月の輪放浪記
DiaryINDEXpastwill


2005年02月26日(土) 映画みました其の33『オーシャンズ12』『アレキサンダー』

すごーく楽しみにしていた『オーシャンズ12』。しかし。
わかりにくかった。
登場人物が多すぎてキャラが把握しきれないし、いきなり時間をさかのぼったりするのね。「5年前」とか「2週間前」とか「8時間前」とか。まあその手法は『11』でも使ったんですが、場所がラスベガス限定だったから問題なかった。今回はあっちこっちに移動しているので、「ン?そりゃどの時点だ?」という感じなんです。
それにだな、「ちょ〜っとそれは掟破りなんじゃないの?」というストーリー展開でした。なんと言いますかねえ。例えば、『ドラゴンボール』で悟天がピンチになったら悟飯兄ちゃんが助っ人してくれて、それでもダメだったら悟空父ちゃんが天国から来てくれるみたいな。そんなのあんまり面白くないですよねえ。だったら何でもアリになってしまう。頭脳戦はいずこへ。
そんなこんなで、周りの観客の反応もよろしくなかったです。「11はわかりやすかったのにねえ」「最悪」等々。ま、あんなに不親切じゃ一般ウケしないだろうなあ。
でも、不思議ともう1回見たい気はするの。オシャレな画面や意味深な科白をもう一度ちゃんと見直したいです。なんといっても超豪華キャストは見応えありますし、彼らがまた本当に楽しそう〜に演じているのがちょっとカワイイ。仲良しハリウッドスターがお世話になってる監督といたずらっ子のジョージ・クルーニーを囲んで明るい楽しい内輪ウケ、それがこの映画の正しい見方なのかもしれません。


そして『アレキサンダー』。
世界史好きだったんで、なかなか楽しかったですよ。バビロンの都のCGや戦いのシーンがとっても凝ったつくりでした。まさか高校の授業で習ったファランクス(重装歩兵の密集陣形)を、こんな壮大なビジュアルで見られるとは思わなかったなあ。
この時代は男色がフツーなので、主役のコリン・ファレルはしょっぱなから男の恋人と大真面目に愛を語ります。濃い〜ですが、ここでくじけてはいけません。だいじょうぶ、最後のほうになると慣れるから!このあたり『トロイ』のように誤魔化してはおらず、オリバー・ストーン監督の歴史への敬意を感じます。『トロイ』のブラピ演じるアキレウスのキャラが分裂したのは、「(男の)恋人を殺されたので怒り狂った」というところを「親友を殺されたので」に改変しちゃったせいだと思うんですよね。最愛の恋人を殺されたからこそ、ヘクトルを殺してその屍を辱めるような残虐なことまでやってのけたのです。動機はとっても大切です。
そんな英雄アキレウスのようになりたいと願ったアレキサンダーは、やがて空前の大遠征を成し遂げます。紀元前の時代、マケドニアからエジプト、アジアまでを支配したのです。冒険しに行ったわけではない。未知の世界に乗り込んでいって戦って勝って、その地と民を手に入れたんだからスゴイ!まさしくアレキサンダー・ザ・グレイト(大王)!
彼をそこまで駆り立てたものは何だったのか。これは人間ドラマであり、歴史物語であり、英雄伝説であり、ロードムービーでもあります。最初にアンソニー・ホプキンス演じる老いたプトレマイオス(アレキサンダーの後継者のひとり。考えてみたらクレオパトラのご先祖様ですね)が出てきて、過去を振り返る形であーだこーだ解説してくれるので、意外とわかりやすかったです。親切設計の映画です(笑)
しかし血で血を洗い、母親オリンピア(アンジェリーナ・ジョリー)の呪縛を背負い、家臣との関係に苦悩しつつ野を越え山を越え砂漠を越え、象とまでも闘う185分。重い。濃い。そして長い。面白かったけど、『プラトーン』同様、見るのは1回でいいです〜。


2005年02月12日(土) 映画みました其の32『ボーン・スプレマシー』

『オーシャンズ12』がまだ混んでたですよー。じゃあ『アレキサンダー』に、と思ったらこっちも混雑。だからまあいいやと思って。前作の『ボーン・アイデンティティ』がつまんなかったので、これは元々見る気なかったのですが。
そしたらね、そしたらね!面白かったの!!いやー食わず嫌いはいけませんな!

今回は魅力的な脇キャラがいっぱいですよ〜♪まずCIAの管理職のおばさまがかっくいい!わからずやの上司に堂々と正論を説き、部下にはビシバシと指示。エーベルバッハ少佐の女性版のようです。それでいてエレガントなんですよ。あんな風に年をとりたいものでございます。敵役のスナイパーも長身クールでとってもタイプ、と思ったら『ロード・オブ・ザ・リング』のローハンの戦士、エオメル様(カール・アーバン)でございました〜いやーんマットよりかっこいい〜
そういうわけで、青池保子センセイの『魔弾の射手』がお好きな方に特にお勧めです!

今回の監督(ポール・グリーングラス)はドキュメンタリーの経験が豊富なんだそうで、なるほど〜のリアリズム。逃れようのない現実がじわじわと迫ってくる感じ。くどい説明はないのに、ちゃんと説得力があって納得のいく展開。カーチェイスなんてやり尽くされたと思っていたら、これまたスッゴイ迫力ありました。クルマがクルマを追っかけてるんじゃなくて、高速で走りながら闘ってるんですよ。お互いに「絶対殺してやる!」「死んでたまるか!」ってピーンと張り詰めた空気がたまらなくクール、かつ非情。監督が替わるとこうも変わるのか。マット・デイモンは前作と同じように演じているのになあ。

前作は見なくても大丈夫、私も憶えてなかったし。単独でもちゃんと分かるように出来てます。気になる方は公式サイトにあらすじも載ってますし、何でしたら「マットは記憶喪失の元エージェント。強くて有能。いろんなパスポートと札束持ってます。逃走中に車に乗せてもらった女と高飛び中」だけでおっけーよ。

そうだそうだ、原作は三部作だそうですよ!だからきっともう1作撮るんでしょうね。だけどエオメル様はもう出ないんだろうな〜(ガッカリ)


2005年02月11日(金) 映画みました其の31『ネバーランド』

良い映画でした〜(ほろり)青空に凧があがるだけで、何だか胸が詰まるのです。映像で圧倒するのではなく、画面から風が吹いてくるような。

この映画は、設定はほぼ実話です。『ピーター・パン』の作者のジェームズ・M・バリをジョニー・デップが演じているのですが、とても『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック船長と同一人物だなんて思えない!役者じゃのう〜。デイヴィス家の4兄弟がまた可愛い(個人的には健気な長男が愛しい)。ケイト・ウィンスレットもダスティン・ホフマンも良かったです。主役のジョニーからワンシーンしか出てこない端役に至るまで、誰ひとり欠けても成立しない、丁寧に大切に作り上げられた映画、という印象をもちました。

想像力が大人を子供に戻してくれる瞬間がある。そして、厳しい現実が一瞬にして子供を大人へ成長させることもある。厳しくて、優しい映画です。何かに行き詰ったときに見るのがいいかもしれない。男の子をお持ちのお母さんは特に、大きめのタオルハンカチを用意してご覧くださいね。


2005年02月06日(日) 映画みました其の30『オペラ座の怪人』

先に『オーシャンズ12』を見ようと思ったんですが、前の方の席しか空いていなかったのでファントムに変更。

うーんとね、結論を先に言ってしまうとね、私は舞台の方が良かったです〜。オペラ座の物語ですので、劇場という場で演じられるのが似合うと思うのです。『リング』を自宅のTVで見るのが一番怖いように。でもじゃあ見る価値がないかというとそんなことはなく、映画ならではの豪華さでとっても楽しかったです。舞台にはなかったシーンも追加されてましたし。仮面舞踏会のシーンや墓地でクリスティーヌが歌うシーンなんか特に良かったなあ〜

ただ。大きな問題がひとつ。
言っちゃっていいですか?
まだご覧になっていない方、気になっちゃうといけないので読まない方がいいかもしれませんよ?
OK?
よろしいですか?
言いますよ?

あの、肝心かなめのファントムが、あんまり歌うまくないんですが〜。
ジェラルド・バトラーはとってもセクシーなんですが、怪人役は見た目でキャスティングしちゃいかんでしょう、いくら映画版でも。“音楽の天使”なんですから。一番イイところでキー下げて歌われるとちょっと。
クリスティーヌのエミー・ロッサムは若い(撮影当時16歳)のに上手でビックリしました。サラ・ブライトマンのような迫力はないけど、むしろ清純で無垢な役柄に似合う透明感のある美声で。それでいて男を惑わせるような魅力もあったり。
ラウルは可もなく不可もなく(何様)。できればもっとお貴族様っぽいプライドの高さを滲ませて欲しかった。だって優しい平民のお兄さんにしか見えないんだもん。

そういうわけで、ファントム師匠よりも弟子のクリスティーヌの方が歌うまいわけですよ。それはいかんですよ。『エリザベート』ならそれでも許されるけど、『ファントム』はいかんがね。例えるなら、ファントムはミロノフ先生なわけです。どんなにノンナがバレエ上手になっても、グランプリを取っても、先生は余裕しゃくしゃくでレーニン賞とか国民栄誉賞とか取らなきゃいけないんですッ!!

うーん、やっぱりもう一回舞台が見たい。悪くないけど、見終わった後で舞台版を見直したくなる、そんな映画版でございました。


くま |MAILHomePage