えすぱっ子
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2002年08月04日(日) クラブ選手権 全国大会 浦和レッドダイヤモンズ戦

02年08月04日14:01開始 
 第26回日本クラブユース選手権(U-18)大会 全国大会 決勝
 対 浦和レッドダイヤモンズユース ※40分ハーフ

布陣
−−−−−仁科−−阿部−−−−−

−大瀧−−枝村−−浩太−−拓也−

−森安−−高山−−渡邊−−天野−

−−−−−−−海人−−−−−−−

控え:風間、高柳、小林、篠田、真希、岡村、真司
交代:前半23分:拓也→真希(そのまま右MFへ)
   後半24分:大瀧→真司(そのまま左MFへ)

浦和レッドダイヤモンズユース:

−−−−−新井−−鈴木−−−−−

−田辺−−− 中村也 −−小助川−

−−−−−−−峯岸−−−−−−−

−高沢−−中川−−大場−−稲垣−

−−−−−−−加藤−−−−−−−

交代:後半17分:中村祐→沢口、後半26分:田辺→橋本


試合展開

 雷鳴が響き、霧も出るような不安定な天候の中、キックオフ。それと同時に、大会名物の轟音を響かせる花火。迷惑(笑)。
 ここまでヴェルディに2点を奪われた以外は、無失点で切り抜けている浦和。GKの加藤は、清水エスパルスジュニアユース出身で、さなるカップ優勝の際、ジュビロとのPK戦を制したGK。確か、中1の時に、引っ越して退団したはず。エスパルスはこの年、ナイキ杯を優勝してますが、彼がいなければ県敗退もありえたわけで。
 一方の清水は無失点だが、圧倒的な中盤ポゼッションに助けられ、守備は未だ試されていない。いずれにせよ、先制点が大きな意味合いを持つことは、間違いない。

[前半]
 試合は、1分、浦和・新井が挨拶代わりのミドルを放つも、決勝らしい慎重な展開。ダイレクト中心に素早くボールを回し続ける清水に対し、浦和も高い集中力を保ち、決定的なゾーンには、フリーで運ばせない。しかし、徐々に清水のリズムに乱され、実力以上にテンポを上げてしまい、慌てて簡単なミスを犯してしまうという、清水の対戦する相手の誰もが陥る罠にはまっていく。
 12分、浩太が奪うと足首フェイクで華麗にマークを外し、阿部にクサビ。これを阿部は反転して右外に展開、初めて浦和を崩し、拓也のセンタリングはGKがパンチング。16分、海人のキックを阿部が競り勝ち、仁科が受けて戻すと、ブン得意のゴリブル開始(ゴリブル:パワーとスピードで相手を蹴散らすゴリゴリドリブルで、ブンの必殺技)。仁科に戻したのを狙ってDFが潰すが、阿部が拾ってダイレクトシュートも枠上。17分、拓也が奪い浩太へ。浩太の縦フィードに仁科がポストに入る、と思わせてスルー。阿部が受けると素早く持ち直してシュートに行くが、当たり損ないGK。
 対する浦和は21分、ハーフライン付近のFK(高沢)を、直接PA内に蹴り込む。これが流れて新井が詰めるが高山がしっかりカバーに入り、スクリーニング、そのまま外に出す。だが、この距離からのセットプレーでピンチを招くとは…、清水の弱点であるセットプレーの守備が致命傷にならないかと、内心焦燥する。

 しかし、その直後の22分、拓也が奪ったボールを右足アウトで流し、浩太が再び右足アウトでダイレクトで前へ。阿部がクサビとなって拓也の右突破を引き出すが、SBが外に逃げる。悪い流れの後に、すぐに良い攻撃を見せて調子を取り戻すのが、このチームの良いところ。次のプレーで右CKを奪うと、大瀧のキックをニアの仁科がカカトで中央に流し、混戦。最後は浩太がスライディングシュートに行くが、右へ外れる。
 だが、行徳監督には拓也の動きに不満だったのが、短兵急に真希にスイッチ。決して悪い動きではなく、この交代が吉と出るか凶と出るか、微妙なところ。暫くは清水優勢で進み杞憂に終わるかと思われたが34分、中盤底から浦和・中村が縦パス、渡邊のライン統率が曖昧となり、オフサイド崩れで混乱、清水左サイドに流れたボールを新井が抑えて後ろに戻すと、小助川が食いついた高山を越すアーリークロスを狙う。体に当たって空いた中央にこぼれたボールに峯岸が走り込むが、渡邊と交錯し海人が飛び出て抑えた。

 再度浦和へ傾きかけた流れを、自力で取り戻す清水ユース。35分、枝村が大瀧に当てながら左外を回ってリターンを受ける。逆に大瀧は入れ替わって中央に入り、開いた枝村から再び戻されたボールを簡単に中へ流すと、そこに仁科。走り込んでシュートするが、GK好セーブ。
 そして37分、自陣中盤の底で浩太が奪うと、引いてポストに入った仁科が左足アウトのトリックでダイレクトパス、右外に開いた真希が弾丸のような縦パスを送り込むと、阿部が弾丸となって浦和DFの間を横紙破り、抜け出てくる。PA内で囲むDFの中で粘ると、追いついた仁科に戻す。仁科が簡単に左へ流すと、そこに大瀧。角度のないシュートを力強く制御し、ネットに突き刺す。1−0。待望の先制点を奪い、欣喜雀躍たる清水イレブン。
 ロスタイムには、森安の長いFKから真希のシュートをGKセーブ。そのまま前半を終了する。

[後半]
 後半に入ると、浦和は戦術を徹底。長いボールをサイドの裏に入れて、そこで粘りながらSBの攻め上がりを引き出そうとする。清水は浩太が流れを変えようとミドルを狙うなどするが、10分、再三崩されていた左サイドの展開をついに高山がクリアしきれず、こぼれたボールをフリーで新井がPA内でシュート。これを海人が横っ飛び超反応で弾き、天野が素早くカバーして、難を逃れる。
 清水も17分、天野のスルーパスに仁科が突破、溜めて中盤の攻撃を引き出すと、浩太に戻して素早く縦パス、阿部がPA内で前を向きシュートに行くが、GK。このあたりから、優勝の重圧と、うるさい元気な浦和レッズユース両親ズの重圧が、さらに判官贔屓の会場の雰囲気に伝染し、得も言われぬプレッシャーとなって襲いかかる。エスパルスサポの方は、今年の天皇杯決勝を想定してもらえればと。
 19分、清水右サイドから浦和のロングスロー、これをクリアできず中央まで流してしまい、小助川が拾ってシュート、当たり損なってPA内に転がるが海人が飛び出てキャッチ。そのすぐ後の20分、浩太が中盤でマークを寄せながらスペースを作り、森安の攻め上がりを導く。突破した森安が大瀧に戻し、センタリングに行くがDFカット、こぼれを森安がミドルを狙って突っ込むが、一歩遅れて逆にその裏に浦和速攻。これは渡邊がファールで潰すが、その次のプレーでも荒く競り合った渡邊には、イエローカードが示されてしまう。完全な悪循環。

 22分、またもや清水左サイドを破られ、最後、稲垣のセンタリングは、ファーに流れる。24分、清水左サイドから新井のシュートは、コースは海人が塞ぐも、ニアポスト直撃。行徳監督は真司を投入して流れを変えようとするが、27分、ハイボールを敵陣で激しく競り合いにいった真司が倒される。が、浦和ボール。暫く不利な裁定が続いており、ベンチ前での疑問の判定にいよいよキレた行徳監督。

 「何のファウルなんだよっっ!!」

 明らかに表情の変わった主審が近寄ると、行徳監督は笑いながら、マークを指さす。ほら、別に外に出たわけじゃないでしょ、と。そして、主審の告げた言葉は「退席してください」
 …あれが退席処分なら、Jリーグは毎試合、監督不在のラグビー状態になってしまいます。ですが、2年前の高円宮杯(U-15)の赤星のように不可解な退場処分は清水優勝のためには付き物、と妙な安心する筆者は、精神状態錯乱気味。

 29分、ぽっかり空いた中央にボールがこぼれ、新井がフリーで突っ込むが、ミドルは枠上。だが、このあたりから逃げ切りの意思統一が出来た清水は、落ち着いてくる。33分、森安のクリアを阿部が上手く体を入れ替え突破するが、もたついてシュート打てず。
 35分、浦和・稲垣が森安を交わして斜めに折り返し、沢口が走り込んでグラウンダーのシュートを打つが、海人が落ち着いて枠の外に見送る。海人のゴールキックは浦和DFに跳ね返されるが、高山が左サイドに流れてクリア、真司が抑えて仁科に渡すと、高山がそのまま左サイドをオーバーラップ。センタリングをGKが処理ミスし、阿部が突っ込むが、何とかボールを抑え込む。
 以後、焦り出した浦和相手に、時間を上手く使い、ついにホイッスル。「えすぱっ子」開設の年に、見事、初優勝を飾った(爆)。

[雑感]
 後半は、20分過ぎから35分頃まで、完全に浦和のペースだった。これを凌いだのが、これまで傑出したボールポゼッションで隠れていた、高山・渡邊のカバーリングセンスであり、今まで殆ど出番のなかった海人の反応の速さであった。逆サイドで流れたクロスボールを抑えて、波状攻撃を未然に防いだ天野の渋い動きも評価したい。
 浦和は清水の左サイドを中心に、ロングボールで清水最大の弱点であるSBを狙ったが、高山と渡邊の機敏な修復作業の前に、ミドルを狙うか、サイドから切れ込んで角度のないシュートを狙うしかなく、得点の確度を落とされていた。しかし、これはあくまで確率論であり、幸運に左右さられた部分もある。また、最も慌てる最後の5分で、今まで楽に勝ち上がってきた清水を前に、激戦を勝ち抜いてきた浦和が、先に息が切れてしまったのも大きい。

[試合後]
 表彰式、最初のトロフィーを贈られたのは、浩太と高山。以後、3年生が賞を受け取りに行きますが、贈られたトロフィーを整列中に下級生へ手渡していきます。恐らく全員にトロフィーを触わらせようとする厚意だと思いますが、重たいのでお前たちが預かっとけ、と言ってるようにも見えます(笑)。
 MVPは、主将としてプレーでも精神面でもチームを引っ張り、大会を通して明らかに一枚上の存在感を示した杉山浩太、…と思いきや得点王の阿部文一朗に。さすがプレゼンター水沼貴史氏、意外性溢れるファンタジー炸裂です。一番意外そうな顔をしたのは、誰であろう浩太なのですが(笑)。
 そのブンは、毎日新聞に緒戦で交代させられて涙した、などと書かれてました。こんなこと全国紙で書かれるぐらいなら、MVPもらわない方が良かった気もします(爆)。とりあえず賞品の俊輔モデルのスパイクは似合わない(ビエリモデルならともかく)ので、大瀧あたりにくれてあげてください(笑)。
 そして写真撮影。撮影位置には人柄と人間関係が現れるものですが、主将で王子様の浩太が真ん中に座り込むのは当然として、中学生の山本真希が堂々2列目中央に。いやあ、市川大祐が思い起こされます。
 最後に電車で帰ろうと駅で待っていると、清水エスパルスユースの選手たちがゾロゾロと。ああ、特急の指定席がなかったのは、こいつらが予約したからか、とオチもついて、福島Jヴィレッジの旅は終わりを告げたのでした。

 何はともあれ、清水エスパルスユースの選手・監督・スタッフ一同、お疲れ様でした。ですが、2年前のチームと比べても、まだ向上の余地はあると思います。是非、高円宮杯、そしてJユース杯での健闘を、祈ってます。
 高円宮杯は、8月24日に松本平広域公園総合球技場にて、仙台育英と昨年に続いての対戦となりました。勝てば翌日、星陵とクラブ4位(名古屋か札幌)の勝者と、そのまま松本で戦います。これに勝てば30日に西が丘での準決勝、最後は9月1日、国立での決勝です。


試合結果
清水エスパルスユース 1−0 浦和レッドダイヤモンズユース
 得点:前半37分:大瀧義史(仁科克英・ショートパス)


選手寸評

山本海人−−7.5 高い身長と積極性で広く守備範囲を保つ。横っ飛びの反応速度も良し。

天野数士−−6.5 攻撃では殆ど絡めなかったが、渡邊と組んでサイド攻撃を封じ込めた。
渡邊優希−−7.0 何度かライン統率を誤るが、その後のカバーリングは秀逸。
高山純一−−7.5 崩される左を繕い、裏もケア、さらに前に出て潰しと、奮迅の動き。
森安洋文−−5.0 最初の当たりが外れ、身体能力でも勝ち切れず、ズレを修復できず。

杉山拓也−−6.0 機能してないわけではなかったが、早期交代。
杉山浩太−−6.5 際立つセンスは混乱の中、唯一の安息所に。守備は十分に潰し切れず。
枝村匠馬−−5.5 意図は感じるが微妙に行き違う場面が多く、潰し・繋ぎには不満。
大瀧義史−−5.5 貴重な決定点を奪ったが、単純なミスも多く、局面の守備で弱さも。

仁科克英−−5.0 ボールを落ち着かす役割に失敗し、ポゼッションサッカーを導けず。
阿部文一朗−5.5 裏を狙い合う乱打戦の様相の中、機能はしたが、成功率低し。

山本真希−−6.5 基礎技術と身体能力を生かし、攻守で役目を全うした恐るべき中学生。
鈴木真司−−5.0 彼の持ち味とは違うが、狙われる左サイド修復の目的は全く果たせず。


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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