに指導歴が一部、間違えています(01年はユース監督)。まあ、それはともかく、天皇杯を指揮する行徳監督を徹底解剖!

■指導歴代布陣
97年Jrユース:          98年ユース:           99年ユース:
−−−− 高木純 −山口−−−−− −−−− 高木純 −馬場−−−−− −−−−−塩澤− 鈴木浩 −−−−
−−−桜田−−−−−−大内−−− −−−平松−−−−−−太田−−− −深澤−−−−−−−−−−太田−
−−−− 鈴木隼 −塩澤−−−−− −−−− 佐野真 −吉崎−−−−− −−−− 鈴木隼 −吉崎−−−−−
−村松−−藤田− 佐野裕−渡辺哲  −和田−−池田−−谷川−−白石− −村松− 佐野裕 −池田−−高木−
−−−−−−−神戸−−−−−−− −−−−−−−鶴田−−−−−−− −−−−−−−梅村−−−−−−−

00年Jrユース:          01年ユース:           02年ユース:
−−−−−阿部−−荒田−−−−− −−−−−仁科−−長沼−−−−− −−−−−仁科−−阿部−−−−−
−−−−−−−大瀧−−−−−−− −−−− 杉山浩 −深澤−−−−− −大瀧−−−−−−−−−杉山拓−
−鈴木真−枝村−−赤星−−滝田− −杉山拓−− 渡邊優 −−−日高− −−−−−枝村− 杉山浩 −−−−
−−−篠田−−高柳−−小林−−− −−−森山−−高山−−天野−−− −森安−−高山− 渡邊優 −天野−
−−−−−− 山本海 −−−−−− −−−−−−−浅山−−−−−−− −−−−−− 山本海 −−−−−−

02年サテライト:
−−−−−塩澤−−澤登−−−−−
−平松−−−−−−−−−−太田−
−−−− 鈴木隼−杉山浩 −−−−
−津田−−斉藤−−高林− 高木純
−−−−−−−真田−−−−−−−

 以上、行徳氏が監督として率いた、7チームを並べてみた。私が検索できた公式戦のデータを集計し、出場時間の11傑を並べたものである。ちなみに今年のサテでの出場時間は、太田(1059)、高木純(952)、真田(945)、鈴木隼(914)、杉山浩(890)、津田(837)、平松(779)、塩澤(677)、高林(666)、澤登(657)、斉藤(630)。以下、田中・北嶋・村松と続く。勿論、サテは出場時間が長ければ良いってものじゃないが。


■指導世代
  第1期(市川・平松ら) 1年(ユース1年)
  第2期(池田・太田ら) 2年(ユース2年)
  第3期(高木・村松ら) 3年(ユース2年、Jrユース(中3)1年)
  第4期(深澤・浅山ら) 2年(ユース2年)
  第5期(杉山・高山ら) 2年(ユース2年)
  第6期(阿部・山本ら) 3年(ユース2年、Jrユース(中3)1年)
  第7期(枝村・鈴木ら) 1年(ユース1年)

 もう少し偏りがあるかと思ったが、意外に平均的であった。Jrユースで指導をした第3期と第6期が、よく見てきた学年と言えるだろうか。


■起用選手
  4年:高木純平
  3年:太田圭輔、鈴木隼人、塩澤達也、杉山浩太
  2年:平松康平、池田昇平、吉崎雄亮、村松潤、佐野裕也、深澤良輔、天野数士、渡邊優希、高山純一、
     杉山拓也、仁科克英、阿部文一朗、大瀧義史、山本海人、枝村匠馬

 端的に言えば、上記の布陣で名前が載っている回数のこと。
 純平がトップ。彼が2年生の時、本格的にサイドプレーヤーにコンバートしたのが、行徳氏である。氏は他のU-16日本代表以上に、ユーティリティー性の高い彼を重用した。3年間以上起用されている上位5名は、今年のサテの出場時間でも、上位に食い込む。Jrユース時代は5人共ドリブラーとして鳴らすなど、ボール扱いに長けている点が共通点だろうか。展開力の高い鈴木隼・杉山浩を扇の要として、走力のある高木純・太田・塩澤らを走らせる展開を好む、と言えるかもしれない。
 他では枝村匠馬に注目。行徳氏に起用されたとき、彼はJrユース(00年)で中学2年生、ユース(02年)では高校1年生だったが、関係なく不動のレギュラーとなった。11傑にこそ入らなかったが、01年のユースでも13番目の出場時間、今年のサテライトですら20番目の記録(273分)を残している。なお、下のカテゴリから抜擢された時は、サイドで使われることが多い。


■主な成績
  97年(ユース)  クラブ選手権:予選敗退、高円宮杯:不出場、 Jユース杯:ベスト4
  98年(Jrユース) クラブ選手権:優勝、  高円宮杯:ベスト8
  99年(ユース)  クラブ選手権:ベスト4、高円宮杯:ベスト4、Jユース杯:ベスト8
  00年(Jrユース) クラブ選手権:ベスト16、高円宮杯:優勝
  01年(ユース)  クラブ選手権:5位、  高円宮杯:ベスト8、Jユース杯:ベスト16
  02年(ユース)  クラブ選手権:優勝、  高円宮杯:初戦敗退
  03年(サテ)   Bグループ: 優勝

 行徳氏の特徴を強く物語るのが、この成績。正直言って、充実した戦力を与えたれたのは、98年のJrユース、02年のユースと、トップが混乱してサテとの境界線が無くなってしまった今年のサテライトぐらい。にも関わらず、安定した成績を収めているのは、賞賛に値する。ユースに初めて高円宮杯出場権を掴ませたのも、クラブ選手権初優勝も氏の実績である。一方、00年のJrユースで古典的なスイーパーシステムを採用するなど、リスクを冒さない試合内容は、批判の対象となることもある。


■システム
[布陣]
 基本的には4バックを好むが、それに拘らない柔軟性も持っている。行徳氏は、常に「守備が不安」とこぼすぐらい、まず守備から組織を作っていく監督で、全国で2度の無失点優勝を成し遂げてるという事実が、それを雄弁に物語る。トップの方針に従った今年のサテライトのような例もあるが、基本的には守備の不安を拭いきれない時に、好んで3バックを用いる。3バックを決断した00年のJrユースと01年のユースでは、CB不足の上に中盤がいずれも攻撃に長じた選手であった。

[守備]
 4バック+2枚ボランチで、バイタルエリアをソリッドに固めて、起点を作らせないのが、守備の基本。清水の下部組織は、伝統的に最終ラインまでも攻め上がる波状攻撃の評価が高く、それ故にあっさりとカウンターで沈む、「滅びの美学」にも通ずる華麗さが、見るものを楽しませた。しかし、行徳氏は、この6枚の組織が乱れるのを好まない。SBやボランチが片方ずつ攻め上がるのがせいぜいで、深い位置から質の高いフィードで組み立てられる選手が好まれる。

[攻撃]
 攻撃もノーリスクで多くの人間を割かず、前線だけが素早くフィニッシュまで行くことを心掛ける。中盤で横パスを奪われてターンオーバーされるような、危険を冒さない。奥行きのある攻撃が特色で、ボランチを起点に執拗にサイドに散らしてMFを走らせるか、或いは直接縦に、2トップをゴール前へと走らせる。02年ユースで杉山浩が見せたスルーパスは、質・量共に圧巻であった。そのため、前方では軽量級の選手を厭わず、鈴木浩・長沼・阿部ら長身選手を置く例もあるが、高さを活かして競り勝つというより、相手の最終ラインが揃う前に素早くクロスを入れてくる。そのため、長身選手にも裏に抜ける動きを要求し、実際、それを得意としないポストプレイヤータイプの長沼は、今ひとつ機能しなかった。
 一方で、サイドMFの片方に、縦への突破よりも足下の技術に秀でたタイプを置いて、溜めを作らせることも多い。99年ユースでは左に深澤、01年ユースでは左に枝村の起用例があり、02年は左に大瀧を置いた。今年のサテライトでも、鈴木隼や田中、枝村などがそこで使われている。一方のサイドで試合を創り、片方のサイドのスペースに走力に秀でた選手を飛び込ませたり、ボランチの攻撃参加を導いたりする。また、セカンドトップかトップ下が精力的に動き回ることで、全体の展開にダイナミズムをもたらすが、組織的で思い切ったポジションチェンジは少ない。


■予想布陣
3バック・タイプA:       3バック・タイプB:       4バック:
−−−−−アン−トゥット−−−− −−−−−アン−トゥット−−−− −−−−−アン−トゥット−−−−
−−−− 鈴木隼−杉山浩 −−−− −−−−−− 杉山浩 −−−−−− −アレ−−−−−−−−−−伊東−
−アレ−−−−伊東−−−−市川− −アレ− 鈴木隼 −鶴見−−伊東− −−−− 鈴木隼−杉山浩−−−−−
−− 高木和 −森岡−−池田−−− −−−池田−−森岡−−市川−−− −村松−−森岡−−池田−−市川−
−−−−−−−黒河−−−−−−− −−−−−−−黒河−−−−−−− −−−−−−−黒河−−−−−−−

 左から右につれて、行徳氏がより独自色を出した場合を想定している。

 3バック・タイプAは、01年ユースがモデル。左右WBを共に突破力に長けた選手を置いた場合、中盤中央は展開力のある選手を選択し、サイドが高めになる分、3ボランチに近い形で後方から試合を創ることになる。その分、犠牲になる守備力は、アンカー役(01年ユースなら渡邊)の運動量で償う。市川・伊東・アレックスといった選手の特長と、暫定政権であることを考えれば、これに近い形になるのではないか。
 タイプBのモデルは、01年ユースの末期型。天野の怪我と杉山浩の成長で若干アレンジ、トップ下に杉山浩を入れて中央の攻撃力を向上させる一方、左WBに枝村を入れて、ここで溜めを作ろうとした。左CBが本来SBの森山のため、枝村を追い越して攻撃参加する場面が多く見られた。なお、行徳監督は左右CBに、SBに近い攻撃型の選手を置くことを、あまり躊躇しない(それが有効だったかは、別にして)。今年のサテライトでも、平岡や津田が使われている。左WBに鈴木隼を置いて、左CBにアレックスや津田を置くパターンも考えられるか。トップ下はやはり、展開力重視。
 4バックの場合、行徳氏は、左右の両方に突破型の選手を選ぶのを嫌い、片側は後方からフィードで試合を創れるタイプを起きたがる。そうなると、突破型は市川・アレックスが第一順位だろうから、氏から高く評価される太田・高木純・津田、或いは平岡なども、あまり出場機会を得ないのではないだろうか。また、SBには機動力があり、動きながら守備ができる点を前提にしており、CBをサイドに回すことはなさそう。鶴見や鈴木隼なども、やはり機動力の点で疑問が残る。そうなると左SBは村松が有力になるが…。村松のコンディションを考えると、4バックの線は薄いか。

 なお、氏はFWの空中戦をあまり重視しない。00年などは、前線に長沼と阿部がいながら、クロスに対して、逆サイドの日高がフリーでファーで飛び込むパターンが多かった。従って、サポーターの人気の高い北嶋よりも、アンとトゥットの2トップの可能性が高いだろう(でも、トゥット戦力外になっちゃったからなあ…、北嶋も飛び出し自体は悪くないし、使ってくるかも)。中盤中央からのスルーパスを引き出す動き出しと、それを決める技術が、重要なポイントとなる。
 一方で、兎角、リスクレスの氏が、独自色を極力消して、大木エスパルスを殆ど踏襲する可能性も、否定できない。というか、それが一番可能性が高いかも…。そしたら、個人的には面白くないなあ。


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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