Experiences in UK
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2003年08月26日(火) 第2週(週末・連休編) 2003.8.18-25 気さくな英国人と英国のこども、グリニッジ

8/25月曜はバンク・ホリデー(祝日)なので英国は3連休でした。こちらのニュースでは、連休中のロンドンへの人出の多さが大きな話題になっていました。夏の終わりの連休ということに加え、様々なイベント(ローリングストーンズのライブやラグビーのテストマッチやノッティング・ヒルでのお祭り等)が重なるため、交通が麻痺するということが新聞やテレビでしきりに言われており、Travel chaosという単語が頻繁に使われるほどでした(結果としては、予想されたような麻痺状態にはならなかったようです)。

(気さくな英国人と英国のこども)
土曜日に新住居の最終決定のために再びウィンブルドン方面に出かけました。決めたのは、パットニー(Putney)という町です。契約の詰めと付近の散策で半日がつぶれました。
散策途中でのこと。大通り沿いの人通りの多い歩道を2才の息子と妻と3人で歩いていた際、黒人のおばさんに「子供をバギーに乗せなさい」と叱られました。我々もバギーに乗せたい気持ちは山々なのですが、息子がどうしても歩きたいと喚き散らすので仕方なく歩かせていました。おばさんの親切なご忠告は無視せざるを得なかったのですが、ここで周囲を見渡すとイギリス人の幼児はたいていちょこんとおとなしくバギーに座っています。「イギリス人のこどもはあまり泣かない」という話を赴任前に聞いたことがありましたが、来てみると実際にその通りです。かたや当家の息子は、路上であろうと店の中であろうと乗り物の中であろうと、機嫌を損ねたり気に入らないことがあると大音響で泣き喚きます。そんなイギリス人のこどもはついぞみかけません。
この話を妻の友人の転勤妻でNY在住の方にしたところ、自分もまったく同じと言われたそうです。アメリカ人の奥さんが子供をバギーに乗せて優雅に買い物をしている一方で、自分はバギーから飛び出していたずらしまくるこどもを追いかけるので精一杯だと。うちも全く同じですし、日本にいた時もこどもはそういうものだったと思います。
なんでこちらの子供はあんなに「いい子」なのでしょうか。民族性の違いなのか、しつけの違いなのか、子育ての方針の違いなのか、いまの我々夫婦にとって最大の謎の一つです。

日曜日午後は、ホテルから歩いて30分ほどの場所にある庭園(植物園)Chelsea Physic Gardenに出かけました。17世紀に創設された庭園で、長年秘密にされていたのが約20年前から一般公開されたというものです。植物に関しては知識も興味も著しく欠如している小生としては、1人5ポンドの入園料はちょっと高いと及び腰になりましたが、家族でひなたぼっこをするにはいい場所だったかもしれません。
この道すがらでも、多くの英国人のおじさん、おばさんから声をかけられました。例によってぎゃーぎゃー喚き始めた息子に対して、「よく歌う子ね」と慰みの声をかけてくれたおばさんや、自分で空のバギーを引きながらのろのろ歩く息子に対して「スロー・タイム!」と茶化してくれるおじさんなどがいました。まったく気さくな人たちです。こんな人たちがいると、ジャパニーズ・スマイルを返しているだけでは面白くないので、なんか気の利いた返しをしようとがんばる気にもなります。

(グリニッジ)
月曜は朝から観光の定番であるテムズ川クルーズに出かけました。クルーズ自体は、どうということもなかったのですが(英語の説明もほとんど聞き取れませんし)、往路終点のグリニッジ散策がなかなか楽しいものでした。グリニッジは小振りの観光地で、内外の観光客でけっこう賑わっていました。
この日の昼食は、夜はパブになる街の軽食屋にて、当地に来て始めてのフィッシュ・アンド・チップスを食しました。英国伝統料理の一つですが、これはなかなかおいしいと思いました(ただし、1人6ポンドとやや高めのフィッシュ・アンド・チップス)。
その後、目的の一つであったFan museum(扇子博物館)に立ち寄りました。小生の博物館巡りのガイドブックのひとつである「ロンドンの小さな博物館」(集英社新書、良書)で館のバック・グラウンドを知っていたために立ち寄ったのですが、意外と展示品が少なくて、ちょっとがっかりでした。

次に向かったNational Maritime Museum(国立海洋博物館)は、特に事前の知識がないままに入ったものの、素晴らしい博物館でした。展示内容の充実度や規模は言うまでもなく、様々な工夫がなされた展示方法にも感心しました。こどもが遊んで学べる仕掛けも随所に施されていて、うちの不行儀息子も退屈せずに多いに楽しんでいました。この博物館が無料なのですから、日本から来た我々としてはびっくりです。
また、博物館の隣にかつての王妃別荘(クイーンズ・ハウス)があり、こちらも無料公開されています。博物館で体力を使い果たした我々はここまで行けなかったのですが、完全な立方体のメイン・ホールが有名とのことです。なお、博物館と別荘のある敷地内には、奈良の若草山を左右に2つ置いたような、ただただため息が出るばかりの美しくかつ広大な芝生の庭があります。
もう一つ、グリニッジで忘れてはならないものとして、Old Royal Observatory(旧王立天文台)があります(子午線で有名な天文台自体はすでに別の場所に移転されている)。少し離れていることもあって、ここにも行けずじまいでした。
グリニッジは我々にとって再訪の価値があるようです。


2003年08月25日(月) 第2週 2003.8.18-25 ロンドンの地下鉄、英国料理

先週と比べると興奮と緊張の度合いがかなり和らいだ1週間でした。出勤初日に地下鉄に初めて乗った時の緊張がだいぶ昔の話に感じられます。

(地下鉄)
今週は、試みに1週間のトラベルカード(周遊券と定期券を併せたもの)を買ってみたので、これでスイスイと色んな場所に出かけました。スイスイとはいうものの、ロンドンの地下鉄はどのラインも東京の半蔵門線級の深さの場所を走っているため、いちいち長いエスカレーターをのぼりおりする必要があり、けっこう面倒です。エスカレーターといえば、こちらでは急がない人は右側に立つのがルールです。東京とは逆で、関西流なのです(大阪のエスカレーターで左側にぼーと立っていると後ろから「いらち」の関西人に小突かれます)。ここにもイギリスと大阪の共通点がありました。

さて、地下鉄について驚くべきは、その国際性です。カードや紙幣を用いる券売機を操作する際に、まず選択するのは言語です。5、6種類の言語をタッチパネルで選択するのですが、もちろん日本語もあります。また「グリーンパーク」駅構内では、スリに注意のアナウンスが英語と日本語で繰り返し放送されています。さすが国際都市ロンドンの基幹交通といった感じですが、ニューヨークはどうなのでしょう。
なお、先日のFT紙にも出ていましたが、来年から地下鉄の運賃は再度値上げされるらしく、初乗り料金が2ポンドになるとのことです。世界で最初に開通したロンドン地下鉄の車両は小さくてぼろく、しばしば止まります。これに1駅乗るために2ポンド(400円)を支払うのはどう考えても理不尽という意見は衆目の一致するところです。車内のお知らせによると、「お客様のより一層の安全確保のため」に車内にビデオカメラを設置する計画とのことですが、そんなもん要らないから値上げをやめてもらいたいものです。

(ロンドン散歩)
今週はランチタイムなどを利用して、地下鉄でさくっとでかけて街歩きをしました。シティ方面に出かけた際、会社近辺の印象とは異なって、けっこう地味なスーツを着たイギリス人サラリーマンがたくさん歩いていることに気づきました。「グリーンパーク」近辺は観光客とかサービス業者が多いのでラフな服装の人が多かったのだと思います。
その他、「ボンドストリート」や「ピカディリー」などを歩きました。どこもロンドンの中心地ではありますが、それにしても人が多いですね。まっすぐに歩ける場所はほとんどありません。また、イギリス人の平均歩行スピードの速さにも驚いています。歩幅の違いなどもあるのでしょうが、まあ速いです。県別歩行速度が日本最速らしい大阪人の中でもとりわけ速い方の私としては、女性に横から抜き去られるという経験はかなりショッキングでした(とくに女性が速いように感じます)。

ボンドストリートに英国王室御用達の文房具屋のSmythonという店があります。冷やかし半分、でもこちらに来て手帳(ダイアリー)が欲しかったので、試しに入ってみました。実に礼儀正しくて親切な黒人の若い女性店員が付いてくれて、こちらの欲しいものを聞いたうえで、各手帳の違いを事細かに解説し、希望に沿ったものを一生懸命探してくれました。べつにたいそうなものではなくて、日本の書店で売っている能率手帳と何ら変わらないものなので、「そんなん見たら分かる」と思ったのですが、親切な解説にしばらく付き合いました。しかし、ちらりと値札が目に入った時点で適当な理屈をつけて即時撤退することにしました。薄っぺらい能率手帳に75ポンドの値が付いていました。1万5千円ですよ!理解不能です。

(英国料理)
食事に関して特筆すべきは、ようやく伝統的な英国料理の店に入ったことです。ガイドブックには「気軽に入れる英国の定食屋」みたいなことが書かれてあり、一部の英国滞在経験者の方からは典型的な「英国のまずい料理の店」としてご紹介頂いていた「チェルシー・キッチン」に行ってきました。仰るとおり、本当にまずい料理がてんこ盛りで出てきました。嫌いなもの以外で出されたものを残すという、私としてはきわめて珍しい行動に出ざるを得ず、諸先輩のご意見に深くうなずきつつ店を後にした次第です。
どうまずいか。それは、実体験して頂くしかありますまい。

(ローラーブレード集団)
もう一つ、今晩(22日夜)、大変珍しいものに遭遇しました。
まだまだ明るい7時半頃、帰宅途中にホテル近くの交差点で信号待ちをしていたところ、前方のビル陰の遠くの方から何やら騒がしい物音が聞こえてきました。音は徐々に大きくなり、ローラーブレードを履いた人々の集団が車道に飛び出してきました。「えらい集団で遊んどるなあ」と思ってみていると、ローラーブレード集団の列は途切れることなく延々と続き、信号が赤に変わってもお構いなしで続々と走り抜けていきました。よく見ると、同じくローラーブレードを履きつつも黄色の蛍光色ジャケットを着用した数名の人々が交差点のすべての車をストップさせるべく交通整理していました。結局、集団の最後尾が駆け抜けるまで2〜3分の時間を要し(明らかに百人をくだらない集団でした)、最後に黄色いジャケットの数名が、青信号を数回にわたって停止されられた車に対して身振りで軽くサンキューと意思表示して去っていき、喧噪は遠のいていきました。交通整理をしていたのは風体から察するに、警察官などではないと思われます。
私はこの意味不明な集団暴走行為を口をぽかんと開けて眺めるばかりでした。ローラーブレードの集団といっても子供ではなく、れっきとした大人たちの集団です。いったいあれは何だったのでしょうか。どこへ行くのでしょうか。何のために公道を滑走していたのでしょうか。さっぱり分かりません。イギリス人らしいなあと思ったのが、そんな奇矯な行動を取っている一人一人の表情をみると、うつむき加減で眉間にしわを寄せた真剣な表情の人が多かった点です。これがアメリカ人であれば、沿道の我々に対し「イェーイ、ホウホウ」とかアピールしながら走り抜けているところでしょう。
それにしても、イギリス・スタイルは、傍観者にとっては不気味さ加減を増幅させるものがありました。


2003年08月18日(月) 第1週 2003.8.11-18 ファースト・インプレッション

ヒースロー空港に降り立ってから1週間が経ちました。
現在の仮宿は、地下鉄「サウス・ケンジントン」駅から徒歩10分程度のホテル(Chelsea Cloisters)です。フルハムロードとキングスロードの中間に位置するロケーションで、日本の青山のようなお洒落で面白い場所です。職場まで地下鉄で3駅と非常に近くて、周囲にはレストランやスーパー、24時間オープンのコンビニがあるなど生活環境はきわめて良好です。

(ファースト・インプレッション)
ロンドンに到着した時の第一印象は、とにかく暑い。日本でも報道されていたと思いますが、今年のロンドンは記録的な暑さで、日本の猛暑と何ら変わりませんでした。北海道よりも緯度が高いこの国の大方の住まいにはクーラーがないため(当方の投宿先も)、実態としては日本にいる時よりも辛かった印象です。ただし、数日前からは通常の状態に戻り、すでに日本の晩秋のような半袖では肌寒い気候になっています。

第二の印象ですが、随所に感じられるカルチャや習慣の違いが面白くもあり、時に小さなストレスにもなります。エレベーター(こちらではリフトという)は「開」しかなくて「閉」がなく、自分が乗り降りする階を押すや否や閉まります。あと当然こちらの1階は2階です。初めて乗った地下鉄では、改札口でチケットの出る場所が日本と違うため、一瞬ですが立ち往生しました。また、2階建てバスは、近くで見るとかなり大きなもので、これが爆走しているため間近で見るとちょっと怖いです。街中の歩行者信号は押しボタン式が多くて、押さないと永遠に渡れません。たまにみかける地味な背広を着た典型的な格好の日本人サラリーマンは完全に浮いています(自分もそうでしょう)。大使館の付近でも全員が学生かと思ってしまうような状況で、こちらのサラリーマンはどんな格好で出勤しているのか未だに謎です。謎と言えば、夜のスポーツニュースで必ず流れるクリケットの映像は、相当な謎ですね。

第三の印象としては、やはり物価が高い。ただし、これは円換算した一般物価が高いという意味ですので、単純に為替レートが円安方向に振れすぎているということかもしれません。例えば、地下鉄の初乗りは1.6ポンド、500mlのボルヴィックが0.96ポンドです。日本だとそれぞれ170円と100円ですから、これらの財で測った絶対的な購買力平価は1ポンド=約100円です。実勢レートは、倍近い円安というわけです(その後、センズベーリーというスーパーでは、同じボルヴィックが半額で売られていたことが発覚しました。英国では一物一価の原則がかなり崩れているようです)。

第四の印象ですが、英国人は大阪人と似ています。とくに子供を連れていると通りすがりの見知らぬ人が様々なコミュニケーションを試みてきます。東京で日本人が外国人の家族に話しかけることはほとんどあり得ないように思うのですが、英国に限らず外国人はそういうものなのでしょうか。ふるさとの大阪にいたおばちゃんたちと行動パターンが酷似しています。この数日の間に、当地での生活に慣れない我々に対して親切に接してくれた英国人が幾人もいました。

さて、食事の方ですが、やはり日本系のレストランは値段が立派ながら味は???ですね(相対物価で考えても高い!)。いまは近所にあるチャイニーズのテイクアウェーが、小生にとって味と値段の両面で一番です。しかし、チョイスするメニューが英語でみても漢字で見てもいまひとつよく分からないのが悩みの種です。

そろそろ家探しを始めており、時間を見つけては色々なところに出かけています。そのなかでとあるラグビー・イングランド代表選手が所有している家を回り(今月末までまだ本人が住んでいる)、本人と会って握手をしたのは感激の体験でした。背が2m近くあるナイスガイで、ものすごい手をしていました。また、ウィンブルドン方面に出かけた帰りには、オールイングランドテニスクラブと併設されているWimbledon Lawn Tennis Museumに立ち寄りました。また、その後さらに足を伸ばして、Wimbledon Windmill Museumも訪ねてきました。それぞれにそれぞれの味がある良いmuseumでした。小生の英国生活の目標である博物館巡りも上々の滑り出しだったと思っています。

書き始めると切りがないのですが、ロンドン生活の始まりは、当初の予想以上に刺激的で面白いものになっています。
オフィスでは、ほとんど挨拶回りとか諸手続に忙殺されているだけで過ぎていきました。こちらは慣れないことが多くて、ほとんど何もしていないのに大変つかれます。ただ、当地はまだ9時頃まで明るいので、退社後に家族で近所を散策するのが良い気分転換と楽しみになっています。
なお、妻も息子も元気で暮らしており、妻は息子を乗せたバギーを引きながら連日ロンドンバスで色々な場所に繰り出しているようです。


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