まゆ日記
DiaryINDEX|past|will
5月に入社したおじさんがいる。
このおじさん、電気設備をやる会社を経営していて、うちとこの会社との取引もあったとか、まあとにかく社長とは長いお付き合いだったのだが、そこを倒産させたとか何とかで、なんでもやるからと入社したのである。 何十年も前にハワイだかどこだかに移住していた経験もあって一風変わったおじさんである。タバコはパイプをくゆらしている。 お名前には、なんとミドルネームがついているのだそうな。
さて。 私とか、電気設備会社の社長だった頃のおじさんを知らない人には結構物腰がていねいなのだが、こと社長には一対一になるとずけずけとものを言うようである。 今日の朝礼で社長が、ムダをなくすようにといい話を聞いたので、もういちどみんなに話すようにいきなり指名されたミドルネームおじさんは、使っていない工場も電気がつけっぱなしだった、窓を開ければエアコンはしばらく使わず運転が出来るだろう、ってな話をした。 ミドルネームおじさんの話を受けて、このあと社長は機嫌よく、 「捨ててしまうものでもうまく活用するとか再利用するとか知恵を絞ることも大切です」 と言っていた。
卸問屋の展示会だの即売会だのにいって、誰が買うんだよこんなもの?っつー商品をごっそり買い込んできた挙句に売れ残りを叩き売ることになるのがいつもだったので、みんな頭の中では社長が一番考えろよと言いたげだったし、実際に私もそれを言いそうになったのであるが。
なおかつこの前からの改装や工場移転に伴う荷物の運搬のときに、どう考えても使えそうもない十何年も前にはずした蛍光灯のカサとか、蛍光灯とか、すっげ汚いままの椅子とか棚とか、店の名前が変わったから使えなくなったパンフレット(これも1000枚単位が梱包されちゃってるやつがいくつか)とか、何年も売れ残っている商品とか、 「まだまだ使えるじゃないか」 「捨てるのはもったいない。何かに使え」 と社長が言う。 そこで中断して使いもしないもの、使えないものを移動するだけでみんな段取りがぐちゃぐちゃになったりしてとにかく大変だった。 だもんで、ミドルネームおじさんの話から、社長はますますいい気持ちでわけのわかんないものを溜め込むんだろうなとみんなうんざりした気分になっていたようだった。
ミドルネームおじさん、さすが言いたいことを社長には言えちゃう人で、しかもみごとな空気の読み手でもありすかさず、 「いや社長、だからといってゴミにしか見えない壊れた椅子だのなんだのを後生大事にとっておくのも、とっておく土地なん坪、土地代っていうのがそれなりに掛かるわけだから、処分できるものは処分するように考えないとね」 とおっしゃった。
水をうったような空気の中で社長は耳に痛かったらしく真っ赤になって大笑い。 私はにっこりしながら事務所の中で一人、ミドルネームおじさんに拍手した。
|