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海老日記
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2006年01月13日(金)
物部日記・『葛根湯キャットラインダンス』


「物部ー、昨日ユカゲ見たよ」
 出会い頭にゆうさんがそう言ってきた。
 ユカゲ?
 なんだそりゃ。

 ゆかげと言えば、私の知る限り弓を射る時に手につけるグローブのことだ。
 ゆうさんがそれを見たのだろうか。
「ほら、前にサークルボックスの前にいた猫」
 ああ、あれか。

 私が海老銃の他に所属している吹奏楽団のサークルボックスの近くにいた黒い子猫のことだ。
 あの頃はナンにでも名前をつけるのがマイブームでそんな名前をつけた記憶もある。
「大きくなってたよー。理学部棟に住んでるみたいだね」
 そうか、まだ生きていたか。

 大学生になってから猫にはあまりいい思い出がないので、思い出さないようにしていたら、すっかり忘れていた。
 

 名付け親がそれでは、ひどいものだ。

「ところで物部、また風邪ひいたの?」
「みたいです」
「あのさー、葛根湯じゃ風邪は治らないよ」
 漢方薬ですからねえ、と呟いて笑う。そういう類のものは、病気にかからないようにするための薬であって、一度病気にかかれば、違う処方が必要になるということを、この頃知った。我が家では風邪かな? と思ったら葛根湯だったのですっかり万病の薬と思い込んでいた。世間は広い。というか、私の頭の中の狭いこと狭いこと。
「薬飲めよ薬」
 ゆうさんは強く言う。 


 私とゆうさんは、並んで歩いた。