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2002年03月26日(火) JY:U14ナショナルトレセン

 U-14ナショナルトレセンが発表、新3年生からは、昨年から引き続き、前田・山本・久保田の3名を選出。新2年生は、一昨年U-12NTで選ばれた長沢(清水FC)、西村(静岡FC)、村松(焼津FC)は選ばれず、さなるカップ(ナイキ杯静岡県予選)6連覇を達成した際の主将である池田、この大会でDFにコンバートされた佐野が選ばれた。
 ポジションは、ナショナルトレセン上のもの。チームオフィシャルイヤーブック上では、久保田はFW、山本はDF、池田はMF。

GK:前田陽平(3年)、DF:久保田英壮(3年)、FW:山本真希(3年)
  新3年生の簡単な紹介は、こちらをどうぞ。

FW:池田康彦(2年) 1988.09.15生 [162cm/49kg]
  初倉FSS(島田市立初倉小)→清水Jrユース
  静岡県小学校選抜(01年)

DF:佐野克彦(2年) 1988.04.30生 [165cm/60kg]
  焼津西SSS(焼津市西小)→清水Jrユース


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 良い機会なので、トレセンについて思うところを書いてみる。

「トレセン」とは?
 正しくは「トレーニングセンター制度」と言う。この制度の大きな目的は、世界で戦える優秀な選手「個々」の発掘・育成と、指導の地域格差の解消。第一義は育成だが、指導できる人数には当然限りがあるために選手の選抜が行っている。また育成の対象は選手のみならず指導者にも向けられ、研修会を通して育成ビジョンの共有化を図っている。
 従来のトレセンは、国体に向けた選抜チームという名目を利用したこともあって、各選抜「チーム」を年1回の地域対抗戦で対戦させていたに過ぎず、その下につながる都道府県、市町村単位のトレセンは選手選考だけの役割にとどまっていた。これの改革に尽力したのが、94年に強化委員長に就任した加藤久氏である。


具体的体系
 全画を9つの地域に分けてトレーニングセンターを設置し、その下に47都道府県、さらに市町村レベルにも地区トレセンを置くという、ナショナルトレセンを頂点としたビラミッド型の育成システムとなる。選手はまず、市町村などの地区レベルで発掘(推薦)され、指導を受ける。この指導の中で特に優秀と認められる選手は、47都道府県ごとのトレセンに進むことになる。この2つのトレセンは、月1〜2回ほどの間隔で恒常的に活動しており、選手が双方に重複することはない。さらに、都道府県レベルで優秀と認められた選手は、全国9地域(北海道・東北・関東・北信越・東海・関西・中国・四国・九州)ごとのトレセンに進み、この中で更に優秀な選手が地域ごとに16名ずつ(※1)、ナショナルトレセンに呼ばれる。この2つのトレセンは、年に1回、スポット的に行われている。
 また、トレセンにはU-17(※2)、U-14、U-12の3つのカテゴリがある。トレセンで重視されるのは、選抜の母体のバランス。学年・所属地域・ポジションなどで偏りが出ないよう心掛けられ、U-17であれば高2・高1・中学生、U-14であれば中2・中1以下が、ほぼ均等に配分されている。東海トレセンならば、静岡・愛知・岐阜・三重から同数が選抜され、さらにナショナルトレセンにも同程度が選抜されるよう配慮がなされている。ポジションも、GK2名・DF4名・MF6名・FW4名程度が基本になる。
 これは、名門チームで活躍した選手ばかりが注目されていた過去を反省し、地域格差・世代格差・ポジションごとの人材の格差解消を指向するためである。所属チームの枠を超えた草の根活動を通し、潜在的な人材を埋もれないように見出し、良い環境・指導を与えるのが狙い。中田英寿(山梨)、柳沢敦(富山)、小笠原満男(岩手)といった選手の発掘・育成に、現行トレセンの果たした役割は、実に大きいものがあるだろう。

 一方、クラブと高校・中学とのバランスや、誕生日(早熟選手と晩成選手)のバランスは、十分に考慮されていないという指摘も多い。何も意識しなければ、トレセンで教える最新の戦術論には、普段からそれに接する機会の多いクラブ出身選手の方が理解しやすく、選考されやすくなる。また、選考基準に「選手の成長過程を充分に把握」するとあるが、前述の通り学年ごとの配分は行っているが、学年内の成長過程の違い、例えば中学生の4月生まれと3月生まれでは心身の発達に大きな違いがあるが、殆ど無視されている。過当競争の起きている関東(茨城・群馬・栃木・千葉・埼玉・東京・神奈川・山梨)の配分も他と同数と相対的に少ないのも、重大な問題だろう(※1)。ピラミッド構造故に必要となる選抜機能が、特にU-12では子供の間で差別意識に繋がっている、という親御さんの声もよく聞かれている(※3)。一方、それまでは恒常的に都道府県トレセンに参加していた選手しか次のステップに選ばれることがなかったのだが、現在は怪我や代表遠征などで参加できなかった選手を対象に「フォローアップ」と呼ばれる特別枠が設けられている。

注)従来より議論のあったことだが「ポスト2002」のトレセンとして、以下の改革方針が示されている。
※1:地域格差を考慮し、レベルが高い認められた地域からはより多く(32名程度)の選手を選出する。
※2:U-17世界大会の予選となるアジア大会(対象年齢はU-16)での敗退が続いている点、また中学→高校でチームが変わる際に受験などの理由でブランクが起こりがちな点を憂慮し、U-17のカテゴリをU-16に変更、特にこの年代の強化を図ることになった。
※3:U-12トレセンはナショナルトレセンを取りやめ、頂点を低くすると同時に、地域ごとに幅広く選手を集めることで、競争原理の緩和を図る。


指導方針
 トレセンは、自分の所属チームでの活動をメインとした上で、それに上積みする形で世界を視野に入れた戦術・技術の習得させることを目的としている。特に従来の日本では、高校選手権が最も注目されていた事情から、ユース年代で勝利至上主義に基づく指導が横行してた。その反省として、将来を考えた選手育成の必要性が求められたのである。
 指導は、日本協会公認の指導資格を持った者が行う。まず、W杯や五輪、U-20・U-17などの世界大会で結果を残したチームの勝因、また日本が参加した場合はその勝因と敗因を分析・評価した上で、日本の課題を抽出。その克服のためのシナリオ(=強化の方向性)が策定される。その戦略を具体的に示すのがナショナルトレセンの場で、その研修会で指導者間で共有化すると以下、地域トレセン→都道府県トレセン→地区トレセンへと、ピラミッド構造を下る形で全国に広めていく。こうして年代ごとの明確な目標設定、即ち「将来、世界で通用する選手にするためには、この世代では何を身につけなければならないか」という課題を日本全体で取り組んだ上で、次の世界大会に挑むことになる。その世界大会の成果は次のナショナルトレセンに反映され、このサイクルは更なる日本の勝利のために続いていく。
 ただし、現在は、このシステマティックな育成プログラムのために、詰め込み教育になっているという批判もあることも指摘しておく。


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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