笑う角に光りあれ...オレステス・デストラーデ

 

 

Weightless - 2023年05月24日(水)

3ヵ月に一度、近所の歯医者に定期的なメンテナンスに出かけている。
前回受診したのは11月で、本来であれば次回は2月だったはずが、今更ながらのコロナに見事に罹り、かつ、歯科衛生士が辞めたとか何とかで予定を延期され、結局1回すっ飛ばした形で今月久しぶりの来訪となったのであった。

歯医者に到着すると、あらかた予想はしていたものの、案の定それまで担当していた女の子はおらず、初見の女の子が本日の担当となった。
どことなく所作がたどたどしいと思っていたが、施術に入るとそれはより顕著になり、ぎこちなさ+記憶に残るいくつかの工程を経ないままあっけなくメンテナンスは終わってしまった。

私が何より悲しかったのは、歯茎をまさぐり倒す工程が無かったことであった。
この工程に何の意味があるのかよく分からないが、ゴム手袋特有のタッチ感が私の口の中を走り回るその数十秒は、私にとって日常生活では得難い稀有な高揚を生み出してくれる瞬間であった。

もちろん、最初からそうだったわけでない。
回を重ねていくなかで、私の中でそれに気づいてしまったのだ。
その何とも言えない悦楽を。

であるから、その体験が名前も知らぬある歯科衛生士の失踪に伴って失われたことに、とてつもない喪失を感じた一日であった。




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