Experiences in UK
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2003年11月17日(月) 第13-14週 2003.11.3-17 銀行へ出向く、マクドナルドの呼び方2

(車を入手)
先週、ようやく車を入手しました。近々日本へ帰国する人たちが集まって不要品のガレージセールを行う「帰国売り」で、近所に住まれていたある日本人の方から譲ってもらったものです。
英国では、日本と同様に車は左側通行で右ハンドル車なので、運転でさほど戸惑うことはありません。ラウンドアバウトなど一部に日本の道路にはない仕組みやルールがありますが、ルールに沿ってぶつからないように走るという原則は万国共通です。
個人的にいちばん違和感を覚えたのは、道の作り方とか道路案内板の見やすさの違いでした。
ロンドンの道は、センターラインなどの白い線の引き方が雑な(ように思える)ため、2車線の道がいつの間にか1車線になっていたりします。また、多くの道路案内板(道の名前とか行き先を表示する案内板)が慎ましやかに立っている(ように思える)ため、ただでさえごちゃごちゃしているロンドンの道を間違わずに走るのは大変でした。日本の幹線道路では、青い案内板が道の上にぬっと突き出ていたりして、実に親切なものだと感じました。また、ラウンドアバウトの案内板を解読して走るのは、乗り始めの私には至難の業でした。

(銀行へ出向く)
同じく先週、銀行関係でちょっとしたトラブルがあったため、バークレーズ銀行に出向きました。オフィスに電話があり、「かくかくしかじかにより、来週いつでもいいから一度来い」とのことで、月曜に出向きました。
ところが、この日は3分で用件が終了しました。受付の人に「それでは、明日3時のアポということで」と紙を渡されて終わりです。「いつでもいいから来いと言ったから来たのに。アポなら電話の時にとれよ」と抗議したかったのですが、英語力不足により諦めてとぼとぼ帰らざるをえませんでした。ただ、あとで周囲の人に聞くと、こちらの銀行はそういうものらしいです。
翌日、指定の時刻に出向いたところ、大柄の英国人が現れて、さわやかな笑顔で「Nice to meet you!」と握手を求めてきました。英語で厄介な話をしないといけないため、こちらは大変緊張して握手に応じました。
パーティションで区切られたデスクで対面して、トラブルの状況と原因について説明し、対応策についての提案を行い、話が、さあどうする、といった段まできたところで、相手の英国人バンカーが「ニホンゴデモ、イイデスカ?」とはっきりとした日本語で話したからびっくりです。彼は流暢な日本語を話すことができて、会話が日本語モードに切り替わってから後はすんなりと問題も解決しました。
その後、日本語で四方山話をしたのですが、彼は大学で日本語を学んだ後、JETプログラムで香川県の中学に2年間行っていたとのことでした。JETプログラムとは、英国の若者を期間限定の英語教師として日本に送り込む制度のことです。毎年500人以上の英国人がJETプログラムで日本に送り込まれているそうです。
実は、私のアシスタントの女性もJETプログラムで日本に滞在した経験があるので(ただし、彼女の日本語はあいさつ程度)、そのように話したところ、なんとこのバンカー氏と私のアシスタントが知人であることが発覚しました。両者ともスコットランド出身のJET経験者ということで知り合いとのことでした。It's a small world な話です。

(マクドナルドの呼び方2)
「マクドナルド」呼称問題、追加調査をした結果、色々なことが分かりました。
まず、米国に滞在したことのある日本人から、米国では「マック」と言うとの証言を得ました。
また、前回の取材対象者(スコットランド人のアシスタント)以外の現地スタッフ(イングランド人と現地採用の日本人)に幅広く聞いてみたところ、ほとんどの人が「マッキディーズ」とは言わないという返事でした。彼らの意見は、英国人はとくに短縮させることなく「マクドナォー」と言うとのことでした。
ただし、面白かったのは、現地採用日本人(英国滞在10〜30年の方々)の皆さんは、いちように「マッキディーズなんて聞いたことない」との反応だったのに対して、イングランド人の方々は「そんな言い方もあるけど、自分は使わない」と顔をしかめて言っていたことです。
それでは、「マッキディーズ」というのはスコットランドの方言かと尋ねるとそうではないらしく、どうやら日本でいうコギャル言葉だったようです。最初に私が聞いたスコットランド人は20才台前半の現代風の女性だったのに対して、イングランド人は30才前後の落ち着いた感じの人たちだったのです。
ちなみに、当地ではマクドナルドよりもバーガーキングの方が人気があり、よりクールだという意見も聞きました。「マクド」はこどもが行く店というイメージらしいです。ただし、パットニーのハイストリートにもほとんど筋向かいでマクドナルドとバーガーキングがあるのですが、バーガーキングの方はこちらが心配になるくらいにいつも閑古鳥が鳴いています。

(ラグビーW杯4 イングランドv.s.フランス)
さて、ラグビーW杯ですが、大本命のオールブラックス(ニュージーランド)が準決勝で敗退してしまいました。今年のオールブラックスは、圧倒的な攻撃力を誇っていて記録的なトライ数を重ねていましたが、相手のオーストラリアの堅守により1トライに抑え込まれました。開催国に有利にするということもないと思うのですが、レフェリングに不公平な面があったようにも感じられました(最初のトライがノックオンと判断されて幻になったのは、ちょっと変だと思いました)。
それはそれとしても、オーストラリア戦でのオールブラックスに「強さ」が感じられなかったのも事実です。今年のオールブラックスに死角があるとすれば、対戦カードに恵まれすぎていて厳しい戦いをしてこなかった点だという決勝リーグ前の各メディアの指摘が当たったのでしょうか。
一方、もう一つの本命であるイングランドは、順当にフランスを破って決勝進出しました。
順当にとはいえ、雨と風の悪コンディションの中でのタフなゲームでした。しかし、こういう厳しい条件や競り合いにおいてこそ力を発揮するのが今年のイングランドの特徴です。フランスが焦ってダーティな反則を重ねる中で、ウィルキンソンが着実にペナルティ・キックとドロップ・ゴールで点数をあげていくという戦い方は、イングランド得意の展開だったといえましょう。
個人的には、破壊力抜群のオールブラックスとイングランドの決勝戦が見たかったのですが、守りのチームどうしの決勝戦になりました。下馬評の低かった今年のオーストラリアが2大会連続の優勝を成し遂げるのか、イングランドが圧勝で北半球に初めてエリス杯をもたらすのか、次週土曜が楽しみです。


2003年11月03日(月) 第12週 2003.10.27-11.3 民営化の問題、マクドナルドの呼び方

今週のロンドンは、午前中に晴れていたかと思うと午後からは黒雲が空一面に垂れ込めてしょぼしょぼと細かい雨が降り続くという日が多くありました。冬時間に切り替わったこともあり、外は5時には真っ暗になっています。

(ロイヤル・メールのスト)
今週、ロイヤル・メール(英国郵便)がストを起こしました。この1〜2年、ロイヤル・メールの労使対立が激化しているというニュースは東京でもしばしば聞こえておりましたが、今回のストライキは、非公認の山猫ストであり、当地メディアでもかなり唐突感をもって伝えられています。ストにより、数日にわたって郵便の配達がストップしています。
先週お伝えしたロンドン地下鉄事故の問題も、今回の郵便ストの問題も、背景にあるのは民営化の手法をめぐる問題です。

(民営化の問題)
ロンドンの地下鉄は、今年初めからいわゆる「上下分離」方式による民営化が実施されています。線路のメンテナンスだけを切り離して民間会社に委託するという、英国の旧国鉄における失敗で悪名高い「上下分離」方式です。結果として、地下鉄においてもやはり線路のメンテナンスに問題が発生しているようで、私の知る限りでも、今年に入ってから3回の脱線事故が発生しています(もっとも、私の持ち合わせている知識からは、民営化と事故の間の因果の程度についてまで確かなことはいえませんが)。
一方、郵便の方も、迷走状態が続いています。英国における郵政事業の民営化は、サッチャー政権時代にその方針が定められ、2001年の3月に、ロイヤル・メールを政府全額出資の株式会社(特殊法人)としたうえで、会社の名称もコンシグニアに改称するという措置がとられました。現在も郵便事業の段階的な自由化が進んでおり、同事業への民間参入は徐々に進んでいるようです。
しかし、発足直後からコンシグニアの経営悪化がどんどん深刻化しました。決算期ごとに大幅な人員削減のニュースが伝えられ、労使対立も激化の一途をたどってきました。会社の名称もいつの間にか元のロイヤル・メールに戻されています。

地下鉄にしろ郵便にしろ、「だから、民営化は失敗だった」という単純な話では当然なくて、問題は民営化の手法とか過渡期の激変緩和措置をどう図るかということなのだと思います。
ここから先の話は、難しくなるので頭の中で自問自答するにとどめますが、ひとつだけ改めて実感するのは、教育や医療を含めた広い意味での公共財に対して、どんな範囲でどのように市場原理を導入していくのかというのは、日本を含めた世界各国が直面している大きな課題だということです(すべての医療サービスを無料で受けることができる英国の医療制度も、曲がり角にさしかかろうとしているようです)。

(マクドナルドの呼び方)
ところで。別に意識して蒐集しているわけではないのですが、また英国人と大阪人の共通点が見つかりました。これは、個人的にはこれまでで一番驚愕の事実です。
東京と大阪の代表的なカルチュラル・ギャップのひとつに、マクドナルドの呼び方があります。ご存じの通り、大阪では「マクド」と呼ぶのに対して東京では「マック」です。大阪人は、この「マック」という呼び方に著しく違和感を覚えるものです。
さて、英国人はどう呼んでいるのか。オフィスの現地スタッフ(スコットランド出身)に取材してみたところ、かれらは「マッキディーズ」と呼ぶらしいです。そして、日本で2通りの呼び方があると言ったところ、たちどころに「『マクド』is better!」との返事が返ってきました。
大阪人が「マクド」と呼んでいるのは、日本語としての音が大阪の風土ないしは大阪弁に合っているからに過ぎないのであって、断じて言語感覚が英国人に近いからではないでしょう。よって、偶然の一致には違いないのですが、たいへん驚きました。なぜならば、大阪人が「マック」に違和感を覚えるのは、ものすごく気取った感じがするからです。つまり、アメリカ風(英語風)の短縮のさせ方という印象があるわけです。しかし実際の英語風は「マクド」の方だという点が、非常に意外でかつ面白い事実です。もっとも、アメリカでどう言うのかはわかりませんが。

ちなみに、Macがつく人名はケルト民族に特有のものらしいです。ケルト民族というのは、現在のアイルランド、スコットランド、ウェールズの各地方の民族のことです。Macはケルト語で「〜の息子」という意味らしく、マッカーサーは「アーサー王の息子」という意味の名で、あのダグラス・マッカーサー司令長官も出自はスコットランド系とのことです(以上の蘊蓄は、司馬遼太郎「街道をゆく31 愛蘭土紀行2」による)。
というわけで、後に大成功を収めるハンバーガー屋さんを興したと目されるアメリカ人MacDonaldさんのルーツは、高い確度でスコットランドやアイルランドなどからの移民のばすです。往年のアメリカ人名テニス・プレーヤーのジョン・マッケンローもアイルランド系移民の子孫でしたし、英国の伝承童謡(Mother Goose rhymes or nursery rhymes)の中にも"Old MacDonald Had a Farm"というのがあります。
したがって、もしアメリカでマクドナルドのことを「マック」と呼んでいたとしても、元祖は英国の「マッキディーズ」であるといえましょう。


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