-殻-

INDEXPASTNEXTNEWEST

2002年12月29日(日) 境界線

あなたにはあなたの場所があって、
あなただけの思い出があり、
あなただけの時間があるのです。

部外者の僕には、そこに入り込むことはできません。

ただ、

あなたがその、
あなただけの世界の中に、

僕を誘ってくれるのであれば、

僕は。




2002年12月28日(土) 「またね」

あなたに、僕なりの答えを。

「またね」という言葉は、

決して嘘ではありませんよ。

また会う気がない人に、

僕はこの言葉を使うことはありません。

あなたが望むなら、

必ず、

会えます。

きっと、

すぐに。


あなたは、それを望んでいるのですか?

それが知りたいのです。



2002年12月18日(水) ほんとうのおわり

ほんとうに、ほんとうに、
ぼくらはおわってしまうのかな?

こんなふうにあっけなく、
こんなふうになさけなく、
こんなふうにありふれて、

おわってしまうのかな。

きみがはじめてうそをついたときに、
ぼくははじめてなみだをながした。

そしていまはぼくのうそが、
きみをたくさんなかせている。

きみはすがりついて、
ぼくをはなさない。
こんなひどいぼくを、
まだすきだという。

でもね、
でもね、

きっとそれはひとときのものなんだ。
すぐにつらくなってしまうよ。
こんなぼくをゆるしてしまったら、
きみはいつまでもくやむことになるよ。



きみからぼくにせをむけないと、
ずっとずっとこうかいするよ、
だからきみがいくんだ、と、
ぼくはいった。

きみはうなづいて、
なんどもなんどもためらいながら、
ようやくぼくにせなかをむけた。

まがりかどをいちどまがって、
またすぐかおをだした。

ぼくはまだここにいてきみにてをふった。
きみもぼくにてをふった。

きみはまたまがりかどにかくれた。

ぼくはきびすをかえして、
きみとはんたいがわのまがりかどをまがった。


ひょっとしたらあのあときみは、
もういちどあのまがりかどからかおをだして、
ぼくがいることをきたいしたかもしれない。
でもそこにはぼくはいない。

そのとききみがどうかんじるかは、
ぼくにはよくわかるんだ。
むかしあのひとがぼくのまえからすがたをけしたとき、
そのときのあのきもち。

むねのおくのおくのほうが、
きゅううううっとするかんじ。

ああ、もうだめなんだ、だめなんだだめなんだどうしてだめなんだ。
だけどだめなんだ、どうしてもどうしてもだめなんだ。


ぼくはへやにもどって、
きみとすごしたひびのすくないしゃしんをながめている。

きみはなんてきれいだろう。
なんてきれいなんだろう。
そんなきみをぼくはきずつけ、
つらいつらいさよならをした。


ぼくにのこっているのは、
せつなさと、
むなしさと、
さみしさと、

そして、

どうしようもなく、

なさけないじぶん。




2002年12月10日(火) 嗜好

僕は、インターメッツォというブランドの服が好きだ。

買い物に行って、あちこち見て回るのだが、
結局いつもインターメッツォになってしまう。
とてもシンプルで、それでいて決して安っぽくない。

もともと抑えめな色合いや形が好きな僕にとっては、
理想的なデザインだ。

店員さんも僕の顔をいつの間にか覚えていて、
この間はこんな物を買ったからそれと合わせるならこんな感じ、とか、
こういう色調がきっと僕は好きだろう、とか、
気を利かせて勧めてくれる。
ひとつのブランドを買い続けるという経験はなかったので、
なんともくすぐったい感じなのだが、悪い気はしない。


ただ、最近インターメッツォのホームページを見つけて、
「コンセプト」というコンテンツを見てみると、
「ターゲットは新・40歳」と書いてあったのが若干気になる。


ちなみに僕はまだ29歳だ。

2002年12月07日(土) ドキュメント・今日。

昨日の夜、久々に彼女と会って、駅近くのホテルに泊まった。
今日は彼女はいろいろと用事があるみたいで帰らなければならず、
僕は朝食後に部屋まで送ってもらった。

しかしまだ土曜の昼すぎなのだ。

ぽっかりと空いた週末。
さて、何をしようかと考えてみる。

うーん、溜まった洗濯物を片付けるか。
でも、全自動の洗濯機に突っ込んでしまったらあとはすることがない。

とりあえずネットでもするか。

・・・

腹が減った。
カップラーメンでも食うか。

・・・

洗濯が終わった。
でも干すのは面倒だなあ。

CDでも聞くかなあ。
この間買ったやつも、全然聞いてないなあ。

JACKSON BROWNEと、DAVID CROSBYと、GEORGE HARRISONをセットする。
心地よい音にゆらゆらと酔う。
僕はやはりこの時代の、ゆらぎのある音作りが好きだ。

・・・

気がつくと、居眠りしていた。
窓の外は暗くなっていて、どうやら小雨が降っているらしい。

携帯電話が鳴った。
JOHN LENNONの「WOMAN」が僕の着メロだ。
同期の女の子だった。

仕事でミスをしてしまったらしく、落ち込んでいる。
明日出勤しなければならないようで、今日は一人でいると
悪いことばかり考えそうだから、飲みに行かないか、と。
暇を持て余していた僕は、二つ返事でOKする。

鉄板焼居酒屋で、料理の苦手な彼女のために、
僕はお好み焼きとゴーヤチャンプルーを作り、
彼女はそれを美味しい美味しい、と言いながら頬張る。
誰かが僕の作ったもので笑顔になるのは嬉しい。
だから僕は料理が好きなのだ。

彼女はカシスオレンジを頼んだが、オーダーミスでカシスグレープフルーツが来てしまった。
彼女は気にせずそれを飲み、僕はビールを飲んだ。

仕事の愚痴をひとしきり聞いた後、
今度は付き合っている彼との間の愚痴が出る。
僕はいつもこうやって彼女の愚痴を聞き、相談に乗る。
年が離れていることもあり、何かと彼女は僕を頼ってくれる。
中身はそんなに変わらないと思うんだけどな。

そうこうしているうちに、ほんのりとアルコールが回ってきて、
まったりと語りに入っている。
すると、彼女の携帯が鳴った。
その彼からだ。

彼は今日は、職場の先輩に誘われて寿司を食べに行っていたらしい。
今戻ってきて、彼女に会おうと電話したらしいが。
その彼女は僕と会っていて、二人で飲んでいると聞いて、
彼はカチンときたらしく、ここに来るという。
ああ厄介なことになった、と僕が帰ろうとすると、
彼女は、気にすることないよ、何も悪いことしてないもん、
あたしが落ち込んでるときにそばにいないのが悪いんだよ、
と言う。

そして彼が来た。
彼とももちろん僕は同期だし、しかも寮では隣の部屋だ。
事を荒立てるつもりは毛頭ないので、僕は、
愚痴は聞いておいたから元気になったと思うよ、
じゃあ後はよろしく、と言って部屋に戻った。

さて、風呂でも入るか。

おや、電話だ。ん?たった今別れた彼女だ。
変だな。いつものように、彼と二人で彼女の部屋に行ったと思ったのに。

はい?どうしたの?

聞いてよ、彼ったらなんか急に怒り出しちゃってさ、
話も聞かずに、もういいよ、なんて言って帰っちゃったよ、
寮に戻ってきてるでしょ、なんとか言ってやってよ、
あたし仕事で煮詰まっちゃって大変でさ、もうどうしようもなくて、
だからしんくんに話を聞いて欲しかっただけなのにあの人は先輩とお寿司なんて食べてたんだよ、
あたしにどうこう言う権利ないじゃない、
現にあたしは話を聞いてもらって落ち着いて、
明日は休日出勤だけどがんばろうって思えたのに、
どうしてあの人ったらあたしのそういう気持ちをぶち壊すようなこと言うの、
あんなのただのいじめだよ、もう別れるよ。

一気にそこまで喋ると、彼女は泣き出してしまった。

あーまたかあ、と思っていると、廊下で足音がする。
彼が戻ってきたらしい。
鍵を開ける音、ドアが閉まる音、そして溜息がひとつ。
今彼が帰ってきたよ、と彼女に言うと、
ねえお願いだから彼に言ってよ、さっき電話したんだけど出てくれないの、
話も聞かないで怒るのってずるいよ、だからちゃんと電話に出てって言ってよお願いお願いごめんねだけどお願い。

仕方なく僕は彼の部屋のドアをノックする。
はーい、と、つとめて普通に彼は返事をする。
こんなことは初めてじゃないので、彼もこういうときに彼女がどうするか知っているのだ。
頼むよ、電話出てやってよ、と彼に言うと、
はいはい、わかりましたわ、と言ってドアを閉めてしまった。

数分すると、また僕の携帯が鳴った。彼女だ。

ねーえじんぐん聞いでよおおおがれったらざああ事情話じだらそーいうごどば早ぐ言えよとが言っでざじがもはいはいじゃあさっさと寝なよおやずみって電話切っちゃうんだよおおおだいたい寿司なんで食べに行っでだぐぜにずるい(略)

せっかく落ち着いた彼女は半狂乱になっていて、
それをなだめすかして何とかかんとか言いくるめ、
やっと電話を切ったのがついさっき。

ああ。

なんでもない週末は、小さいながらもそれなりの波乱を含みつつ過ぎていく。
それを楽しいと思ってしまう自分は確かにいて、
誰かにとって存在意義のある自分というものに束の間酔いしれる。

彼と彼女がこの先どうなるかなんて、実は僕にはどうでもいい。
ただ、彼女にとって僕が重要な存在であるという事実、
それだけが大事であって、僕が死守したいものなのだ。

2002年12月01日(日) 陳腐

ひとつに決めるというのは、何にしても難しい。
増してそれが、比べるにはあまりにも質が違いすぎるものなら尚更だ。


決められないことを「情けない」と罵られ、
取り繕うためについつい調子のいい嘘をつく。
実際はなにひとつ決められていないのに、
ずっと前からわかっていたような顔をする。

よくドラマとか小説で、
「あなたは人を傷つけないようにと言うけれど、
ほんとは自分が傷つきたくないだけなのよ」
って台詞があるけれど、
今の僕はこの陳腐な言い回しの奥深さを実感している。

陳腐になるほど使い古されるということは、
それだけの需要があるということなんだなあ、と感じる。


他人事のように語る癖も、どうにも治らない。
むしろ酷くなっていくような気さえする。

ずっと「泣きたいのに泣けない」とこぼしていた君でさえ、
二回も泣かせたのに、
僕自身は欠伸をしたとき以外に涙を流すことはない。
そんな自分を冷たいとすら思わず、
表面的に、刹那的に埋め合わせては日々をやり過ごす。


そうやって過ぎていく時間は、信じられないほど早い。


INDEXPASTNEXTNEWEST
しんMAIL

Click here if you like it...↑

Add to your Favorite