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【沙亜子はいまだ、水の中】





◆ ハッパかけて、日が暮れて



週末の走り込み練習。
昨日、初めて20キロを走った。
が、ラスト4キロ、辛くて歩いてしまった。


限界は。
辛さの先にあるのに。
いつまで現状に甘んじているのだと、キドった気持ちで自分にハッパをかけた。


5キロごとで給水休憩。
1キロを二キロ分、歩きを入れてみた。
それがペースを温存させたのか、最後までとても余裕で走ることが出来た。


昨日のタイムより、10分縮めることが出来た。




今、夕方の風が心地よく吹いている。
酷暑の陽射しも柔らかい。





限界のその先とやら、見えたらいいなあ。







2003年09月13日(土)






   


   

      は




     ま

  


 

の        
 
   





◆ 何言ってんだと笑う奴等なんてそんなの〜



今日も20km走り込みをした。
昨日より、20分もタイムを縮めることが出来た。


年内中、エントリーしているのはハーフマラソンを3つ。
その内一つは、時間制限のあるもの。
初心者には難しいかなと思ったけど、時間内完走が可能になってきた。
やった。
やった。







来週から、新しい仕事が始まる。
期間限定のバイト。
つまり、マラソン大会のシーズンだけの職場。
しばらくは落ち着かないから、
今週末は思いっきり、距離を走りこんだ。
充実の日々だった。


来年も再来年も走りたいとか。
そんなことは考えてない。
ただ、今季だけでも。
とりあえず、今だけ、今すぐ、今年だけでも。
走っていけたらと。
今のこの気持ちを満足させたいだけ。






親が聞いたら、きっとまたお小言。


「もっと地道に生きなきゃ」
「そんなことがんばって何になるの?」


言われる言葉はわかってる。
言われてのも、一回や二回ではない。




趣味は道楽。
道楽にお金と時間をかけて何になるの?
親は趣味が生活に影響を与えることを嫌う。


趣味のために、ふらふらしたバイト生活を送ることを、
しろーい目で見ることだろう。




いや、まったく。
それが普通。
何を言われても反論は出来ないので。
私も何も言わないけど。








期間限定なので、待遇面はまあまあいい。


昔の、父親の月収よりいい。




高校・大学と奨学金を利用したので。
両親の源泉徴収をずっと見てきた。


父・年収200万円。
母・年収60万円。
フルタイムで週6日勤務で。


なかなかの筋金入りの貧乏ではありませんか。
反動で、姉と妹は真面目な勤労者となり。
次女は、道楽にばかり頭が行く人間になった。



ああ、親は関係ないか。
私は結局こうなってた。







ふらふらふらふら。
何だか、それでも。
人に自慢できる生き方ではないけど。
少し、落ち着く。





2003年09月14日(日)






   


   

      は




     ま

  


 

の        
 
   





◆ 抑える必要なんて感じはしない



仕事は、神経疲労甚だしいものだった。
それでも、毎日10キロのジョグはかかさない。
昨晩のジョグは眠かった。
走りながら、寝ていた。
こんなことは初めて。


「どうしてそこまでするの?」
「たかが趣味にそんなに頑張ってなんになるの?」


どこからか声がする。


それは。
周囲の声か。
自分の声か。
耳をすましてたぐり寄せる。
単なる意地なのかもしれない。
この雨なのに走りに行こうと思った。
でもやめた。
明らかにオーバーワーク。
目が覚めたら朝なのだから。
はやる気持は明日に持ち越し。
冷静になれ、自分




2003年09月20日(土)






   


   

      は




     ま

  


 

の        
 
   





◆ 冷たい雨が刺すのは体だけ、心までは届かない



やった。
走った、25km。
でも、最後、4km、歩いてしまったけど。
さすがに20kmを超える努力は出来てなかった。




雨が凄かった。
寒くて寒くてレインコートを着た。
雨がストレスになるかと思ったけど。
そうでもなかった。


大会の日に雨が降っても参加したいし。
どんなことも経験にしておきたかったし。
プラスな経験になった気がした。




暑い夏の日に走るより。
こんな寒い日の方がまだ体力を使わないので。
スタミナが温存できて、20km以上を走れたのかな。
だとしたら、これからもっと走れるようになるのかも。
やった。







30kmを練習で走れるようになったら。
フルマラソンに挑戦したいと思う。







まだまだ20kmさえも辛いので。
もっともっともっと走りこめば。
走り終わって良かった、楽しかったと思えるのかなあ。













あの日見た、夕陽に反射して。
きらきらきらきら。
あのランナーのように。
無心のランナーの気持ちに近づきたい。
知りたい。
触れてみたい。






私の走る衝動は。
ただ、それだけ、だった。








◆◆◆◆◆
今している仕事は、かなり緻密で神経を使うもの。
慣れるまでは、全ての工程のチェックを受けるので。
疲労も凄くて、作業中も眩暈を起こすことしばしば。




新人同士のおしゃべりの話題は。
上司や社員のことが多い。


今教えてくれてる上司は、
かなり細かくチェックが入るので。
それに疲れる人も多いらしい。


上司が不在の時。
他の社員がチェックをしてくれるのだが。
いい時は、「いいよ」としか言わない。
悪い時は、「こうしてね」と簡単。


その単純な助言の仕方に「あの人は優しい人」。
細かく指示をする上司を冷たい人のように言う。
新人皆そう言っている。




私は。
優しい人より。
仕事に対してシビアで、完成度が高い人の方がいい。
そういう人に、徹底的にしごかれたい。
後々の事を考えたら。
その方がよっぽど大切なのに。


仕事場で優しいなんて。
人に嫌われたくないからか。
新人を丁寧に指導するより、
早く仕事を完成させた方が簡単だからか。
仕事に対して甘いのか。


それとも本当に優しい人なのか。


そんなとこだろう。





優しい人が好きと言う人は。
自分に対して甘い人がいいということなのか。
なんか、そんな気がした。



必要以上の甘さを享受することは怖い。
それなら嫌われた方がよっぽどマシ。



返せない、返す気がしない他人の感情・行為なんていらない。





でも。
女性同士の世界。
そんなことを言っても「そんなあなたも冷たい人みたいね」、
そう言われる気がして。
黙って聞いてるだけにした。







2003年09月21日(日)






   


   

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◆ 腐り落ちる顏、過去、自分。



ほんの数キロ走ってた頃は、新陳代謝も活発で体も肌の調子もすこぶる良かった。
が、過度の運動になるにつれて。
ケアなしではいられない体になった。
化粧水1本、1ヶ月ももたないほど荒れを感じる。
それでも今はいい調子だなあと思う。
数年前、酷いニキビとジンマシンが顏を覆っていた。
顏に数個の赤い斑点、突然出血して止まらない事があった。
「完治は難しい」と医者に言われた。
(数日後に治ったけど)
問題だらけの顏、体。
だから、多少の事は、まっいっかぁと済ませられる。
今でも顏が腐り落ちる夢を見る。
自分が腐る恐複テ。




2003年09月22日(月)






   


   

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     ま

  


 

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◆ 現実に戻り、また現実に行く、その想像力



やった。
25キロ、歩くことなく走った。
ハーフとしてのタイムもかなり良くなった。
涼しさのため、給水を一回減らしたせいもあるけど。
フルマラソンにまた近付いた。
自分の中の、何か弾ける音がする。
確に聞こえる。


今晩はJUDEのライブ。
今朝はベンジーの夢を見た。
田舎の風景。
たんぼと小さな山々。
雲海の降臨。
その風景にベンジーを呼びたくて、私の想像力で呼び寄せたのだ。
でも、夢の力は長続きせず。
澄んだ景色は、ネオンの街並みとなった。
「ここをまっすぐ行けば、現実に戻るから」
そうして帰って行った。




2003年09月23日(火)






   


   

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◆ 金色に染まる鹿のように、ただしなやかにそのイメージは染みる



「ピンポン」。
スマイル。
ARATA。
とても印象的なシーンが、彼が走るところ。
幼馴染と対決するために練習して。
走って、走って、ただ走るシーン。





スマイルは走ってた。
金色に染まる夕陽をまとい。
灰色の街並みを背に。
まるで全ての風景が目に入らないように。
一途に。
無心に。
前だけを見据えて。


その美しい姿に。
軽い衝撃くらう。







ひたすら進むランナーの心はわからないけど。
わかりたいと思った。
知りたいと思った。
感じてみたかった。
あんな風に走ってみたいと思った。







次の日。
私は走ってた。


たった200mも走れなかった。
体がバラバラになるかと思った。


とてもじゃないけど、スマイルに近づけないと思った。


出来ない、
そう思ったから。




また走りたいと思った。








あの瞬間が確かに私のランニングの始まりだった。











◆◆◆◆
憧れはいつも異性が持っていた。


それでも女に生まれてきたから。
自分に与えられたものを否定したり、卑下したりするのは。
見栄っ張りの私には耐えられないから。
女の体に不服など感じたくもないのだけど。





ああまでも美しく、しなやかな男の体を見せつけられると。
問答無用の感動と。
自分に与えられなかったその事実に。
少し、溜め息。
自分にも嘘をつくくらいの、溜め息。
ちょっとね、ちょっとだけ感じる。








ベンジーの体も、好き。


華奢で、色気漂う容貌。
魅了されないわけがない。







ダイエットしている時。
イメージトレーニングは、BJCなどのVD・DVDから。


なりたい女のイメージなど、ない。
浮かばない。








◆◆◆◆
例えば。


女らしい体というのは、適度な脂肪とわずかな筋肉。
それが一般的なイメージ。




いくら痩せたからといって、脂肪がなくなった体など、
一般的には受けが悪かったりする。
痩せた女性が称えられるのは、二次元の世界での話。
って、気がする。





でも。
今の私の心境から言うと。
もちろん、マラソンのためと言うこともあるけど。
やっぱりもっと痩せたいと思う。
BMI値18が目標。
現在は19くらい。
マラソンのためというなら、もっと下を目指してもいいくらいだと思ってる。




でも。
きっと、周囲はそこまで痩せたら奇異な印象を持つだろうなあと考えると。
少しその気持ちも揺らぐ。
年に数回しか会わない親が何と言うか。
よけいな心配をかけるんじゃないかとか。


そうして私の嫌いな台詞を聞かされる。
「そこまでして、何になるの?」







どうして周囲は痩せた女性に対して嫌悪感を抱くのか。
安定感、安心感の欠如が、病的な印象を与えるからなのだろうな。
周囲に安心を与えるために生きてるんじゃないけど。
それをまったく無視できるほど、鈍感でもなし。






正直、骨が浮いている体は女としての魅力はないのかもしれないけど。
それでも、潔くその形だけの女らしさ。
なければないでいいじゃん。
言い聞かしてやる、自分にこそ。










一番欲しいイメージを。
夕陽に染まるランナーの孤独と開放感。
その一瞬が私の手の中に入れば。
もう、言うことはない、きっと。
その恍惚感、掴む。
私の努力が掴みに行く。


潔くない私の微少の迷いを振りほどきながら。









2003年09月24日(水)






   


   

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の        
 
   




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