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| 2007年07月14日(土) |
「私たちの幸せな時間」 |
ラブストーリーというより人間ドラマ。切ないです。韓国映画ってやっぱり設定が独特だよなあ。ありえないんだけど(笑)上手いな、と思う。自棄になって自殺を繰り返すお嬢様と強盗殺人の罪で死を待つ死刑囚、二人が出会って過ごした「幸せな時間」の物語。 元歌手のユジョンは裕福な家に生まれ生活に不自由なく見えるんだけど、なぜか人生に絶望しやさぐれた態度で自殺を繰り返しています。3度目の自殺未遂から意識が戻ったとき、修道女である叔母に請われて死刑囚との面会に同行。そこで出会ったのが殺人罪で服役中のユンスでした。 ユンスは元孤児で不幸な生い立ちでユジョンとは住む世界が違う。裕福な者の善意を嘲笑って怒りを顕わに面会を拒みます。ユジョンも叔母に言われて嫌々ついてきただけだし、はじめ二人の面会はまったく上手くいきません。でも何度か面会を重ねるうちに少しずつ会話が生まれ、やがて面会日である木曜の三時間が双方にとってかけがえのない時間になってゆく。 育った環境も生きる世界もまるで違うのに、自分達はとても似ている。そこに気づき始めたときにお互いの存在が特別なものになる。二人とも世界から見放されたような孤独感かかえ(どちらにも太陽の明るい光から目を背けるシーンがあって印象的)、同じように人生に絶望していた。ユンスはお金持ちのお嬢様でも死を望むほど苦悩すると知って驚き、ユンスの繊細な心にうたれたユジョンは今まで誰にも言えなかった秘密を彼に打ち明ける。このあたり、観てる我々にも同じペースで二人の過去があかされてゆく流れになってます。ので、冒頭ではワガママ娘の気まぐれに見えたユジョンの自殺癖も後半になると納得。あれほど執拗に母親を憎む理由もよくわかる。酷い。確かにあれは、酷い。 ただユンスの方はどうだろう。過去の人生が悲惨だったことはわかるけど、それが今回の殺人に直結しているとは思えなかったんですが。あと奥さんとか結局どうなったんだろ?妻がいたのなら(少なくとも奥さんとは幸せそうに見えたし)「ユジョンに出会って初めて愛を知った」っていうのはちょっと違うんじゃ…(笑)。んー原作読めばもっと詳しく書かれてるのかもしれません。ちなみに原作本の翻訳は蓮池薫さんだそうです。
まあそれはともかく。この映画では「赦し」がひとつのテーマになっていて、被害者の母親が出てきたり、最終的にユジョンも母親を赦したりする。途中神父さんの言葉で『人が魚に変わるのはただのマジックだが、人自身が本当に変わったとしたらそれは奇跡だ』というようなセリフが出てくるのですが、これに従えば彼女の変化もひとつの奇跡だと言えるでしょう。 ユンスもまたユジョンとの面会によって明るく穏やかな人間に変わってゆくんだけど、死刑囚になって初めて生き生きとした日々を送るなんて実に皮肉で悲しいことだと思いました。そしていくら中身が変わっても、それが奇跡だとしても、やがて二人の幸せな時間には終わりが来ます。人の命を奪った罪はそれほどまでに重い。 ところでこの、粗野で暴力的だったユンスが次第に変化していく演技がすごく上手かったです。ていうかユンス役の彼すごく男前です。カン・ドンウォン君ていうんですね知らなかった!わたくし韓流スターといえばいまだヨン様とウォンビン君くらいしか知らないような不届き者で申し訳ございません。カン・ドンウォン君ね。うんよし覚えた。個人的に刑務所の中より過去のシーンの方が髪が長くて好みであります。
原題は"OUR HAPPY TIME"。邦題でも正しく訳されてるけど「OUR=私たちの」ってところがポイントだなあ。一方が他方に与えるのでなく、どちらかが一方的に癒されるわけでもなく。かけがえのない時間を二人で「共有」できたこと、そこに感動があるのだと思います。
****** 私たちの幸せな時間 【OUR HAPPY TIME】
2006年 韓国 / 日本公開 2007年 監督:ソン・ヘソン 出演:カン・ドンウォン、イ・ナヨン (劇場鑑賞)
※ネタバレしてます。
想像してた映画とだいぶ違ったなー。連続殺人犯の話だと聞いていたのでもっとこう「セブン」みたいなのを予想してたんですが、ああいうふうに事件そのものを衝撃的に描く内容ではなかったです。むしろサスペンスですらない…と言ったら語弊があるか。つまりなんというか、サスペンス性よりも人間ドラマの色が強い印象でした。 60年代後半にアメリカで実際に起こったゾディアック事件、それを追う側の人々がメインに描かれる。生活を犠牲にしてゾディアックを追う刑事たち、ゾディアックから犯行声明が送られてきた新聞社の記者と漫画家。ジェイク・ギレンホール演じるこの漫画家が原作者でもあり主人公なんだけど、彼は担当外であるにもかかわらず最初の暗号が送られてきた時からこの事件に興味を持ち、やがて仕事も投げ出して家庭も顧みず取り憑かれたようにゾディアックに没頭してゆく。
手応えはあるのにどうしても立証できない。そのもどかしさがすごく良く伝わってきます。警察の捜査や主人公の独自調査は何年にも及び、かなり核心に近づいた!と思われるところまで行くんだけど、そのたびに推論は覆され真実はまた遠のく。なにしろ昔のことなので科学的な捜査技術が今ほど進んでなかったり、(殺人現場の)所轄の違いで捜査がスムーズにいかなかったり。そんなところも未解決という結果に繋がっているのかもしれません。これもしも21世紀に起きていた事件なら早期解決もあったんじゃないかな。 結局犯人は捕まらない。ただ、終盤で主人公が容疑者の居場所に出向いていってじっと目を見るシーン、あれで物語的には一応完結の形をとっているような気がします。途中主人公が妻に去られる際、「あなたはそんなにこの事件に夢中になって、一体どうしたいの?何がしたいの?!」と問いつめられて、「ただ知りたい。そいつの目をのぞき込んで、“ああ、こいつが犯人だ”と納得したい」というようなことを答えてる。ラストで彼は、それをそのまま実行しているわけです。
映像が徹底的に60〜70年代ですごく雰囲気ありました。あと、いくら人間ドラマ的といえども殺人シーンの緊迫感などはさすがデヴィッド・フィンチャー、反射的に目をそらしたくなる感じです。それから殺人シーンではないけども、一番ハラハラしたのは地下室の場面。あの心理的に追いつめられるドキドキ感…見てるこっちが走って逃げ出したくなりましたよ(笑)。 途中タクシーを追う俯瞰映像でカメラが直角に曲がるのもすごかった。それとオープニングの、暗号が入ってる封筒がいろんな人の手を通って新聞社の中まで配達される様を延々ずーーーっと追い続ける映像、あれなんかもフィンチャーらしいと思います。 そういえば音楽も良かった!ちょっとレトロモダンな感じで。挿入されるタイミングとか、使われ方もオシャレ。
ジェイク・ギレンホールはこういう役似合うなー。地味で平凡なんだけどちょっとマニアック、みたいな。あと私ロバート・ダウニー・Jr.が好きなのでいっぱい出てきてくれて嬉しかったです(微妙に私生活とシンクロしてしまう役柄でしたが…)。個人的にこの人は若い頃より今のルックスの方が好みかも。
****** ゾディアック 【ZODIAC】
2006年 アメリカ / 日本公開 2007年 監督:デヴィッド・フィンチャー 出演:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、 ロバート・ダウニー・Jr、アンソニー・エドワーズ、クロエ・セヴィニー (劇場鑑賞)
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