失せし希望
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 足音

雨の音を音楽に重ねて
窓にへばり付いた自分の顔を眺めながら
吐息で硝子を曇らしながら
蝋燭の光を消してみた

電柱の下に置いてあったネコは死んでたよ

傾く夕日が確認できないくらい
自分の目が濁っていて
起き上がる太陽を見つけられないくらい
太陽は色褪せてた

時間が自分とは関係場所で流れていて
けれどその存在は一秒一秒 
自分の身体に刻み込まれてて

もう動けないよ って嘘を吐いた


窓に映る顔は雨がぶつかるごとに
音を立てながら歪んでいって
それをただ呆然とみつめる

湿った匂いが好きだったんだ

湿った匂いと
一瞬だけ すべてをはっきりさせる稲妻が
すべてを記憶して 瓶に封じ込めた

毎年 その轟音と湿気が
瓶の蓋を開けに来る


轟音は年々 小さくなってきて
今では耳をすませないと聞こえない
忘れていれば良いものの
今度は自分の手で それを 開ける


手の甲についたエンピツのあとが
時間を徐徐に凝縮させ
体温が上がる

屋上の空は雨に閉じ込められてる

2002年04月25日(木)



 眼下

大きければ大きいほどその衝動は強くなって
何かを飲み込みたくなる
そのうち自らの強大さに惚れ込み
他のことは何一つ考えられなくなり
全てを自分の型にはめて物事を考える

盲目の人間 眼鏡無しでは生きられない


潮騒の音
何十もの波の層がコンクリートに打ち付けられて
徐々に侵食しながら

それに光が当たり乱反射
行き場の無い光 と思った

橋を渡るとより一層 風が強くなった
潮は引いていて汚い川底を少しだけ伺わせる
夜の川は綺麗だった
疑いようが無いから

仄かに海の匂いが 土の匂いに混じっていた
春 ひとつ手前の海を思い出した


時間が経てば余裕は泡のようになくなって
待っていたかのようにいつもの重みが肩に乗る

手綱を見失ったみたいだ

時間の使い方も忘れた
空の青さも曇り空の包み込む匂いも忘れた

新しいものは全てを否定しそうな勢いで
今まで築き上げた小さな小さな牙城は
音も立てないで 塵になる


遠く空を仰ぐ余裕も無く



半狂乱になる





嫌ならどーするよ

2002年04月16日(火)



 吐息

画面を覗き込むたびに
全てを取り込みたいような
大きな支配欲が動き出す

全ては可能で 不可能
現実は理想を写さずその大きな差異に
何か常に不安を覚え
目指すべき場所は空の遠く雨の降る場所

光が差し込むのは一日にそんなに多くなくて
煙草に火をつける度に 不安にも火がともり
忘れかけていたオルゴールが突然動き出すように
古い洋館から夜な夜な聞こえるピアノの音のように
少しだけの悲しみと多くの闇を背負った不安が
徐徐にこの身体を蝕み始めて
俄かに見えていた太陽を遮って
再び 地獄の底のような
そんな場所へ引きずり込む

所詮 隙間だらけの頭を埋めるのは
愚かな頭が生み出した愚かな愚かな言葉の羅列だけで
そこには人間の体温なんて何処にも無い

常に手は差し伸べられている


幸福を追求することは阿呆なことなのかも知れない
満足する幸福なんて無いよ
常に感じることが出来る幸福なんて何処にも無いの
幸福を呼び起こす事象がいつも流れてゆくから
幸福なんてその場に停滞しないの

愛も お金も 幸福も 全て消耗品なの


煙草のように火をつけられたら最後
灰になって消えてしまうんだ



何の意味も無く 旗を上げるわけが無い
何か主張があって そこに関係を築きたいから
みんな旗を上げるんだ
主張はいつも主観的で周りを視野に入れたとしても
それには限界があるから
きっとどこかで いつもどこかで誰かが笑う
その蔑みの目に耐えられないくらいなら旗を降ろそうと思う





2002年04月13日(土)
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