いいこと見聞録

2009年08月01日(土) 大岡昇平のこと

 また、今年も熱い8月がやってきた。

 かって、太平洋戦争時の戦場の記録を貪るように
読んだ時期がある。著者の身体の伸び縮みを感じる
過剰感情移入型か、正反対の史実列挙方が多かった
が、大岡昇平の「野火」を初めて読んだとき、彼の
臨場感を保ちつつ分離した目で状況と内面を見尽く
す、肝の据わり方に感嘆した。

 良質なルポルタージュと感じたが、非常に乾いた
タッチで、ねっとりと体に纏わりついてくる事は
ない変わりに、ストレートに覚悟を突いてくる。
結局、人間を知りたいという欲求に響いてくるの
だろう。

 この季節に読み返したくなる作家の1人だ。
戦争の直接的な体験を持たないだけに、極限状況に
おける覚悟の手ざわりを原初的な記憶として、身体
のどこかに刻み込んで置きたいのだろうと思う。

(Toshi)


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