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無気力その2■2006年11月28日(火)



休みの日、一人で過ごせない病です。



昨日は休みだったんだけどね、どうしても一人でいるのがイヤだった。



前は平気だったよ。一人が好きだったような気がする。




でも今は何か無理。
誰かと一緒にいないと気分が落ちる。



だから夕方までは頑張ったけど、気がおかしくなりそうだったから結局出掛けた。



人が沢山いる場所に行きたくて、ゲーセンで麻雀やりながらたばこ吸って時間を潰す。




そうこうしてるうちにいつもの友達がゾロゾロとやって来て、喋ったりゲームやったりして終了。



仲のいい子に家まで送って貰って、そのあとまた出掛けた。





次の日の仕事が何時からだろうが、今この時が楽しければそれでOKなんだよ。




寂しいとか、何かをゴチャゴチャ考えたくないの!




誰でもいいから話がしたくて、誰でもいいから側にいて欲しかった。




昨日は自分の弱い部分ばかりが目について、テンションもかなり落ちて、萎え萎えな一日だったな。




そして今日は無気力。
仕事中もボ〜っとしてしまうんだよ。




んで思ったこと。





恋愛って辛かったり切なかったり、何だか忙しいものなのね。




初めて恋愛するからわかんね〜やww





チーズケーキ作った■2006年11月27日(月)



チーズケーキを作りました。



私チーズケーキ嫌いなんだけど、自分で作ったのは何故か食べれる。




おいしいんだもんっ!




私あまり失敗したことなくて、何をするにしても普通か、それ以上にはこなせる。




こういうのをかわいげがないと言うんでしょうか?




何でもできるよ。
何でかよくわからんけど。





でも今恋愛は行き詰まってる感じ。




距離感がわからない。
好かれてるかどうかもわからない。
付き合ってるのに、彼氏と呼ぶのに抵抗がある。





こんなに好きだと思ってるのに、何でうまくいかんのかな?




これが温度差ってヤツ?





彼は何て言うか不思議な人だから、掴み所がなくて、だからどんどん夢中になる。




友達はみんな彼の事を勧めてくれないけど、それでもいいもんね。



いつか自分のものだと感じられるようになればいいや。




あ〜…。会いたいな。



無気力再び■2006年11月25日(土)



無気力です、はい。



更新する気力も湧かなくて…。



何だかな〜どうしたもんか。




こんな状態で大丈夫なんかな?
まぁ大丈夫か…。




とりあえず今日は10時間寝たし、今日は外に出ずにケーキを作って一日過ごす予定。



私働き過ぎなのかな?
休みの日は何もしたくな〜い〜の〜。




いくら好きな人でも、こういう日は無理。






ごめん。今日はホント無気力だから何も書けないや。




I'd be what you want me to.■2006年11月24日(金)
夜遅くまで続いた飲み会の最中、生徒が電話をかけてきた。

僕はひとしきり笑って上機嫌だったが、電話してきた生徒は裏切られたように、

「なんなの先生?怒ってるの?」

と、納得していなかった。





いや、飲んでたところでさ。ちょっとテンション高くなってるかも。

「なんで!だったら早くいつもみたいに戻ってよ。そうでないと話せないじゃん。色々あって私もイライラしてんだから、ちゃんと聞けるようになってよ」

ちょっと待って、落ち着くようにするからさ。
で、そのイライラはいつごろから続いているの?







バルス■2006年11月23日(木)



私ね、昔から宮崎アニメが大好きなの。
特にナウシカとラピュタね。


ナウシカは私が生まれた年に公開になった、宮崎アニメの代表作!


でも〜、最近はラピュタのがちょっと好き。

先生ってね、ラピュタに出てくるロボット兵にそっくりなんだよww


ちょっと気持ち悪いっしょ?キモカワってやつですねww





さてさて。私はこの前先生にバルスを言いました。



私には今、とても好きだと思える人がいるからね。


でも彼氏がいてもいなくても、先生とは付き合うとか、そういう関係にはなれないと思う。



これが私の本音なのだから仕方がない。



正直なところ、先生に好きだから付き合ってくれと言われて、ものすごく意外だ。と思った。



私は今の関係で充分満足だし壊したくないと思ってた。
そしてそれは先生も同じだと思ってた。




でもそれは私の都合だったんだな。


私も好きだったら、その人の全てが欲しくなるもん。
先生はロボット兵じゃなくて、感情のある人間だもんね。当然か。


何だかこの4年間、先生に私の都合を押し付けていたんだな。
だから私との関係を壊すまいと、無理をさせていたのかもしれない。




でも、これでよかった。




バルスという言葉は滅びの言葉であると同時に、再生の言葉でもあるんだよ。



形は変わっても、私達は関係し続けるんだろう。




だからね、やっぱり私達は繋がっているんだよ。
私の未来に先生が必ずいるように、先生の未来にも私がいる。



だからこれからは未来の話をしよう。
大丈夫。私達はきっと幸せになれるよ。



私達の関係に、終わりなんてない。




何も思いつかない■2006年11月21日(火)



正直、本当に分からない。
何を書いたらいいのかな?



先生の想いが詰まってるこの日記に、私の事をどう書けばいい?



わかんないけど、一昨日電話で話してて思った事を、とりあえず書くよ。





私は初めて自分から子供の話をしたね。
急に話したくなったの。



その時私は聖書に出てくる十戒の話を思い出した。



十戒の話の中で、一番印象に残ってる話。



振り向かずに走れと言われて、人々は皆がむしゃらに前を見て走るの。
ただただ前を見て。



振り返った人は、塩の柱にされてしまう。
皆それが怖くて振り返らず同じ方向に走って行く。




小さい頃からこの話はクソだ、そう思ってた。



だってね、私は振り返ってしまう人の気持ちが分かるから。


自分の大切な人がちゃんと走っているか、塩の柱にされていないか、私は確かめたい。


例え塩の柱にされたとしても構わない。
大切な人の無事を見守りたいと願う事が罪になるなら、神様なんてクソだ。テメェの創造した世界で生きるのなんて真っ平御免だ。




私は振り返るよ。
ちゃんと確かめるよ。
先生が私の事を大切に大切にしてくれたから、その日々を時々振り返るよ。




前だけを見てただ走れ!
そんな事に何の価値があるんだ?



忘れないように、見失わないようにできるなら、喜んで塩の柱になってやろうじゃないか。





再び生きる■2006年11月20日(月)




君に見切りをつけ、

君よりも100倍素敵な女性に告白し、

君には見せたことがないくらい深い愛情をその人に注ぐことにするよ。





君が僕に願ってくれた通り、僕は幸せを手に入れて見せるさ。





だから、君も幸せになれ。

君ならば、君が願う未来を作り上げられるはずだ。

4年前、怖いほど無垢で脆弱(ぜいじゃく)だったひな鳥は、今では羽ばたく翼を手に入れている。





君に出会い、君を愛することができてよかった。

ありがとう。





二つ、お願いがあるんだ。





まず第一に、この日記を大切にしてやってくれないかな?

君のことを書いてほしい。





そしてもうひとつ、君のことを忘れられないことを許してくれ。

未練、かな。

いや、やはり君は僕にとっていつまでも大切なんだ。

君にとって僕がそばに居た日々の記憶は、深い湖の底にずっと沈めたままにしておくべきだろう。

君をおびやかすようなことは思い出さなくて良い。

けれど、これは矛盾するようだが、昨日ぼくは安心したことがあった。

君は、私は前を向いて歩いてゆく、けれど振り返るとあの“子ども”の足音が聞こえる、そう言った。

君が、昨日まで一度も触れることのなかった子どものことを話してくれた、最も辛かったはずのことを君が話してくれたんだよ。

僕はふっきれたように安心出来た。

なぜなら、僕は君の苦痛を呼び起こすと同時に、その苦痛を軽くすることが出来るんだろう?

この話題に触れられたのは一瞬だったけれど、僕は自分の役目をやり遂げられた気がして、嬉しかったんだ。

これで、僕もあの日々の記憶を水底に沈められる。

けれど、水面に映る君の笑顔は忘れないでいたいよ。





もう一度、ありがとう。

涙が出てきた。

辛いこともあったけれど、これまで君といられてたまらなく幸せだったと思えてきたよ。






いよいよ、旅立ちの時だな。

僕にとっても、君にとっても。

行けるかい?





では。

行ってきます。

またいつか、笑顔で会おう。






夜中に更新。私、乙!/「何者か」の烙印■2006年11月19日(日)

昨日は久々に明るい話題の電話ができた。


いつもジメっとした暗い、と言うか重い?話ばかりしてるからね。



昨日何故か昼ご飯が食べれなくて、仕事も手につかないくらい精神的に不安定だった。




何だか先生のことばかり考えてしまうんだよ。




変だよね。私には彼氏がいるのに。


彼氏の事はものすご〜く大切だけど、なんだろうなぁ。大切のジャンルが違うんだよね。



だからね、仕事終わった後に先生に電話して、久々に笑い声が聞けて嬉しかったの。






先生が私と話してて笑顔になってくれるなら、いつだって電話するよ。



先生が遠いとこに行ってしまっても大丈夫。


嫌がらせのように電話かけてやるww











あ〜、カレー食べたい。





翌朝。

そういっていた彼女が寝坊し、カレーの話は無しになった。

彼氏に会う時間に間に合わないからね。





不機嫌、もちろん不機嫌だよ。会えないから不機嫌だ。

「かわいいこと言うなあ、先生も」

かわいいかもしれないけれど、このまっすぐな気持ちを持ち続けるのも限界だ。

もう、耐えられない。

白黒はっきりさせようじゃないか。




少し前、僕は生徒に、先生であることを辞めてひとりのAとして接すると伝えたことがある。

君のことが好きだという気持ちを包み隠さない立場だ。

かつて先生であった頃は、彼女の願うところを応援することが僕の役目であった。

「私が幸せであれば先生も幸せでしょう?」

その通りだったよ。

それで僕たちは安穏な日々を送って来れたんだ。

君のとっての「何者か」であることはよき想い出だ。





けれど、彼女のことが好きであるひとりのAとなった今、その楽園は壊れてしまった。

君が今の彼氏という奴の前で一瞬でも笑顔になれば、それは僕を奈落のそこへ落とすようなものなのだ。

「何者か」の烙印を押され、彼氏というカテゴリから除外されようとしている。





僕は、君の全てがほしい。

けれど、君の一部分だけしか与えられないならば、なにも要らない。







君から苦痛を除くことが僕の役目だ/生徒の感想■2006年11月18日(土)


生徒は笑いながら話していた。

「この日記見せるとねー、みんな心配するんだよ。“この人ストーカーになるんじゃないの?”って」

ないなー。そりゃないわ。

「先生ってそういうキャラじゃないよねー」

心配すんな。

君を苦しめる奴は全て僕が排除してやる。

それは僕自身も例外じゃないさ。

いつだって、君に興味を失ったような冷たい演技は出来るよ。





僕はもうすぐ離れた場所へ引っ越す。

生徒にすぐは会えない距離のところへ。





「先生、更新おっつー」

上の書き込みを見た生徒は僕に電話をかけてきた。

「今日の、なかなか良い感じじゃない」

そうですか。

「でーもー、先生はそんなこと出来ません!私に冷たい態度をとったら“ごめんね、ごめんね”って謝るもんね」

笑い声が聞こえた。





生徒はおなかが減った、カレーが食べたいと言った。

「先生、カレー食べさせて」

いつ、今から?

「明日。あ、でも、明日になったらカレーは食べたくなくなってるかもー」

さいこーだね、君は。






今日は気分最悪■2006年11月17日(金)



近所にね、小さい頃からものすご〜く仲良くしてくれてるお兄ちゃんがいてね。



いや、もう本当に仲良くしてたんだけどさ。




今日朝電話かかってきて、何だよ朝っぱらからと思ったら…







そのお兄ちゃん、死んじゃったんだとさ。






白血病だったんだとさ。
私は全然知らなかったよ。




早く言ってよね。
そしたらもっとしたいことも出来ることもあったかもしれないのに。




私に心配をかけたくなかったんだろうか?




意地っ張りだなぁ。
人に気をつかいすぎだよホントに。




いつまでも子供扱いしやがって。
勝手にしろよ。




でも何でかな。
悲しいとかって気持ちはない。
現実として受け止められてない証拠だろうな。




いつか、お兄ちゃんがこの世界のどこにもいないっていう喪失感に涙するのだろうか?



わからないなぁ今は。


まだどっかで生きてる気がしてならない。






今はとにかくバカ野郎を言いたい。





クソ。気分最悪だ。




僕たちの未来■2006年11月16日(木)





僕は生徒に思いを伝えた。

僕は生徒の全てを欲した。

彼女は「ちゃんと考えて答えを出す」と言った。





告白のあとも我々は一度会い、互いに言いたいこともはっきりと言えない雰囲気のまま別れた。





そして、その結果発表のときが来た。

「先生、泣いてるの?」

泣いてなんかいないよ。

僕は、生徒に対する告白の答えを電話で聞いた。

彼女は、「ごめん、けど、先生とは付き合えない」と答えた。





「先生には気持ちをストレートに出してほしいの。だって、先生は私が楽しいときに楽しいと言えて、悲しいときに悲しいと言えるところが好きなんでしょう?」

だから、先生が「好きなこと」をしないのはフェアじゃないわ、と彼女は言った。

それを聞いて、僕の目から熱いものがあふれた。

僕は生徒の前で初めて泣いた。





感情を出せ、吐くように感情をもっと出せ。
僕の意思に反する声が僕の中に聞こえた。
辛いならば辛いことを表現せよ、そうすれば「僕」は楽になれるから。
泣くことは苦痛を乗り越えるための方法なのだ。

僕は生徒に関係する全ての出来事を、カメラに収めるようにありのままに、記憶してきた。
そしてその記憶にまつわる感情をも心に刻んできた。
自分が彼女を受け止められたという証拠を残したんだ。
けれどあの時、僕は記憶することが出来なくなった。
僕は僕の中の魂と呼ぶべきものの存在を感じた。
僕はこれまでどおり彼女のことを心に刻みたかったけれど、僕の「魂」はそれを許さなかった。
魂は僕に苦痛を回避し、前を向くことを強いた。

ああ、記憶が薄れてゆく。
この涙が枯れてしまったあと、いったい僕の心はどうなってしまうのだろう。
彼女の声は聞こえてきても、それがどういう意味なのか頭の中に入ってこなかった。

否定的な感情は涙として体外へと放出される、だから人は生き続けて行くことが出来る。
けれど人が生まれながらに持つこの残酷な機能を僕は恨んだ。





電話を切ったあと、僕は生徒が最近言った言葉を思い出した。
この日記を見せた後、今は当事のような勢いでは書けないなと言った時、生徒は僕にこう返した。

「今の気持ちを書くことがいちばんいいでしょう?」

そうなのだ。
いつまでも過去を振り返ってばかりいるのではない。
僕たちという繋がりは今歴然と存在しているだけでなく、将来にも続かせることが出来る。

もともと僕が生徒にこの「過去」の日記を見せた理由も、「未来」のためであった。
僕はこうやって君を見つめ続けてきた、そして今も、これからもずっと君を見つめ続けていたいという想いを伝えるために。
生徒は僕の告白を受け入れなかったけれど、「先生を失うのは嫌だ」と僕を欲した。





僕は彼女の「何者か」に成り得たのかもしれない。





僕の思考をさえぎるように、生徒からの電話が鳴った。






フィルター■2006年11月15日(水)



ある日を境にして、私は心にフィルターをはった。



歳をとればとる程、フィルターは増えるばかり。




10代の頃ってさぁ、何かよくわかんないけど、傷付けられてもすぐ忘れてたなぁ。




後をひく傷なんてなかったように思える。




即物的だからね。1日1日をがっつり生きて、瞬間の出来事ばかりで何かに執着するとかなかったからなぁ。




あの頃の私にフィルターなんて必要なくて、心にダイレクトに何かがぶつかっても、うまいこと処理できてた。


むしろ、悲しいことや辛いこと程、私の人生のスパイスになっていて、それがなきゃつまんね〜よって思ってた。






今は私の心には無数のフィルターがはりめぐらされていて、外からの刺激はシャットダウンしてる状態。



それは間違ってなんかいないよね。





私は脆くて弱い。
そう思ったのはつい最近のこと。







10代ほど傲慢でエキセントリックな時代はない。





これが大人になるということなのかな?


消滅したわけではない■2006年11月14日(火)



読んでみて思った。




私は先生との会話や出来事をほとんどと言っていい程覚えていない。




何でかな?
毎日のように一緒にいたのに。




でも確かに私はそんな事を言ったな。と読んでいて思い出した。





それでね。先生のブログを読んで、思ったことがある。






記憶は消滅したわけではない。
心のなかに湖があってね、その湖の深い所に沈んでるの。




必要な時に、その記憶はふっと水面に上がってくるんだよ。




だけどそれは記憶だからね。現在ではないから、手ですくったとしても、指の間からこぼれ落ちてしまうんだよ。



でも確かに私達は一緒の時間を過ごし、同じものを見て、沢山の感情をお互いの心に響かせ合うことができたんだよね。





だから詳しくは思い出せないし、忘れてることも多いだろうけど。



でもこれだけは伝えたい。






具体的に何をしたとか何を話したとか、どうだっていいじゃん。




私は先生と過ごした全ての時間を、とても大切に思ってるよ。




それだけは、どうしても伝えたかったの。

何から書けばいいのかな?■2006年11月13日(月)


先生が私の事を、こんなにも思ってくれていたなんて。



私はただ読みながら泣くばかりで、先生にうまく伝えることができなかったけど…






言いたい事は山ほどあるよ。
そんなに簡単に伝えられる程、私達の関係は浅いものではないでしょう?





先生のブログに、22才になった私が残したい言葉を、これから長い時間がかかっても書いていこう。





きっといつか、読んでくれると信じてる。






Space Sonic■2006年11月10日(金)





3時になろうとしていた。

僕はパソコンに写る自分の日記を見つめ携帯を右手に持って、受話器の向こうの生徒が泣き止むのを待った。





…大丈夫か。

「うん」

そっか。





「あのね、言いたいことがあるの」

ふむ。

「あ、でも、当たり前すぎることなんだけどね」

ん?

「あの、ほんとに普通なことしか言わないからね、いい?いい?」

僕はすこし笑った。

どうぞ。





「…ありがとう」

どういたしまして。

「うれしかったの」

そっか。あ、でも、怒られるかと思った。君にとって決して楽しくないことまで書いてるから。

「ほんとそうだよー。勝手に出演させんな変態!」

いやいや。

「これはもう出演料払ってもらわなきゃね、先生」

はいはい。






「先生、明日会わない?私が仕事へ行く前に」

パシリだったらごめんだね。

「何でそうゆうこと言うのー。つまんない」

そういう会い方は好きじゃない。

「だって、私に会いたいでしょ?」

生徒は、私に会いたくなくなっちゃったの?と続けた。

そんなことないよ。

「だったら」

うん。

「会いたいと思ったときに会う、やっぱこうでしょ」

そうだね。

僕たちは翌日の10時に迎えに行く約束をして電話を終えた。

パソコンの時計は4時を指していた。






その6時間後、僕は車で彼女を迎えにいった。

生徒はやや短めのスカートに紫の品のよいニットを羽織っていた。

すべて彼女が店長をやっているショップの服だ。

22歳になった彼女の顔は、あどけなさを残しつつ今までになかった美しさを持っていた。

ほほのふくらみは薄くなり、その形を浮き上がらせたあごの骨格は僕に憂いを伝えるかのようだった。





秋晴れと言う言葉が似合う、雲ひとつない青空が広がっていた。

彼女が車に乗り込んでから、僕たちはどこか喫茶店を探そうと話した。

伝えたいことはもっと他にあったのに。





20分位して一軒の喫茶店に車をとめた。

2人ともアイスコーヒーとモーニング・セットを頼んだ。

生徒は携帯を開き、これが私の彼氏だよと笑いながら僕に見せた。

「いろいろ写真があるんだー、見る?」

ああ、遠慮しとくよ。

そう、と答えて彼女は携帯を閉じた。

僕はその時彼女がどんな表情をしているかを知りたくなくて、テーブルの上の小物へと目をそらした。






その後トーストと共に出てきたゆで卵は疑問を感じるほど熱かった。

これじゃ食べられないと言う僕を生徒は茶化し、また、僕もそれに合わせていた。

伝えたいことはもっと他にあったのに。

冷めた卵を僕が食べ終えたころ、生徒はこの火3本目のマルボロ・メンソールに火を着けた。





何分か沈黙が続いた。

僕は生徒を見た。

彼女は斜め上を向き、眼を細めてタバコの煙の消え行く方を眺めていた。

僕はその表情がとても懐かしかった。





先生のブログ読んだよ、と彼女の方から切り出した。

「私ね、“ゲームオーバー”が好き。2の方ね」

ああ、最悪な気分を書いた日ね。この日のこと覚えてる?

「全然覚えてない」

さいあく。






喫茶店で1時間くらい過ごし、僕たちは特に目的も無かったが新しく出来たショッピング・モールへ向かった。

HMVへ行き、生徒は「フランキー・Jが今いちばんいいんだよねー」とCDを探したが、見つけられなかった。

「しょうがないから、こっちにしとこうよ」

と彼女が僕に差し出したのはエルレガーデンの新しいアルバムだった。

ちょうど店内にSpace Sonicが流れていた。





車に戻って彼女を仕事場まで送った。

エルレのとがったギターの音が心地よかった。

しばらく聞き入った。

伝えたいことはあったけれど。





「そこで右に曲がったらすぐのところで降ろしてね」

僕は言われた場所に車をとめた。

「ありがとう」

生徒はドアを開け、車の外に足を踏み出した。

その時僕は彼女を呼び止めた。

太陽の光が強すぎて、僕は振り返った生徒の表情をはっきりと見られなかったが、僕は言った。





好きだ。




彼女は、おどけた声で

「朝からキモいこと言わないでよう、もう」

と笑った。

それに対して僕はしかめっ面で舌をべええとだして応えた。





帰り道、僕はボリュームを上げてエルレのアルバムを流した。

Space Sonicの歌詞に僕の心はつかまれた。






こんな気持になったことがあるかい

自分はこの地球上で誰よりも能無しじゃないかなって






僕に、なぜここに立ちすくしているかなんてきかないでよ

僕は僕自身の“かけら”を見つけたんだ

僕は僕自信の輝き、ファンタジー、そしてよき思い出を見つけたんだ

それは今までずっと君の中にあったんだ

それは安っぽくても、素晴らしい感情なんだ

僕は君もこの場にいてくれたらと願っているよ

僕は、そうしたものと共に生きてゆく術が分かったんだ

僕はどこへも行かない

僕は、僕たちはお互いを苦しめるだけだと思っていたけど

それは間違いだったんだ






僕も君も分かっていたはずなんだ

この悲しい雨を止めてくれる誰かを待ち続けるなんてまったく意味がないと

雨、たかが雨じゃないか





僕たちはたとえ暗闇の中にいたとしても、それをふっとばすことだって出来るんだ





“Space Somic” ELLEGARDEN & “Hello” oasis



僕は、僕の言葉を君の心に響かせたかった■2006年11月09日(木)





僕は、この日記の主人公である「生徒」本人にこの日記を見せた。






どう、かな?

僕の問いかけに対して電話の向こうで彼女は何も答えなかった。

1時を過ぎた真夜中、マウスをクリックする音だけが受話器から聞こえた。





あのさ、今どこら辺だ?

「ん、今ね、3月26日」

速いよ。ページを送るたびに言ってよ。

「ん、読むの速いから、どんどん読んでるところだから」

カチッ、カチッ。

静かにマウスの音だけが響く。





「生徒」が読んでいる。

4年経った今、彼女が主人公になっている僕の日記を。

書いていた頃から、いつかは見せたいと思っていた。

彼女の真正面に全力で僕の気持ちをぶつけたかった。

それが彼女に受け止めてもらえるかどうか分からなくても、思い切って。

この日の訪れはずっと前から想像されていたことだったにもかかわらず、僕の心は強く揺さぶられた。

口数少なく読む生徒がどう受け止めているかを知りたかった。





「ああー、そうそう、こんなこと言ってたなー、私」

そうだね。

「すごく傲慢な子じゃない?私」

ま、それは多少の演出も加えてるからね。

僕と生徒はペースをそろえて読み進んだ。





9月28日に差し掛かったとき、僕ははっと息を呑んだ。

“生徒の声が鼻声だった”

この一文を読んで、僕は鼓動が止まるほど苦しくなった。

これは半月後に判明する妊娠の兆候だったのだ。

生徒に読むのを止めさせなければ…けれどなぜか言葉は出なかった。

まもなく生徒は10月18日に到達してしまった。





「…ああ…これか…」

彼女は一言だけ発するだけだった。

僕も何も言えなかった。





カチッ、カチッ、カチッ、カチッ。

おい、今何日あたりだい?

カチッ、カチッ。

どうした?





ようやく帰ってきた生徒の声は先ほどと違って、急に弱くなっていた。

「先生、私のことで泣いた?」

泣いた…こともあったかな。そこに書いてあるとおりだよ。

「悲しくなってきた」

どうして?

「先生…ぜんぜん幸せそうじゃない」

生徒の声が詰まっていた。

そんなことないよ。

「私、先生の事、不幸にした?」

全然。全くそんなことないよ。

彼女は何かを言おうとしていた、でも僕の耳に届いたのは嗚咽ばかりだった。






it's the way I've ever seen you■2006年11月08日(水)




「え、どんなことが書いてあるの?」

生徒と電話で話しているとき、僕は彼女にこのエンピツで日記を書いていたことを伝えた。

君は僕のことを“私のことを他の誰よりも真実味のある目で見ている”と評したね。

では、その君を見る確かな目というやつが見てきた世界を見てもらおう。

「じゃ、ネットに繋げてみるね」

“エンピツ”で検索して…出てきた画面の左下で“67304”とID検索するんだ。
出るだろう?





「なにこれ?え、どっから見たらいい?」




“はじまり”から読んでいくんだよ。
どうぞ。




僕は生徒にこの日記を見せた。
彼女が主人公であるこの日記を、その当の本人に。




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